今こそ読むべき「戦争と平和を考える本」ガイド

子どもと大人に伝えたい 戦争と平和

写真:アフロ

2022年2月24日、ロシアがウクライナへの侵攻を開始。連日のように、爆撃や破壊のようすが報道され、小さなお子さんへの影響も懸念されています。「どうしてこんなことが起こったの?」お子さんからそう聞かれて、答えに困っている親御さんも多いことと思います。

今だからこそ、「戦争」と「平和」について、親子で考えてみる機会を持つべきなのかもしれません。今回は、この夏親子で読みたい「戦争と平和」の本をご紹介します。

ウクライナの平和を願う世界の国々と心をつなぐ絵本

『キーウの月』より
ウクライナ・キーウの月も、わたしたちが見上げている月と同じ月
『キーウの月』 ジャンニ・ロダーリ 作 ベアトリーチェ・アレマーニャ 絵 内田洋子 訳

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この本は、イタリアからウクライナ救援のために緊急出版された、 世界的作家、ジャンニ・ロダーリによる”La luna di Kiev”(邦題:『キーウの月』)という詩を絵本化したものです。

みんなに等しく光をとどける美しい月。この月をウクライナの人々が安らかな心で見上げる日が来ますように……。そう願わずにはいられない、心にしみる絵本です。

すでに、スペイン・ルーマニア・ギリシャ・イギリスでは出版が決定し、さらに多くの国で、出版が検討されています。

ロダーリがこの詩を書いたのは、1960年。当時のロダーリが、ウクライナのキーウの月を見上げていたとは、胸が熱くなります。

この絵本の売り上げによる利益はすべて、イタリア赤十字、およびセーブ・ザ・チルドレンに寄付されます。​

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「病院船」になって、みんなを助けたかったナッチャンが、なぜ「戦争の船」に?

『戦争と平和の船、ナッチャン』 半田 滋

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これは、「ナッチャンワールド」という高速フェリーの波瀾万丈の”船生(せんせい)”の物語です。ナッチャンの夢、それは「病院船になりたい」という夢です。「病院船」というのは、大きな事故や災害が起きたとき、海からかけつけて、大きな船が丸ごと病院になってしまうというものです。日本は、まだ病院船を持っていません。

オーストラリアで生まれたナッチャンは、お客さんを乗せて津軽海峡を行ったり来たりする観光フェリーでしたが、燃料の価格が高くなったためにフェリーとして使われなくなり、自衛隊に貸し出されて戦車や装甲車を訓練場に運ぶ仕事につきました。「平和の船」は、またたく間に「戦争の船」に様変わりしたのです。望まないのに「戦争の船」となったナッチャンは、病院船になれるのでしょうか?

長年にわたって防衛省の取材をしてきたジャーナリストが、実在するナッチャンワールドという船を主人公にして、戦争と平和のはざまにある今の時代を伝える、一風変わったノンフィクションです。

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『秋』かこさとしが体験した戦争の悲惨な記憶

『秋』 かこさとし

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かこさとしの未発表作品を刊行。

倉庫に眠っていた、かこさとし未発表作品は、コロナでステイホームの期間中、加古総合研究所の鈴木万里さん(かこさとし長女)が作品整理中に見つけたものです。

この作品の最初の原稿執筆が1953年、なんと構想から実に68年、半世紀以上を経て初めて世に出るオリジナル作品です。

テーマは、かこさんが終生、憎んでいた「戦争」です。太平洋戦争のとき、高校生だったかこさんが体験した実話です。
戦争の悲惨さに怒り震えるかこさんが、いつまでも忘れないようにと子どもたちに伝えようとした作品です。平和を願うかこさんの強い思いが込められています。

子どもたちの未来を考えるすべての皆さんに、天国のかこさんからの贈り物です。

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6000人を救った『命のビザ 杉原千畝』

『杉原千畝 命のビザ』 文:石崎 洋司 絵:山下 和美

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2020年に生誕120年をむかえた杉原千畝。

第2次世界大戦のさなか、杉原千畝はリトアニアの日本領事館の領事代理になりました。
ナチスによるユダヤ人迫害がひどくなる1940年の夏、日本経由で新しい土地に逃れようと、ビザを求めるユダヤ人たちが領事館に詰めかけます。

千畝は悩んだ末、日本政府の方針に反し、日本通過のビザを発給し、6000人のユダヤ人の命を救いました。きびしい戦争の時代を、信念と決断力をもち「命の大切さ」を最優先にして生きた、ひとりの日本人の物語です。

日本人が世界に誇れる日本人として、注目を集めている杉原千畝。
彼の業績を知っている人は多いと思いますが、偉業を成し遂げるまでの苦悩やそのために払った犠牲は、あまり知られていないのではないでしょうか。

どんな困難にあってもあきらめず、自分の信じた道を進んだ千畝。彼の生き方は、いまを生きる、そして未来を生きる読者をはげまし、勇気を与えてくれます。

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