
子どもが「友だち」で悩んだときに 親がそっと手渡したい「心が軽くなる本」の処方箋
出版ジャーナリスト・飯田一史が選ぶ、心の処方箋 第6回 「友だち付き合いに悩んだときに読む物語」 (2/3) 1ページ目に戻る
2025.11.04
ライター:飯田 一史
友だち付き合いや、クラスメイトとの付き合いは、大人が子どもに対して「こうしたらいいよ」とサジェストしにくい領域です。なぜならそういう心の引っかかりについて、そもそも子どもは大人に対してあまり素直に話してくれないからです。
仮に話してくれたとしても、本人が見て感じている人間関係の世界と、あれこれ経験してきた大人が一歩引いたところから語る言葉の間には、どうしても距離感があります。そうすると大人が助言しても入っていかず、なかなか当人の悩みの解消にはつながりません。
また、子どもはモヤモヤした気持ちはあっても、それをうまく言語化できないことも多く、はっきりしたことがわからなかったりもします。
本は、そういうときの助けになります。自分ではうまく言葉にできなかったことを本が言い当ててくれたり、同年代の登場人物の視点を通じてどんなふうに人づきあいをしていけばいいのかを考えるヒントになってくれることでしょう。
①『ゆかいな床井くん』
著:戸森しるこ(講談社)
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『ゆかいな床井くん』では、ちょっと抜けたところがあるけれど周囲の人たちへのフォローがうまい床井くんと、若干気にしいの暦(こよみ)を軸に、小6のクラスを舞台に起こる学校の日常を描いていきます。
教育実習生の女性に思わず悪気なく「すげーっ、巨乳じゃん!」と言ってしまったことでクラスの女子を敵に回した遠矢くんのエピソードのほか、うわさ、悪口、教室でしゃべらない子との距離感等々、本人たちからすると日々「どうしよう」と思う出来事が連作短編のかたちで書かれています。
登場人物たちと同じくらいの年齢で読めば、自分に引きつけて「ああ、こんなふうに言えばよかったのかな」とか「あのとき怒っちゃったけど、向こうにも事情があったのかな」と思いを馳せてくれるはずです。
②『彼女たちのバックヤード』
著:森埜こみち(講談社)
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『彼女たちのバックヤード』は、床井くんよりもう少し年上の、中3“仲良し”女子3人がある事件をきっかけにギクシャクしはじめ、そこからお互いを深く知っていくという物語です。
思春期は感情や興奮が先走ってブレーキが効かない年頃です。「どうしてあんなことしちゃったんだろう」「言いすぎた」と後悔し、でも、なかなか謝ることもできないものです。この作品の序盤はそういう「やってしまった」感をうまく描いています。
3人のうち、ひとりは母子家庭、ひとりは親の離婚と再婚を経験した家庭、ひとりは言葉を話さない弟がいる家庭で、そういう事情も物語に大きく関係してきます。
家の事情についてはセンシティブな話題ですから、なかなか言えないものです。でも3人はそういった背景もお互いに打ち明けて話すことで、以前よりも理解しあえるようになります。
もちろん、現実の友人関係では、思っていることを吐露するのも、自分の家庭の話をあけすけに語るのも、非常に勇気がいることです。できない人も多いでしょう。でもこの作品を読むと「そうしたほうがいいときもあるのかもしれない」と背中を一押しされるはずです。



















































































