「児童文学新人賞」応募者は必読! 受賞作家2人が「プロット作りの秘訣」「執筆スケジュール」を教えてくれた

講談社児童文学新人賞を受賞した作家が特別対談 後編

ライター:山口 真央

五十嵐「作家独自のテーマを見つけることが受賞への第一歩」

児童文学作家になったふたりが、未来の作家さんにアドバイスしたこととは?

──新人賞に応募した作品は、どのようなスケジュールで書かれていましたか。

福木:「ヒップホップで自分を変える女の子を描きたい」というざっくりしたイメージは、2年前から浮かんでいました。きちんと腰を据えて『ピーチとチョコレート』を書いたのは、3ヵ月間くらい。2ヵ月を執筆にあて、1ヵ月のあいだ推敲してから応募しました。

五十嵐:『15歳の昆虫図鑑』は、2022年に応募しようと考えていましたが、いざ書きはじめたら間に合わなくて、2022年には、別の完成に近づいていた物語で応募しました。その後もプロットを試行錯誤して、2023年の頭から再び書きはじめました。仕事をしながらですが、2~3ヵ月で書き上げました。

──おふたりとも、プロットに時間をかける一方、書きはじめてからはスピード感がありますね。最後に、これから新人賞に応募してみたいと考えている人や、いま頑張って物語を書いている方に、メッセージやアドバイスをお願いします。

福木児童文学新人賞に入選すると、ベテランの作家さんとデビューしたての私たちが、書店や図書館にまったく同じ条件で並びます。こういうことって、他の社会ではあまりなくて、すごいことですよね。私自身も今後は新人賞以上のものを書かなくてはいけないと、大きなプレッシャーを感じています。でもポジティブに考えれば、チャンスでもある。私も必死に頑張るので、応募しようか迷っている人は、ぜひ一緒にチャレンジしてみてほしいです。

五十嵐:アドバイスなんておこがましいのですが、大人の意見を書くのではなく、子どもの目線で考えることが大切だと思います。あとは、その作家さんならではのテーマがある作品が強い気がします。今回の福木さんの作品なら、ラップとルッキズム、私なら昆虫と中学生ならではの悩み、ジェンダーのことなど。独自のテーマを描くことが受賞への第一歩になるのではないかと考えています。

第64回講談社児童文学新人賞で佳作を受賞した、福木はるさん(左)と、五十嵐美怜さん(右)。

『ピーチとチョコレート』 著:福木 はる 
「美しい 醜い 誰が決めた 作者不詳の詠み人知らず
 それなら 穴掘り 捨てろ 埋めろ
  いまここに ルッキズムの墓たてろ!」
第64回講談社児童文学新人賞佳作入選作!

体型を気にしながらも、明るいキャラで渡り歩いてきた、萌々、中2。幼なじみの由快からは自分らしくないことを見透かされているが、彼みたいな人気者にはこの苦しさは分かるまい。ある日コンビニで出会った派手な大人から無理矢理すすめられたヒップホップクラスに顔を出してみると、クラスメイトから恐れられているフードを被った孤高の存在・莉愛がいて!? ラップに触れていく中で、萌々の心が少しずつ変わりだす――。

「すべてはイメージ すべて虚構 いまここにいる わたしだけがリアル
 Big Up! Big Up!  わたしはわたしのままで この人生を謳歌してみせる」

ヒップホップ×友情。明るくてやさしい風が、ここで吹いています!

『15歳の昆虫図鑑』 著:五十嵐 美怜 装画:ゲレンデ 挿画:柏 大輔
虫オタ×悩みアリな中学生たち!?
 虫オタな転校生が、悩める4人のクラスメイトの魅力を「昆虫」にたとえはじめると、クラスメイトたちが次々と「新しい自分」を発見する!

【こんな人におすすめです!】
・まわりに気遣いすぎて自分をだせない
・同性の友人に恋心を抱いているかもしれない自分にとまどっている
・田舎の閉塞感に不満を募らせている
・親や友だちにもっと大事にされたい
 …みんな虫オタの蛍子が、あなたの魅力を教えてくれます!

「推しの作品です!」──児童文学作家 村上しいこさん推薦!

写真/安田光優(講談社写真映像部)

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やまぐち まお

山口 真央

編集者・ライター

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。