さかなクン 勉強は超苦手でも名誉博士! 秘密をのん主演映画で探った

映画『さかなのこ』に学ぶ“好き”が生み出すパワー#1

ライター:星野 早百合

刺身、煮物、酢の物……とタコ料理に腕を振るうお母さん。ちなみにお魚は、ミー坊がじっくり観察しながら絵を描けるようにと、いつもまるごと1匹買って料理していたそうです。  Ⓒ2022「さかなのこ」製作委員会

まわりと比べずに子どもの「個」を尊重する

お母さんのサポートもあり、お魚への愛が深まるばかりのミー坊ですが、学校の成績は悲しいかな、残念なもの。頭の中は、毎日お魚のことばかり。お父さんは、そんなわが子のことを「まわりの子と違う」「ふつうじゃない」と心配します。

でも、お母さんは迷いなく言います。

“いいんです。あの子は、このままでいいんです”(『さかなのこ』より)

時は流れ、高校生になってもミー坊(のん)は、相変わらずお魚に夢中。高校の廊下には、ミー坊が書いたお魚の記事満載の『ミー坊新聞』が貼り出され、先生や生徒から人気を集めていました。

でも、やっぱり学校の成績はイマイチ。三者面談では、担任から「お魚のことはほどほどにして、勉強をがんばるように」と言われてしまいます。

けれど、ここでもお母さんはキッパリと返します。

“成績がいい子もいれば、悪い子もいて、それでいいじゃないですか。そんなみんな勉強がよくできて同じだったら、優等生だらけでロボットみたいだわ”

“この子はお魚が好きで、お魚の絵を描いて、それでいいんです”(『さかなのこ』より)


子育てをしていると、娘が「まわりと同じ」ことに安心する瞬間が、私には結構あります。反対に、娘とまわりの子を比較して「あれができない」「これもできない」と、焦ったり不安になったりすることも。

でも、お母さんは違います。まわりの誰とも比べることなく「この子はこの子。それでいい」と、ミー坊の個性を認め、しっかりと受け止めているのです。

担任の前で「この子はこの子」とはっきり言葉にしてくれるお母さんの存在は、子どもにとって、どれだけ頼もしいことか!  Ⓒ2022「さかなのこ」製作委員会

さらに原作には、「絵の才能を伸ばすために、先生をつけて勉強させたら」という担任の提案に、ズバッと切り返したエピソードも綴られています。

“そうすると、絵の先生とおなじ絵になってしまいますでしょ。あの子には、自分の好きなように描いてもらいたいんです”(『さかなクンの一魚一会』より)

さかなクンは、振り返ります。

“先生に語ったこの言葉どおり、「勉強しなさい。」とか「お魚のことは、これくらいにしときなさい。」などと言ったことは、いっさいありませんでした。(略)

そのおかげで、自分はこれまでずっと、お魚に夢中になってこれました。今の今まで、一度たりともこのお魚好きを、自分自身で恥ずかしいとか、変だと思うことがなかったのは、母の力が大きかったかもしれません”(『さかなクンの一魚一会』より)


いちばん近くにいる親が、ありのままの自分を認めてくれる──。

それだけで子どもは、自分の“好き”に大きな自信を持って、ぐんぐん前へ進めるのかもしれません。

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