『NO.6再会#2』発売記念トークショーで、あさのあつこが語った“決して決めない関係性”とは

開催日は9月7日「紫苑生誕祭」を祝う特別なイベント (2/2) 1ページ目に戻る

ライター:山口 真央

紫苑とネズミの関係を「決めないこと」が大事

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次に、読者からの質問に答えるコーナーがはじまりました。事前にいただいた質問のなかから、特に多かった質問や、興味深い質問に答えていただきます。最初の質問はこちら。

『再会シリーズを書かれるまでの14年間は、先生にとってどんな14年間だったのでしょうか。続編をお書きになったきっかけを教えていただけたら嬉しいです』

あさの:きっかけは、私自身が紫苑とネズミに会いたかったことです。彼らに会いたいなと思っても、自分で書かないと、誰も代わってはくれないでしょう。あとは、イスラエルのガザ地区で続いている虐殺は、すごく大きな引き金になっていると思います。まさにあそこに「NO.6」があるじゃないかと。書けないと言っている場合ではなくて、紫苑とネズミがこの現実にどういう未来をつくるのかを、考えていかなければいけないと思いました。

次は『「NO.6再会」の執筆中に前シリーズから大きく印象が変わった人物はいらっしゃいますか。理由も聞きたいです』という質問。

あさの:一番変わったのは、イヌカシかな。意外に一番しっかり生きているんです。紫苑もネズミも私にとっては魅力的だけれど、ひとりが崩れた時に、もうひとりがどうなるかわからない危うさがあって。前シリーズで「NO.6」崩壊のさなか、イヌカシに赤ん坊を預けたのはそういう理由があったからなのかと、書きながら気づきました。

次の質問は『「再会」シリーズでは、紫苑とネズミ、そしてふたりの関係性が変化していると思いました。それはこの2年の空白期間によるものなのでしょうか。そしてこの2年間にネズミに何があったのかは、これから解き明かされていくのでしょうか』

あさの:はっきりとはお伝えできませんが、今後を楽しみにしていただけたらと思います。ネズミが2年間何をして、何を見て、何のために「NO.6」に帰ってきて、何をしようとしているのか。それが明らかになってから、また紫苑とネズミの物語が、はじまっていくのだと思っています。

次の質問はこちら。『あさの先生のインタビューで、「紫苑とネズミの関係を知りたい」とお話しされているのを読みました。紫苑とネズミを知るうえで、大切にしていることはありますか』

あさのふたりの関係を決めないことです。人と人の関係を、恋人や仲間、夫婦と決めてしまうことって、便利で簡単だと思うのですが、私は面白さを感じなくて。正直なところ私にも、紫苑とネズミが愛しあっているのか、深い友情のひとつの形なのか、憎しみを潜ませた愛なのか、まったくわからないんです。もしかしたら、どちらかがどちらかを殺さないと、話が進まない関係なのかもしれない。もちろん、ふたりには幸せになってほしいという思いはありますが、ふたりの今後は、書きながら探っていくしかないと思っています。

あさのあつこ
岡山県生まれ、在住。大学在学中より児童文学を書き始め、小学校講師ののち、1991年『ほたる館物語』で作家デビュー。97年『バッテリー』で第35回野間児童文芸賞、2005年『バッテリーⅠ~Ⅵ』で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。『NO.6』シリーズは、コミカライズ、アニメ化された。児童文学から時代小説までさまざまなジャンルの作品を執筆し、幅広い世代に親しまれている。

シリーズ累計230万部超え、2人の少年の友情を超えたディストピア小説の傑作

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・『NO.6再会#1』発売告知後、即Xでトレンド1位!
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度重なる戦禍で地球環境が壊滅した世界に生きる紫苑とネズミ。「NO.6」のエリートとして育てられた少年・紫苑(しおん)と、「NO.6」の外に広がるスラム地区「西ブロック」に住むミステリアスな少年・ネズミは、腐りきった偽りの理想都市を崩壊させた。二人は、新世界を再構築できるのか。真っ直ぐすぎる二人の未来の命運をわける2巻。

──きみは、ぼくを摑めないと言ったけれど、ぼくにとっては、きみこそが謎だ。確かに存在しているのに決して手に入らない。

●「NO.6」シリーズ読者からの感想
「たくさん本は読んできたけれど、これ以上面白い本に出会ったことがない」
「呼吸を楽にしてくれた本」
「死にたくなったらネズミの言葉を思い出します。逃げずに前へ進め! 現実を見ろ!
どんなに現実が辛くても光を見いだせる人になりたいと思います」
「泣きたくなった夜に読みます。おまえはどうありたいんだ? いつでも自分にできることを問いかけ、動きつづけたいと思います」

●あさのあつこさんからのメッセージ
声を聞きました。ネズミの声です。
「生きる場所も死ぬ場所も自分で決める。あんたじゃなくおれが決める。余計なお節介は止めてもらおうか」と。
そうか、彼らはすでに出逢い、運命を紡ぎ始めているのか。
だとしたら、わたしも、もう一度だけ、本当にもう一度だけ、彼らに手を伸ばそう。この手で彼らの生に触れてみよう。
『NO.6』の作者として戦ってみよう。あれほど恋い焦がれた少年たちに挑んでみよう。
今はただ、それだけを考えています。
14年の時を経て、あなたに再び『NO.6』を届けます。

撮影/柏原力(講談社写真映像部)

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やまぐち まお

山口 真央

編集者・ライター

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。

あさの あつこ

Atsuko Asano
作家

岡山県生まれ、在住。大学在学中より児童文学を書き始め、小学校講師ののち、1991 年『ほたる館物語』で作家デビュー。97 年『バッテリー』で第35 回野間児童文芸賞、2005 年『バッテリーI~VI 』で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。『NO.6』シリーズは、コミカライズ、アニメ化された。児童文学から時代小説まで様々なジャンルの作品を執筆し、幅広い世代に親しまれている。

岡山県生まれ、在住。大学在学中より児童文学を書き始め、小学校講師ののち、1991 年『ほたる館物語』で作家デビュー。97 年『バッテリー』で第35 回野間児童文芸賞、2005 年『バッテリーI~VI 』で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。『NO.6』シリーズは、コミカライズ、アニメ化された。児童文学から時代小説まで様々なジャンルの作品を執筆し、幅広い世代に親しまれている。