子どもの「プレゼン力」の最高のトレーニング方法は「絵本の読み聞かせ」だった

「読み聞かせ」で伸ばす子どものプレゼン力 前編 「考える・伝える・見せる」の学び方

プレゼンアドバイザー:竹内 明日香

幼稚園から大学生まで、幅広い年齢の子どもたちにプレゼンテーションの仕方を教えている、プレゼンアドバイザーの竹内明日香さん。  撮影:富貴塚悠太
すべての画像を見る(全7枚)

「プレゼン力は、何もビジネスパーソンにだけ必要な能力ではありません。むしろ子どもたちにこそ身につけてほしい力なのです」

今まで約43,800人の子どもたちにプレゼンの授業を行ってきた、プレゼンアドバイザーの竹内明日香さんはこのように力説します。

その理由は、「子どもにも「プレゼン力」が必要! 幼児期からはじめる「話す力」とは」で詳しくお伝えしました。

好評だった前回の「子どものプレゼン力」特集第一弾(#1#2#3)に続き、第二弾となる今回のテーマは「絵本の読み聞かせでプレゼン力を養う」です。

絵本を読んであげることが「子どものプレゼン力向上につながる」とはいったいどういうことでしょうか。

前編では、なぜ読み聞かせがプレゼン力につながるのかを竹内さんに解説していただきます。

(前編・後編の全2回の前編)
「子どものプレゼン力」特集第一弾(#1#2#3

プレゼン力は「意識する」ことで成長する

子どものプレゼン力とは、「考える力」「伝える力」「見せる力」の総合力です。

子どもたちの普段の生活には、実はこれらを発揮する機会がたくさんあります。例えば、新学期に新しいクラスになったときの自己紹介や、学校の郊外学習の発表など。

しかし、機会がたくさんあるからといって、年齢があがれば自然と身についていくというものではありません。

育っていく過程で、トライ&エラーを繰り返しながら鍛えられていくものなので、生活の中にプレゼンの機会がいくらたくさんあっても、意識しないとプレゼン力は育っていかないのです。

国によっては、小さな頃から意識してプレゼン力のトレーニングをしています。

今の日本で育つ子どもたちが、大人になってグローバル社会に出たとき、相手にするのはトレーニングを積んできた海外のビジネスパーソンたちです。語学力も大切ですが、このプレゼン力の弱さを克服することが課題だと感じます。

伝えたいことを話すだけでも大変なのに、さらに相手が外国の方だと、言うべきことを相手にわかるように説明して、さらに成果を出すというのは本当に大変なことですよね。

また、この数年で子どもたちもオンラインでコミュニケーションをとる機会が増え、プレゼン力がさらに求められるようになりました。

そしてなにより、子どもにとってのプレゼン力は、友だちを作るのにとても役立ちます。友だちへ自分の言葉で説明できるというのは、とても大きな力になります。

プレゼン力は大人になってから一朝一夕で育つものではありません。急に話せと言われても、大人でも話すことが苦手な人はたくさんいますよね。

まだ苦手意識の少ない幼い頃から、プレゼン力を意識しながら話す経験を積み重ねていくことは、決して早すぎることはないのです。

「考える力」は、絵本の持つ想像力を育てる力や社会課題のテーマ。「伝える力」は絵本を読んでいる読み手の声色や表現力。「見せる力」は、絵本の絵。それぞれが相まっていることを体験すると、プレゼン力が伸びていきます。  撮影:富貴塚悠太

厳選された言葉と絵がプレゼン力につながる!

では、どう子どもたちに意識してもらえばいいのでしょうか。

そこで私が未就学児や小学校低学年のお子さんたちへおすすめしたいのが、絵本の読み聞かせによる、親子コミュニケーションです。

実は読み聞かせは、プレゼン力の3大要素「伝える力」「考える力」「見せる力」のすべてを伸ばしてくれる、最高のトレーニングなのです。

「プレゼン教育にはたくさんの本を読む必要はありません。同じ絵本を繰り返し読んでもいいのです」(竹内さん)。  写真:アフロ

絵本は、厳選された短い言葉と絵で構成されています。言葉が短くても、絵との相乗効果で、メッセージを明確に伝えることができます。

それに、テレビ番組やYouTubeなどの一方的な映像の情報と違い、読み手である親と、聞き手である子どもの間に、ストーリーを通して相互コミュニケーションが発生します。

また、お母さんやお父さんが、読んで聞かせてくれる物語のなかで、わからない言葉があれば、すぐに「それなあに?」と聞くことができますし、対話することで子どものボキャブラリーも増えていきます。

子どもが聞き手として、きちんと聞いていれば、自分が話す側になったとき、どのように話せば相手が聞きやすいのかも、体感として理解していくこともできます。

そして最終的に、「聞く力」は、プレゼン力に繋がっていくのです。

「まだまだ社会的体験が少ない子どもだからこそ、絵本の読み聞かせが子どもの世界を広げていくことができるのです」(竹内さん)  撮影:富貴塚悠太

絵本がプレゼンの「考える力」を伸ばす最大の理由

「絵本の自由さが思考力を養います」(竹内さん)  撮影:富貴塚悠太

プレゼン力には、まず、土台としての「考える力」がとても大切になってくるのですが、絵本はこの思考力を鍛えるのにも効果的です。

というのも、絵本というのは、テーマが自由だからです。

奇想天外なお話や、インパクトあるユニークな絵柄など、絵本には作者や画家が生みだした、非日常のぶっ飛んだ世界が当たり前に広がっています。

その一方、社会的なテーマを扱う絵本もたくさんあり、現実の世界の多様性を映してくれる鏡にもなります。

例えば、自分とはまったく家庭環境が違う子どもや、習慣が違う外国の子どもの話、今とは常識が違う昔の子どもの話などです。

日常では触れることのない世界に触れることで、子どもの世界は広がり、思考力を養うゆりかごになるというわけです。

――◆――◆――

なんとなく習慣でしていた読み聞かせタイムも、豊かな発想力とイマジネーションを養うプレゼン視点で見てみると、親子の成長の時間になっていきますね。

後編では、絵本を使って親子でプレゼン力を伸ばすための実践編。本の選び方や読み方のコツを竹内先生に教えていただきます。

取材・文/上坂美穂

『すべての子どもに「話す力」を――1人ひとりの未来をひらく「イイタイコト」の見つけ方』著:竹内明日香(英治出版)
この記事の画像をもっと見る(全7枚)
たけうち あすか

竹内 明日香

プレゼンアドバイザー

『一般社団法人アルバ・エデュ』代表理事。 東京大学法学部卒業。日本興業銀行(現みずほ銀行)にて、国際営業や審査等に従事後、独立。海外投資家向けに情報提供や日系企業の情報発信(企業プレゼン等)支援を提供。2014年、子どもの「話す力」の向上を目指す『一般社団法人アルバ・エデュ』を設立。2022年現在、話す力を育むプログラムを11の自治体に導入している。 株式会社日陸(2022年10月1日よりNRS株式会社)社外取締役。 公立小元PTA会長。二男一女の母の三児の母。『一般社団法人未来の先生フォーラム』理事。音羽の森オーケストラ『ポコアポコ』主宰。 子どものプレゼン教育に関する最新著書『すべての子どもに「話す力」を――1人ひとりの未来をひらく「イイタイコト」の見つけ方』(英治出版)を2022年5月に発売。

『一般社団法人アルバ・エデュ』代表理事。 東京大学法学部卒業。日本興業銀行(現みずほ銀行)にて、国際営業や審査等に従事後、独立。海外投資家向けに情報提供や日系企業の情報発信(企業プレゼン等)支援を提供。2014年、子どもの「話す力」の向上を目指す『一般社団法人アルバ・エデュ』を設立。2022年現在、話す力を育むプログラムを11の自治体に導入している。 株式会社日陸(2022年10月1日よりNRS株式会社)社外取締役。 公立小元PTA会長。二男一女の母の三児の母。『一般社団法人未来の先生フォーラム』理事。音羽の森オーケストラ『ポコアポコ』主宰。 子どものプレゼン教育に関する最新著書『すべての子どもに「話す力」を――1人ひとりの未来をひらく「イイタイコト」の見つけ方』(英治出版)を2022年5月に発売。