

累計発行部数230万部を突破した「NO.6」シリーズ。2025年5月には、待望の続編『NO.6[ナンバーシックス]再会#1』が刊行され、Amazonで1位を獲得(SF・ホラー・ファンタジーのカテゴリ、2025年6月6日調べ)するなど、注目を集めています!
この記事では、『NO.6[ナンバーシックス]再会#2』の発売を記念し、ジュンク堂書店池袋本店でおこなわれた、あさのあつこさんのトーク&サイン会の様子をレポートします。後編は作家としての心構えや、紫苑とネズミのキスについて、また混乱する世の中で私たちができることなど、さらにディープなお話を伺いました。
紫苑とネズミの関係を「決めないこと」が大事

トークショーも後半に差し掛かり、引き続き読者からの質問に答えるコーナーです。次は『NO.6を執筆されたなかで、誰にも気づかれていないような、こだわりポイントがあれば教えてほしいです』という質問。
あさの:紫苑の母、火藍(からん)が、具体的にパンをつくっている描写を書いていないことでしょうか。私は料理が嫌いなんです。知らないことを、知ったように書いています(笑)。ネズミのクラバットは、そういう名前のヨーロッパのお菓子を雑誌で見て、響きが気に入ったので名付けました。
次は『先生がNHKの番組で、ネズミは「マクベス」を朗読すべきだと思ったとおっしゃっていました。「マクベス」という作品から登場人物へ投影していることは、ありますでしょうか』という質問。
あさの:投影していることは、おそらくないです。ただずいぶん昔に見た、マクベスの舞台が印象に残っていて。ネズミが舞台に立っているときの雰囲気は、影響を受けているかもしれません。悲劇を演じることが、ネズミにぴったりだなと。ときどき「オペラ座の怪人」をネズミが演じたらどうだろう、と考えたりもしています。
次は『紫苑の誕生日を、9月7日にした理由を教えてください』という質問。
あさの:あまり深く考えずに決めた、というのが本音です。前シリーズ『NO.6』の冒頭は紫苑の12歳の誕生日からはじまるのですが、嵐のシーンにしようと思いまして。それで台風の多い9月に決めました。
次は作家を志す人向けの、具体的な質問です。『もしまだそこそこしか売れていない作家が、編集者に「私が考えた設定とキャラで、こういった本を書いてくれ」といわれたとします。作家は自分の物語でないと苦しんでいますが、こんな作家に、あさのあつこ先生なら、どういう言葉をかけますか』
あさの:編集者と話し合うことが必要かもしれませんね。編集者とは対等に、自分の意見をきっちり言わなくてはいけません。もし編集者にぶつけるものがないのだとしたら、物書きを続けることは難しいと思います。何があっても書き続ける、強い気持ちと自信がないとね。話をすることで、逆に編集者の言葉から物語の鍵をもらうこともあります。相手の意見を鵜吞みにするのではなく、自分の意見と掛け合わせて、出てきたことを書いていく。そうやって自分の生き方を示していける人が、向いていると思います。