
映画化・歌舞伎化もされた国民的大ヒットシリーズ「あらしのよるに」ママがあらためて感動した「偏見」を乗り越える力
シリーズ最新作『あいことばはあらしのよるに』刊行記念 エニママレビュー・田中しずかさん
2025.04.25

『あらしのよるに』シリーズは、まっくらな嵐の夜に出会った、オオカミのガブとヤギのメイが、お互いの正体を知らず友だちになり、「食うもの」と「食われるもの」という関係に葛藤しながら、友情を深めていくストーリー。全7巻380万部の国民的ベストセラーで、この度、20年ぶりの新刊が刊行され、発売後即重版がかかるなど、話題になっています。

「あらしのよるに」シリーズを読んだAnyMama編集部のママ、田中しずかさんからのレビューをご紹介します。
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【エニママ】https://anymama.jp/
子どもと読んだ『あらしのよるに』 改めてシリーズで読んでみたら…
過去に映画化もされた『あらしのよるに』は、もしかしたら読んだことがあるかもしれない程度の認識でした。読みながら「そういえば……」と思い出したのが、今は8歳になる長男が年中のときに読んだ記憶です。
おそらく全シリーズは読んでいなかったと思います。でも『あらしのよるに』を読んだあとは、息子が「どうなるの? ヤギとオオカミは仲良くしてるの?」と心配そうに話していたのを覚えています。

今回、改めて私一人で全シリーズを読みましたが、ヤギのメイが食べられないか、2匹が会えなくなるのではないか、と最後までドキドキハラハラでした。
特に、6作目の『どしゃぶりのひに』は、1冊だけ読むとただただ悲しんでしまうところを、7作目の『まんげつのよるに』まで読めば2匹の友情と命の尊さを感じられるところが心に響きました。
食う・食われるの関係を超え、ヤギとオオカミが育む真の友情
お互いを知らず、声のみ聞いて会話だけで出会ったヤギとオオカミ。本当の姿を知ってからも自身の特性に苦しみつつ友情を育む2匹に、私はときに胸を締め付けられながらも愛おしい気持ちを抱きました。
まわりから現実を突きつけられても友情を貫く姿は、境遇は違っても今後同じ状況になったらどうするだろう?と自分に投げかけながら読み進められました。
特に、ヤギのメイが、食べられるかもしれない恐怖があるはずなのに、オオカミのガブを信頼しきっているのが、「あらしのよるに」シリーズの重要なところです。最悪の場合、食べられてもいいと思うほどの仲の良さは、友情の真のあり方なのではと思います。

昔ほどではありませんが、偏見は世の中のいろいろなところに潜んでいます。「こうだからこう」と決めつけず、自分の心に素直に従って人と触れ合う大切さを、「あらしのよるに」シリーズを読んで改めて実感させられました。
長男に『あらしのよるに』を読んでから、4年ほどの時が経ちました。息子は小学3年生、下の娘は当時の息子と同じ年中になります。見届けられなかった最後を、息子と読みたい、新しく娘に読んで偏見やいのちのことを知ってもらいたい、と思うきっかけになりました。
全作を改めて子どもに読んであげたい、そして読み続けたいと思える作品です。子どもたちが「あらしのよるに」シリーズを読んでどう思うか、今から楽しみです。
新作「あいことばはあらしのよるに」刊行
「あらしのよるに」は種を超えた「友情」を描いた大人気シリーズ、新シリーズはさらに種を超えた「家族の絆」を描きます。いまの時代にこそ読んでほしい新シリーズ第1巻が刊行。

仲良しな2人なのに、実はおたがい隠している秘密が!? 疑いあってしまう2人の友情と新たな命の行方が気になる第1巻。ヤギとオオカミの壁を越えた友情から家族の物語へ……待望の新シリーズがスタート!
「あらしのよるに」シリーズ全7巻はこちら
