こんなかぐや姫、見たことない! 『月虫の姫ぎみ』誕生の舞台裏

童話作家・富安陽子さん×漫画家・五十嵐大介さん トークショーを直撃!

ライター:山口 真央

『月虫の姫ぎみ』をつくった、童話作家の富安陽子さん(右)と、漫画家の五十嵐大介さん(左)。
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童話作家の富安陽子さんと、漫画家の五十嵐大介さんがタッグを組み、魅力的な絵本が完成しました! タイトルは『月虫の姫ぎみ』。日本昔話のかぐや姫をベースにしつつ、想像を超える展開と美しさで、読者を圧倒します。

文章を書かれたのは「博物館の少女」シリーズ(偕成社)を書いた富安陽子さん、絵を描かれたのは『海獣の子供』(小学館)を描いた五十嵐大介さん。富安さんは五十嵐さんの大ファンで、五十嵐さんに描いてもらうために『月虫の姫ぎみ』の文章を書かれたそうです。

この記事では富安さんと五十嵐さんが登壇した、2025年9月6日におこなわれた紀伊國屋書店横浜店でのトークショーの様子をレポート! 『月虫の姫ぎみ』制作秘話や、ベテラン作家であるおふたりの、作品づくりへのこだわりなどを伺いました。

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富安「五十嵐さんに描いてもらうためにお話を書きました」

──『月虫の姫ぎみ』はかぐや姫をベースにしたお話です。富安さんはいままで、昔話やおとぎ話をベースにしたお話を書かれていますが、今回かぐや姫を選んだ理由を教えてください。

富安
からかぐや姫のお話に、納得がいってなくて(笑)。なぜ月から突然やってきて帰っていくんだろうと、不思議に思っていたんです。そのうちに、もしかすると命の一時期を地球に降りてきて、成長したらまた月に帰っていく、そんなサイクルで生きている生命体がかぐや姫なのではないかと妄想するようになりました。

──どの段階で、五十嵐さんに絵を依頼しようと思われたのですか。

富安
最初からです。じつは五十嵐さんの大ファンで。最初は息子が五十嵐さんの漫画が好きで、「絶対、読んだほうがいい」と『海獣の子供』を勧められてから、ファンになりました。いつかご一緒させていただきたいと思っていたところ、「天(あめ)と地(つち)の方程式」シリーズ(講談社)で表紙を書いていただきました。

そのころから、五十嵐さんとしっかり組んで、1冊の絵本をつくりたいと考えていて、かぐや姫のイメージが浮かんだとき、「このお話なら、五十嵐さんが描いてくださるんじゃないか」と思いました。『月虫の姫ぎみ』は、五十嵐さんに絵を描いていただくために仕上げた作品です。

──そんな熱いオファーを受けた五十嵐さんは、『月虫の姫ぎみ』を読んでどんな感想を持ちましたか。

五十嵐
:最初に読んだときに、絵のイメージがわーっと湧いてきたので、すぐ描けちゃうなと思ってお引き受けしました。「この絵を描くには、ここに取材にいったほうがいいな」と計画まで立てたくらいで。姫が成長していく屋敷を描くために、平安時代の屋敷を再現して展示している、岩手県の歴史公園えさし藤原の郷(さと)まで取材してきました。

──存在しない「月虫」を絵にするのは、ご苦労されたのではないでしょうか。

五十嵐
:自分の好みでイメージしちゃうと、り生命力を感じさせるために、もっと気持ち悪く描きたいという気持ちもありました(笑)。でも物語を読むと、蛾とか蝶に近いものにするのが自然かなと思い、成虫の姿はこの形になりました。月の表面を月虫の影が横切っていく最初のページから最後のページまで、ずっとノリノリな気分で描きました

『月虫の姫ぎみ』の1ページ目。月虫のシルエットが、月の上に浮かんでいる。
五十嵐「絵本は漫画と違い、1枚の絵のなかに時間が流れている」

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