「児童文学新人賞」応募者は必読! 受賞作家2人が「プロット作りの秘訣」「執筆スケジュール」を教えてくれた
講談社児童文学新人賞を受賞した作家が特別対談 後編
2024.11.21
ライター:山口 真央
「昆虫オタク」の中学生が、さまざまな悩みを抱えるクラスメイトとの関わりのなかで、悩みを優しく解きほぐしていく、繊細な群像物語。五十嵐美怜さんの『15歳の昆虫図鑑』。
体型に悩む女子中学生が、ヒップホップの世界に飛び込み、ラップで自分の殻を脱ぎ去っていく、痛快な青春ストーリー。福木はるさんの『ピーチとチョコレート』。
第64回講談社児童文学新人賞の佳作に選ばれた2作品が同時刊行(2024年11月14日)!
お互いの物語の見どころや執筆秘話、さらに講談社児童文学新人賞に応募したきっかけや、これから新人賞に応募する人に向けてのアドバイスまで、余すところなく語り尽くします。
五十嵐美怜
福島県出身在住。日本児童文芸家協会、日本児童文学者協会に所属。図書館での勤務をきっかけに児童書の執筆と投稿を始める。主な作品に、「恋する図書室」シリーズ(集英社みらい文庫)、『きみがキセキをくれたから』(青い鳥文庫)などがある。本作『15歳の昆虫図鑑』で第64回講談社児童文学新人賞佳作入選。
福木はる
沖縄県出身、千葉県在住。琉球大学教育学部卒業。小学校教諭を勤めた後、子ども支援の活動に従事。2023年、『ピーチとチョコレート』で第64回講談社児童文学新人賞の佳作に入選し、本作がデビュー作となる。
福木「児童文学の描く『希望』に何度も救われました」
──後編は、児童文学作家を目指す人の参考になるようなお話をお伺いしたいです。まず、おふたりが児童文学を書きはじめた理由を教えてくれますか。
福木:児童文学が好きだからです。一般小説を読むと引きずってしまうこともありますが、児童文学は希望がある。子どものころから大人になった今も、「生きるのが辛いな」って思ったときに、図書館に通い、児童文学に励まされてきました。
五十嵐:私は小学校の謝恩会で、劇の台本を書いたことが、初めて物語を書いたきっかけです。子どものころから、人前でおしゃべりするのは苦手なのに、文章だったら自分の気持ちを伝えられると感じていました。一方でひとり親だったり、いじめにあったりと大変なことが多い子ども時代を過ごしてきて、いつからか子どもの心に寄り添う仕事がしたいと考えるようになりました。物語を通して、子どもに寄り添うメッセージを届けたいと考え、作家を目指し始めました。
──おふたりとも、児童文学を通して子どもたちを励ましたい、寄り添いたいというような、使命感があるのですね。講談社児童文学新人賞に応募しようと思った、きっかけを教えてください。
福木:十数年前に絵本や幼年童話を書いていた時期があって、公募先を探していたときに講談社児童文学新人賞を知りました。「長編は自分には無理」と諦めていた一方で、応募要項や結果の発表がホームページに掲載されるたび、チェックし続けていました。講談社児童文学賞からデビューした作家さんは活躍されていて「新人を育てよう」という講談社さんの想いを強く感じていたからです。やっぱり諦めずに応募してみようと決意して、応募しました。
五十嵐:図書館で働くようになってから、児童文学をたくさん読むようになりました。心に響いた本の奥付やプロフィールに「講談社児童文学新人賞」の名前があって、投稿しようと決意。講談社児童文学新人賞には5回応募していて、たくさんの先輩方の本を読みました。この間『保健室経由、かねやま本館。』の松素めぐり先生にお会いしたときは泣いてしまって。自分が頑張って物語を書いてきた結果、憧れの松素先生にお会いできて、胸がいっぱいになりました。