「絵本の読み聞かせには、プレゼンの基礎が凝縮されています」とは、プレゼンアドバイザーの竹内明日香さん。
前編では、絵本の読み聞かせで得られる効果と、どんな部分がプレゼン能力に繋がっていくのかを解説していただきました。
後編は実践編。絵本の選び方や、プレゼン教育を意識した実際の読み聞かせの方法を、引き続き竹内さんに教えていただきます。
前編・後編の全2回の後編。(前編はこちら)
プレゼン企画第一弾(#1、#2、#3を見る)
昔話で学ぶ「S字プレゼン」とは?
プレゼンを意識した読み聞かせのための絵本選びですが、実は、どんな絵本でもよいです。どんな絵本でも、プレゼン力向上の効果はあります。
しかし、最初からプレゼンを強く意識したいのであれば、昔話の絵本から始めてみるのがおすすめです。というのも、昔話の中には「プレゼンの型」が隠れているからなのです。
例えば、「むかしむかし、あるところに貧しい若者がいました。彼は冒険の旅に出て、大変苦労しました。しかし見事に困難を乗り越え、ついに富を手に入れました」という物語があるとします。
こうした昔話は、最初はつらい体験の谷の部分、そのあとハッピー山(ハッピーエンド)が、S字形のように訪れるので、私は「S字プレゼン」と呼んでいるのですが、実際のプレゼンや自己紹介もこのS字プレゼンと通じるところがあり、
「私は人生でこんな困ったことがありましたが、今、皆さんの前にいる私はとても元気です。それは、こんなことを乗り越えてきたからです」
と言うと、聞き手の共感も得られ、心に残ります。
他にも、プレゼンの類型には、「ロジカルプレゼン」というものもありますが、これは簡単に言うと「結論はこれで、理由は3つあります。なぜなら~」という、事実や実際にあったことを前提に話すもの。
これは、いずれAIでもできるプレゼンになるかもしれず、人が人へ伝えるプレゼンとしては魅力が足りない場合も多いのです。
昔話をお母さん、お父さんから読み聞かせをしてもらうことで、子どもはS字プレゼンの型を自分の中にどんどん溜めていくことができるのです。
プレゼン力は「考える力」「伝える力」「見せる力」の足し算
プレゼンにおいて大切な、土台になる「考える力」については前編で触れましたが、その次に大切なのが「伝える力」です。
絵本の読み聞かせで、どんな声色を使って、どんな読み聞かせで伝えるのか。ぜひ、読み手である親御さんが、俳優になりきって、お子さんに絵本の世界を展開してあげてください。
最後の「見せる力」は絵の力。ビジュアルです。絵本の絵には、細かなタッチ、大胆な構図、カラフルな色など、様々な表現方法があり、それが言語以上にメッセージを伝えてくれます。
そんな絵本ならではの絵に、親子で触れることで「見せる力」を理解することに繋がります。
読み聞かせ中も思考力や判断力を鍛える問いかけをする
読み聞かせ中は、時折ページをめくる手を止めて、「次はどうなると思う?」と、お子さんに問いかけてみてください。
想像力と思考力を鍛える問いかけをして、子どもが自分なりの解釈で、絵本の世界を広げていく機会を作ることも大切です。「私はこう思う」と、子どもが自分の意見を言う練習にもなります。読み聞かせ中も対話をしながら、プレゼン力をどんどん育てていきましょう。
また、沈黙して“間”を取るのもとても大事な時間です。
“間”があることで、「次はどうなるんだろう?」と、子どもは空想する時間が持てるため、間を取ることは、プレゼンにおいてもとても大切なことなんです。
読み手が途中で止めたり、速度を変えたりなど、自在にコントロールできることは、映像にはない絵本の読み聞かせの最大の利点ですね。
【絵本の読み聞かせポイント】
・登場人物になりきって感情をこめて読む。
・2人以上の登場人物の時は声を使い分ける
・意識してゆっくり読む。
・抑揚をつけ、読む速度やペースを変える。
・驚かせる部分では、その前に沈黙して間をとる。