勉強嫌いや友達トラブルに対処 小児脳科学者の育児法「ペアレンティング・トレーニング」事例集

事例でわかる! 勉強嫌いやいじめにも対応! ペアレンティング・トレーニング#3

ペアレンティング・トレーニングで生活が変わると、子どもの生活態度も勉強への取り組み方も変わってきます。写真:アフロ

ペアレンティング・トレーニングは、小児科医であり、小児脳科学者の成田奈緒子先生が脳科学の観点から確立した新しい育児法です。親の子育てに対する意識や対応を変えることで子どもの脳にいい刺激を与えて、頭の中から子どもの育ちを応援します。

成田先生が主宰する子育て支援事業〈子育て科学アクシス(以下、アクシス)〉には、育児に行き詰まったパパママが来室し、メソッドに沿った育児アドバイスを受けています。

トレーニングの実践により家族関係や生活全体が改善し、子どもの様子が変わったという家庭は後を絶たないそう。子育てが苦しくなった親子を救ってきたという、ペアレンティング・トレーニングを事例を用いて解説いただきます(全3回の3回目。#1#2を読む)。

親が焦ることほどペアレンティング・トレーニングが役に立つ

ペアレンティング・トレーニングには、子どもの脳を育てる6つのポイントがありました(#1#2を読む)。シリーズ最終回の今回は、具体的な事例をもとにトレーニングをどのように生活に使っていけばいいかなどをみていきましょう。

ケース1)宿題をしてこないと学校の先生から連絡が! 子育てに手詰まり感を覚えた家庭の話

これは小学校低学年の男児とその親御さんのお話です。ある日、母親は学校の先生から子どもが宿題をしてこない、授業が理解できていないから自宅学習を強化してほしいとの連絡を受けました。

親御さんは先生の指摘に焦って、子どもの横に張り付いて夜遅くまで勉強をさせたのですが、これを続けていくうちに親子ともにイライラがつのって、生活も親子関係も悪循環にハマってしまいました。

私が主宰するアクシスに相談に来られたとき、特に親御さんは精神的に追い詰められた状態でしたね。

私は真っ先に、勉強よりも「①ブレない生活習慣」の立て直しをアドバイスし、子どもが勉強しなくても宿題をしなくても今は目をつむり、とにかく睡眠時間の確保と同じ時間に起床させることだけに専念してくださいと伝えました。

生活リズムを整えている期間は、宿題をしてこないことで学校の先生から再び指摘を受けましたが、それは親が謝ることで乗り切ってもらった経緯もあります。

しかし、勉強のことを考えず、生活の立て直しだけに集中してしばらく経つと、精神的に追い詰められていた親御さんの表情が緩み始め、やがてそれが「⑤親子が楽しめるポジティブな家庭の雰囲気を作る」につながり、不思議と子どもも意欲的な姿を見せるようになったのです。

自分から「いつも漢字のテストで0点か10点しか取れないけど、100点取ってみたいんだぁ」とも言い出し、私が朝に勉強するといいよとアドバイスするとそのとおりに勉強をし始めたそうです。

漢字のテストは、最初から100点は取れませんでしたが、10点が30点になり、50点になり、数ヵ月かけて目標を達成することができました。「ウチの子が勉強しているんです!」と親御さんは子どもの様子に驚いていましたね。

このケースのポイントは、すでに乱れていた生活習慣の立て直しと、それに集中したことで余計な心配に惑わされることがなくなって、親側の表情の緩みが導けたことです。

一方、子どもは睡眠で「からだの脳」が作られたと同時にポジティブな家庭の雰囲気が「おりこうさんの脳」を刺激して、「こころの脳」である前頭葉で自分が取るべきベストな行動を取れるようになりました。

親として我慢が必要な時期もありましたが、結果的に子どもには一生役に立つ力を与えられた例です。

ケース2)かんしゃくがおさまらなくて、ほとほと困った家庭の話

低学年の女児のお話です。その子の家庭では年中行事を家族で楽しむことを大切にし、子どもも楽しみにしていたそうです。

ですが、子どもがイベントのセッティングを早めにしたことで生活に支障が出たため、親御さんは子どもが準備したものをいったん片付けたのですが、これが子どものかんしゃくを引き起こしました。数時間も泣き叫んで、手に負えなくて困ったというのが相談内容でした。

ここで私が親御さんにアドバイスしたことは、子どもの脳の育ちに着目してほしいということでした。この子は年中行事をちゃんと覚えていて、何を準備しなければいけないのかも把握していたのです。

親は子どもがかんしゃくを起こすと怒ったり、なだめすかしたりしますが、それよりもかんしゃくを起こす前の子どもの行動をよく観察してほしいですね。子どもが何を考えて、どうしてその行動を取ったのか、脳からアプローチする意識が大切です。

またこのケースは、ペアレンティング・トレーニングのコツである「親がいい刺激(年中行事を家族で楽しむ)を繰り返し与えていた」事例にもあたります。繰り返しの刺激により「こころの脳」の前頭葉で見通しを持って、それを踏まえた行動を子ども自らができたという好例です。

子どものかんしゃくは、時として大人の都合を押し付けたことで起こります。この場合は、前年と同じように子どもが準備できたことを「準備してくれたの。ありがとう!」と親が喜び、その後で「でもね、今は……」と続けたらかんしゃくを回避できたでしょう。

行事など、子どもと何度も行っているポジティブな経験は脳育ての大事なエッセンスです。この機会を無駄にしないでください。

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