
ぼっち、不登校、同調圧力…10代が抱える悩みに向き合う小説たち 「未来屋アオハル文学賞」で『15歳の昆虫図鑑』が大賞受賞!
講談社作品が受賞10作品中4作品入賞! 10代の中高生に向けた新しい文学賞の受賞10作品を紹介
2025.08.02
〈注目ポイント①〉
虫オタな転校生が、悩める4人のクラスメイトの魅力を「昆虫」にたとえると、クラスメイトたちが次々と「新しい自分」を発見。雌雄モザイクや、長生き蟬など昆虫の未知なる生態も見どころで読み応えがあり、物語にグイグイと引きこまれてしまいます。最終章では、5人の個性が爆発! その輝きと爽快感は、まさに青春物語ならではの味わいです。
著者は、図書館司書の仕事をしながら、児童書の執筆をしている五十嵐美怜さん。2019年に『恋する図書室 放課後、あこがれの先輩と』(集英社みらい文庫)でデビューし、「恋する図書室」シリーズや「花とつぼみと、きみのこと。」シリーズ(集英社みらい文庫)、「きみがキセキをくれたから」シリーズ(講談社青い鳥文庫)などの作品を手がけています。『15歳の昆虫図鑑』は、2023年「第64回講談社児童文学新人賞」佳作入選作です。
〈注目ポイント②〉
表紙には、ジャコウアゲハやコセアカアメンボなどの昆虫が閉じこめられた透明な石と、それを覗きこむ5人の姿が描かれています。イラストを手がけたのは、収集している鉱物をモチーフにしたイラストレーション作品をSNSで公開しているイラストレーター、「ゲレンデ」さん。X(@_gelande)に投稿された鉱物のイラストは、本当に絵なのかと疑うくらいの透明感を放っています。
また、挿絵は国内外のグラフィックデザイン賞を受賞し、美術大学などでも教鞭を執っている、イラストレーション作家の柏大輔さん。印象に残る絵柄なので、絵のページが楽しみになります。
〈こんな人におすすめ〉
・まわりに気を遣いすぎて自分をだせない人
・同性の友人に恋心を抱いているかもしれない自分にとまどっている人
・田舎の閉塞感に不満を募らせている人
・親や友だちにもっと大事にされたいと思っている人

【書店でもお買い求めいただけます!】
受賞作を含む上位入選作は、8月31日(日)まで、全国の未来屋書店およびアシーネ店舗にて「第1回 未来屋アオハル文学賞フェア」として展開されています。
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【大賞】村上雅郁『かなたのif』友だちのいない香奈多と友だちをなくした瑚子のひと夏の冒険物語

〈あらすじ〉
友だちのいない香奈多と、友だちをなくした瑚子。中1の夏、ふたりは、秘密の場所で出会った。瑚子がつむぐ夢渡りの黒いネコ、ドコカのお話。香奈多はその物語を聞くなかで瑚子を知り、大切な友だちだと思うようになる。
瑚子もまた香奈多と物語を分かち合う喜びを感じた。ある日、香奈多は信じがたい事実を同級生から突きつけられる。悩んだ末に、瑚子に会って自分の気持ちを伝えようとするが……。 物語をなぞるように重ねた「もしも」のはてで、ふたりが見つけた宝物とは──。
〈注目ポイント〉
カバー表紙には、宇宙のような空間でまばゆい光に手を伸ばす香奈多、裏表紙側には瑚子が描かれています。物語を読み終わった後でカバーを外して1枚の絵として見ると、「そうだったのか!」とふたりの関係性に気づくしかけがお見事!
装画と挿絵を描いた「げみ」さんは、中学校の教科書「新しい国語」(東京書籍)の表紙や、花王「めぐりズム」、伊藤園「お~いお茶」、ポケモンカードゲームのイラストレーションも手がけています。げみさんの描く幻想的な絵を眺めていると、まるで香奈多と瑚子のように、想像の世界が広がるような気持ちが味わえます。
〈こんな人におすすめ〉
・孤独を感じている人
・「友情モノ」が読みたい人
・ミステリアスな仕掛けを楽しみたい人