どなるのもお尻を叩く罰もNG! 子どもへの体罰が脳にもたらす大きな悪影響
子育てアドバイザー・高祖常子氏「叩かない&どならない子育て2022」#2~体罰がもたらす子どもへの悪影響~
2022.08.24
子育てアドバイザー・キャリアコンサルタント:高祖 常子
国や行政の子育てに関連した多数のプロジェクトで委員を務め、全国で講演なども行っている、子育てアドバイザーの高祖常子(こうそ・ときこ)さん。
子育ての専門家でもある高祖さんが、10年以上、強く言い続けていることは、「叩かない、どならない」子育て。しつけとして軽く手をあげることも、暴言もNGです。
とはいえ、自分が子どものころ、親や先生からしつけだと叩かれた経験があるパパママもいるでしょう。では今、なぜ、そこまで強く体罰を禁じるのか。
それは、子どもの体と成長に悪影響を及ぼすことが明らかになったからだと高祖さんは話します。
※前回(#1)を読む
そもそも体罰とは何か?
ところで皆さん、「体罰」ってどういうことだと思いますか。「悪いことをしたときに罰を与えること?」など、なかなか明確に答えるのは難しいのではないでしょうか。
前回の記事で、国の「体罰禁止のガイドライン」の委員に入れていただいたお話をしましたが、ガイドラインの中で「体罰」については以下のように定義されました。
「たとえしつけのためだと親が思っても、身体に、何らかの苦痛を引き起こし、又は不快感を意図的にもたらす行為(罰)である場合は、どんなに軽いものであっても体罰に該当し、法律で禁止」
(2020年厚生労働省「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」)
上記を読み解くと、体罰は以下のように定義されています。
・身体に何らかの苦痛を引き起こす行為
・不快感を意図的にもたらす行為
・どんなに軽いものであっても体罰に該当
ガイドラインでは体罰の例が挙げられています
こんなことしていませんか
・言葉で3回注意したけど言うことを聞かないので、頰を叩いた
・大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
・友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
・他人のものを取ったので、お尻を叩いた
・宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった
・掃除をしないので、雑巾を顔に押しつけた
→これらは全て体罰です。
さらに暴言の例も紹介されています。
こんなことしていませんか
・冗談のつもりで、「お前なんか生まれてこなければよかった」など、子どもの存在を否定するようなことを言った
・やる気を出させるという口実で、きょうだいを引き合いにしてけなした
→子どもの心を傷つける行為です。
「これだけではよくわからない」「もっといろいろな例を示してくれないと」と思った方もいると思いますが、例を挙げ続けると、「じゃあこれは書いてないから、体罰ではないの?」などと疑問に思ってしまう人もいます。
会議でも議論し、あえてたくさん並べないことにしました。要は、そもそも「子どもの体や心を傷つける行為をしない」をベースにしようということです。
つまり、「体罰」は身体的な行為、「体罰等」は暴言も含み、体や心を傷つける行為と考えるといいでしょう。
体罰禁止は「子どもの権利」が考え方のベースとなっている
「子どもの権利条約」とは、1989年に国連総会で採択されたもの。そして日本は1994年に批准(ひじゅん)しています。子どもの権利条約は、以下の4つの原則が柱となっています。
子どもの権利条約4つの原則
・生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること)
・子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)
・子どもの意見の尊重(意見を表明し参加できること)
・差別の禁止(差別のないこと)
※詳しくはユニセフ「子どもの権利条約」参照
体罰は体を傷つけ「命を奪う」こともありますし、暴言によって子どもの「成長が脅かされる」こともあります。
さらに、子どもは叩かれたりどなられたりすることによって大人を怖がり、意見を言う機会を持てませんし、意見を言う気力をも奪ってしまう可能性もあります。
これでは「意見の尊重」とは真逆の行為です。子どもの意見を聞かずに「最善の利益」を守り、「差別を禁止」することはできないでしょう。つまり子どもへの体罰や暴言は、子どもの権利を侵害しているということになるわけです。