戦争はなぜ起こるの?「こども地政学」で知る“世界仲良く”が難しい理由

制作者インタビュー「こども地政学」#2 ~国々の関係性編~

ライター:遠藤 るりこ

日本はどんなグループの一員なのか

では、日本はどんなグループに入っているのか、また入っていないのか、確認していきましょう。

日本が属している世界のグループを知り、そしてその国の位置関係を確認してみましょう。その国との関係性が見えてきます。  引用:『こども地政学』(カンゼン刊)

「日本にとってもっとも重要なのは、1960年に発効した日米安全保障条約による日米同盟です。戦争放棄をした日本が他国から攻撃されたときはアメリカが日本を防衛する義務を負い、日本はアメリカが日本国内に基地を置くことを認めています。

このほかにアメリカ、オーストラリア、インドの3ヵ国とは、QUAD(日米豪印戦略対話)で外交・安全保障の協力関係にあります」(『こども地政学』より抜粋)

経済面では、2018年に日本が中心となってCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)と呼ばれる貿易協定を締結しています。

「もちろん、日本は世界中のすべてのグループに加盟しているわけではありません。たとえば、ヨーロッパの国々が加盟するEU(欧州連合)には、当然のことながら地理的に離れた日本は加盟していません。

また、かつて社会主義であったロシア、そして現在も建て前は社会主義である中国や北朝鮮などの国と、政治体制が異なる日米などの資本主義の国々が同じグループになることは多くありません」(『こども地政学』より抜粋)

国同士の関係性や思惑が見えてくる

ロシアのウクライナ侵攻を考えるうえでも、いまの世界情勢を知るうえでも、「世界にはどんなグループがあるのか」「どのような目的でそのグループを作っているのか」そして「それらの国々はどこにあるのか」を知ることが重要です。

「ロシアにとってみれば、ウクライナがEU(欧州連合)、ましてやNATO(北大西洋条約機構)に加盟することは“ロシアに対する重大な挑戦”。

自らの『勢力圏』であると思っている国が、目的や思想の異なるグループに属したいというんですから、敵対視するのは当然です」(船橋さん)

グループやその目的をよく知っていくと、国と国との関係性が浮き上がってきます。世界の国々はさまざまな思惑によって、同じグループに属したり、属さなかったりしているのです。

こうして、世界地図を見ながらさまざまな国の関係性を知っていくと、あらためて地政学は、歴史や政治のベースとなる学問だということがわかります。

「日本が世界のなかでどういうポジションにいるのかは、世界を知る入り口になります」と坪井さん。

『こども地政学』を参照にしつつ子どもと一緒に、世界の国の位置とグループ、その関係性をまとめてみるのは大きな学びになりそうです。

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次回は、地政学で重要とされるいくつかのキーワードを紹介します。

船橋洋一(ふなばし・よういち)
1968年、朝日新聞社入社。2007年6月から2010年12月まで朝日新聞社主筆。現在は、英国際問題戦略研究所(IISS)Advisory Council、三極委員会(Trilateral Commission)のメンバー。2011年9月に日本再建イニシアティブを設立。2016年、世界の最も優れたアジア報道に対して与えられる米スタンフォード大アジア太平洋研究所(APARC)のショレンスタイン・ジャーナリズム賞を日本人として初めて受賞。『こども地政学』(カンゼン刊)では、監修を務める。

坪井義哉(つぼい・よしや)
2001年、出版社・株式会社カンゼン創業に合わせて、出版部編集長に就任。2008年同社取締役就任。2013年より現在の専務取締役に。編集者として担当する書籍は『こどもSDGs』『こども統計学』『こども地政学』『こどもロジカル思考』『こども倫理学』(バウンド著)などの「こどもシリーズ」ほか多数。

取材・文/遠藤るりこ

2021年3月に出版された『こども地政学 なぜ地政学が必要なのかがわかる本』(カンゼン刊)。グローバル化の時代、世界を正しく見る教養として、地政学をわかりやすく解説しています。第1作の『こどもSDGs なぜSDGsが必要なのかがわかる本』(15刷・12万7000部)をはじめ、「こどもシリーズ」は、9タイトル。シリーズ累計25万2000部売れている人気作だ。
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ふなばし よういち

船橋 洋一

一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長

1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒。1968年、朝日新聞社入社。朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年6月から2010年12月まで朝日新聞社主筆。 米ハーバード大学ニーメンフェロー(1975~76年)、米国際経済研究所客員研究員(1987年)、慶應義塾大学法学博士号取得(1992年)、米コロンビア大学ドナルド・キーン・フェロー(2003年)、米ブルッキングズ研究所特別招聘スカラー(2005~06年)。 2013年まで国際危機グループ(ICG)執行理事を務め、現在は、英国際問題戦略研究所(IISS)Advisory Council、三極委員会(Trilateral Commission)のメンバーである。 2011年9月に日本再建イニシアティブを設立し、2016年、世界の最も優れたアジア報道に対して与えられる米スタンフォード大アジア太平洋研究所(APARC)のショレンスタイン・ジャーナリズム賞を日本人として初めて受賞。 『こども地政学』(カンゼン刊)では、監修を務める。

1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒。1968年、朝日新聞社入社。朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年6月から2010年12月まで朝日新聞社主筆。 米ハーバード大学ニーメンフェロー(1975~76年)、米国際経済研究所客員研究員(1987年)、慶應義塾大学法学博士号取得(1992年)、米コロンビア大学ドナルド・キーン・フェロー(2003年)、米ブルッキングズ研究所特別招聘スカラー(2005~06年)。 2013年まで国際危機グループ(ICG)執行理事を務め、現在は、英国際問題戦略研究所(IISS)Advisory Council、三極委員会(Trilateral Commission)のメンバーである。 2011年9月に日本再建イニシアティブを設立し、2016年、世界の最も優れたアジア報道に対して与えられる米スタンフォード大アジア太平洋研究所(APARC)のショレンスタイン・ジャーナリズム賞を日本人として初めて受賞。 『こども地政学』(カンゼン刊)では、監修を務める。

つぼい よしや

坪井 義哉

カンゼン専務取締役

1972年生まれ。明治学院大学法学部政治学科卒業後、日本エディタースクール昼間部一年制卒業。 1996年より編集プロダクション・株式会社レッカ社にて、雑誌、書籍の編集業務に携わる。2001年、出版社・株式会社カンゼン創業に合わせて、出版部編集長に就任。2008年同社取締役就任。2013年より現在の専務取締役に。 編集者として担当する書籍は『こどもSDGs』『こども統計学』『こども地政学』『こどもロジカル思考』『こども倫理学』(バウンド著)などのこどもシリーズほか多数。 kanzen.jp Twitter @KANZEN_pub

1972年生まれ。明治学院大学法学部政治学科卒業後、日本エディタースクール昼間部一年制卒業。 1996年より編集プロダクション・株式会社レッカ社にて、雑誌、書籍の編集業務に携わる。2001年、出版社・株式会社カンゼン創業に合わせて、出版部編集長に就任。2008年同社取締役就任。2013年より現在の専務取締役に。 編集者として担当する書籍は『こどもSDGs』『こども統計学』『こども地政学』『こどもロジカル思考』『こども倫理学』(バウンド著)などのこどもシリーズほか多数。 kanzen.jp Twitter @KANZEN_pub

えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe