「なんで空は青いの?」「どうして勉強をしなきゃいけないの?」
子育てをしていると、子どもからたくさんの質問をされませんか。
この「質問」こそが、人生を豊かにするコンテンツだと話すのは、質問家として活動をする河田真誠(かわだ・しんせい)さん。質問の専門家として、全国100校以上の小中高校で出張授業を行ってきました。
「自分の人生で自分が主役でいるためには、《質問》が必須」だと河田さん。2024年4月には、10歳以上をターゲットにした書き込み式のワークブック『君を一生ささえる「自信」をつくる本』(アスコム)を出版しました。
「質問に答えることで子どもに自信がつくられる」と河田さんは言いますが、それってどういうこと? 質問が持つ力と、子どもたちへの授業の様子などを伺いました。
河田真誠(かわだ・しんせい)PROFILE
企業コンサルタント、作家。2010年から「質問家」としての活動を開始。質問を通して解決に導く「質問の専門家」として、企業研修や小中高校での授業を多数行い話題に。近著に『君を一生ささえる「自信」をつくる本』(アスコム)。
自分のことが答えられない若者たち
広島県でデザイン会社を経営後、2010年から東京に拠点を移し、企業のコンサルタントとして講習や研修を行ってきた河田真誠(かわだ・しんせい)さん。
専門知識や経験をもってアドバイスする手法ではなく、相手に質問を重ねて真意を聞き出し、課題を解決に導くという、“問い”のスタイルでコンサルティングを行い、人気を博してきました。
コンサルタントとして多くの人と出会うなかで、特に若い世代の社員たちとの会話に危機感を感じていた、と河田さんは言います。
「研修の後、若い子たちに『あなたは何が好きなの?』『これからどうしていきたいの?』なんて聞くと、みんな答えられないんですよ。幾多の難関をくぐって有名企業に入社してきた子たちなのに、自分に向けられたシンプルな質問には答えられない。それってどうしてだろうって」(河田さん)
若い社員たちは、河田さんに“答え”を求めてきます。
「そして、みんな僕に聞くわけですよ。『好きってどうやって見つけたらいいんですかね?』って。でも、そんなのは人それぞれで、自分の中に答えがあるもの。それを若者たちは上手にアウトプットができていないんです。
これは結構深刻な問題で、子どものころから関わっていかなければいけないと思った。だから、企業コンサルタントでいただいたお金で、全国の小中高校を無料で回る活動を始めたんです」(河田さん)
河田さんは自らを「質問家」と名乗り、講演を始めます。何かを教えてくれるわけでなく、ただ質問をする、というだけのシンプルな授業です。
「僕は、国語・算数・理科・社会・“質問”、と、必修科目にしてもいいと思っている。それくらい、世の中には“問い”が必要なんです」(河田さん)
幸せはどう見つけるのか
「僕たちの親世代までは、全員がひとつの幸せの形を求めていた」と河田さんは言います。
「一生懸命に勉強をして、いい成績を取って、いい大学行って、いい会社に勤めて、給料をたくさんもらって出世して、結婚して子どもを持って、家を建てて……が幸せの模範的な形。
誰しもがそんなゴールを目指してきたから『なんで勉強しないといけないの?』という問いに対する答えはひとつ、『同じ形の幸せを得るため』だったと思うんです」(河田さん)
でも今は、「学校なんて行かなくてもいい。お金を稼ぐだけじゃない生き方もあるよね。結婚も、したかったらしてもいいけどしなくても全然いいし、子どももいてもいなくてもいいんじゃない、といった考えに変化したでしょう」と河田さん。
「僕たちは自分が『いいな』と思うものを選択できるようになって、自由になった。でもその一方で、『誰も幸せの正解を教えてくれなくなった』『どうしたらいいかわからない』と迷ってしまう問題が起こってるんですよ。
今は、隣の人の幸せと自分の幸せが同じじゃないっていうことがはっきりわかった。自分で自分の幸せとは何かを考えない限り、幸せになれない時代なんですよね」(河田さん)
そこで、自分の答えを自分で見つけ出す習慣作りとして「質問」が大切なのです。
「質問には、ふたつの大きな力があります。ひとつめは、『自分を見つける』ことと、ふたつめは『他人を理解する』こと。
自分への質問に答えることは、自分の考えや気持ちを整理して言語化する作業で、その過程で自分の答えを見つける力が養われます。
他人へ質問をしてその答えを聞くことは、他者を理解して受けとめること。同時に思いやりや多様性をつちかうことができるんです」(河田さん)
好きなことや、やりたいことの質問に答えられない若者たちのように、人生の中に自分の考えがない状態で生きている人は少なくないと、河田さんは続けます。
「それを解決するのが“問い=質問”。自分で自分の人生を作っていくために、『幸せってなんだろう』っていうところから、自分で考えていくことができると人生は豊かになるんじゃないかと思うんです」(河田さん)
自分の視点に切り替える習慣
子どもたちを相手にした、わかりやすい質問の効果は、毎日の宿題や友だち関係にも利用できます。
「宿題をしない子に、いくら『宿題をしなさい!』って言い続けてもなかなか難しいですよね。だったら、質問に変えたらいいんですよ。『どうしたら宿題ができる?』と聞いてみるんです」(河田さん)
具体的に問いを投げかけると、自分の中にある答えが見つかります。実際にこの問いかけで、宿題をするようになったという子どもは多いといいます。そしてこれは、友だちとのトラブルでも同じ。
「友だちと喧嘩してしまったというとき、親は事細かに経緯を聞いて『それは誰が悪かったね』なんて判断したり、『次からこうしたらいいよ』なんてアドバイスしたりしますよね。
でも、親がすべきことはそうじゃない。『なんでその子はそういう行動をとったのだろうね』と、相手の気持ちを考えさせてみること。そして、その後に必ず『あなただったらどうしていた?』と聞くことです」(河田さん)
こんな小さな質問のやりとりで思考癖をつけることが、人生を支える習慣にもなると河田さんは続けます。
「人ってついつい誰かの話をしますよね。子どもなら、友だちがどうした、先生が何を言った、とか。企業のコンサルのときも、上司や部下がどうで、お客さんがこうでとか、みんな人についての話は饒舌。それなのに、なかなか自分の話はしないんです。
だけど、人生でコントロールできるのは自分だけ。誰かの話だけをし続けても現状は良くならない。それなら自分が変わっていくほうが早い。
子どもに誰かの話をされたら、いったん受けとめた後で、『あなたはどう思う?』って、子ども自身の視点に切り替えてあげたほうがいい。それが、自分の人生を主体的に作る習慣に必ずつながっていきます」(河田さん)
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次回は、小中高校での「質問の授業」の様子について。河田さんが子どもたちへ投げかける質問は、「どんなときに幸せだなって思う?」などの本質的なものから、「空の上に何があったら楽しい?」、「なんでも見えるメガネがあったら何が見たい?」など、ユニークなものまで。どんなやりとりが生まれているのか聞いてみました。
取材・文/遠藤るりこ
詩で問いかける「編集部おすすめ絵本」
※質問家・河田真誠さんに聞く「質問の話」は全3回(公開日までリンク無効)
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遠藤 るりこ
ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe
ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe
河田 真誠
企業コンサルタント、作家。2010年から「質問家」としての活動を開始。現在は、生き方や考え方、働き方などの悩みや問題を、質問を通して解決に導く「質問の専門家」として、企業研修や小中高校での授業を行っている。 主な著書に『革新的な会社の質問力』(日経BP社)、『私らしくわがままに本当の幸せに出逢う100の質問』(A‐works)、『人生、このままでいいの?』(A‐works)、『悩みが武器になる働き方』(徳間書店)など。 近著には『君を一生ささえる「自信」をつくる本』(アスコム)がある。現在は仏教を学ぶべく、大学に通いながら活動を続けている。 公式HP 河田真誠inc
企業コンサルタント、作家。2010年から「質問家」としての活動を開始。現在は、生き方や考え方、働き方などの悩みや問題を、質問を通して解決に導く「質問の専門家」として、企業研修や小中高校での授業を行っている。 主な著書に『革新的な会社の質問力』(日経BP社)、『私らしくわがままに本当の幸せに出逢う100の質問』(A‐works)、『人生、このままでいいの?』(A‐works)、『悩みが武器になる働き方』(徳間書店)など。 近著には『君を一生ささえる「自信」をつくる本』(アスコム)がある。現在は仏教を学ぶべく、大学に通いながら活動を続けている。 公式HP 河田真誠inc