子育て「金のルール」 早寝早起き・朝ごはんが脳を育てる理由 「夫のトリセツ」黒川伊保子が脳科学で解説
【AI時代の新・子育て法 #1】近未来に必須の脳力とは? 子どもの脳の育て方
2024.05.24
AI時代を生き抜くための土台づくり。金のルールの要素は5つ!
脳を最大限に活用するために心がけたい「金のルール」
(1) 早寝
(2) 早起き
(3) 朝ごはん
(4) 適度な運動
(5) 読書
脳を最大限に活用させ、AI時代を生き抜くための土台をつくる「金のルール」は、普遍的な要素が並びます。「いまさら……」と思う方もいますが、脳科学からアプローチすると無視できない習慣だと気づかされます。
「早寝・早起きはセットとして考えてください。メラトニンは眠りを誘うホルモンで、セロトニンは脳内全体に信号を起こしやすくするホルモンです。前者がブレーキ役なら、後者はアクセル役といえます。
これら二つは光と闇の反復に乗っかって、脳が最大限に活性化するように取り計らってくれます。しかも、脳は眠っている間に進化するので、睡眠は子どもの脳には重要です。
例えば引き算を習った日なら、子どもの脳は、寝ている間に引き算の構造を記憶と認識を司る海馬で知識化します。すでに足し算を習っているなら、その知識と照らし合わせたりもします。つまり勉強は、睡眠によって完成するのです」(黒川さん)
寝る子は育つとはよくいったもので、身体も眠っている間に成長するのはすでに知られています。早寝・早起き、十分な睡眠は、子どもの脳だけでなく身体にまでメリットをもたらします。
朝ごはん、適度な運動、読書はなぜ子どもの脳に大切なのか?
黒川さんは早寝・早起きのほかに、朝ごはん、適度な運動、読書も脳をうまく機能・制御するベースづくりには重要だと話します。
「前述しているように子どもの脳は、眠っている間もフル稼働しているので、朝は燃料を使い切っている状態です。ですから、朝ごはんでエネルギーを補給することも大事。その日の脳を正常に機能させるには、脳神経信号を起こす燃料が必須です。
また、適度な運動は脳の学習効果を上げ、読書は脳に豊富な仮想体験を提供して、知恵やセンスの源になっていきます」(黒川さん)
マンガで「脳育て」するなら8歳までに
本は日常では体験できないことを与えてくれますが、マンガや映画などの視覚的媒体も非日常感が味わえます。黒川さんはこれらに関してはどう考えているのでしょうか。
「確かにマンガや映画も日常ではないことを味わわせてくれます。けれど、読書は特別です。なぜなら、主人公には顔がなく自分に投影できるから。
『ハリー・ポッター』シリーズを例にすると、映画を見ちゃうとイメージが固定されてしまいますが、文字ならあらゆることが想像の中でつくれます。だから、私は本を読むことを特別視しているんです。
とはいえ、マンガを否定するつもりはありません。マンガは文字の本とは異なる脳の場所を活性化し、イメージ力を育てるからです。
例えば、男女が見つめ合って、次にキスをしているシーンがあるとします。実はここでコマとコマの間を脳がつないで映像化するんです。男女が近づいていくイメージは、脳がつくり出します」(黒川さん)
コマとコマをつなぐ創造力は小脳の機能であり、黒川さん曰く「あの能力は8歳までに大きく育つので、私は8歳までにマンガも読み始めるといいと思っています」とのこと。
また、イメージする力はマンガだけでなく空間認知など、ほかの分野でも使われるはずです。だからこそ、子どもには自由に読書をさせてほしいと黒川さんはいいます。
「金のルール」は先人の知恵だったり、これまでも多くの育児書で取り上げられている要素ではあるものの、脳科学の観点から見ると別の角度から重要性を理解できます。
我が子の未来のために、AI時代の子育てにアップデートしたいと思うなら、まずは金のルールで脳を最大限に活用するベースづくりから始めるといいでしょう。
次回は、金のルールの次に取り組みたい脳育てについて紹介します。今後、さらに深化していくAI時代においては、結局、子どものどんな側面を育てたらいいのでしょうか。AI時代を生き抜く資質について迫ります。
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◆黒川 伊保子(くろかわ いほこ)
人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。
1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年、全国の原子力発電所で稼働し、“世界初”といわれる日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界にも新境地を開拓した感性分析の第一人者。
著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』『夫婦のトリセツ 決定版』『子どもの脳の育て方 AI時代を生き抜く力』(いずれも講談社刊)、『人間のトリセツ──人工知能への手紙』(ちくま新書)、『話が通じないの招待──共感障害という謎』(新潮文庫)など多数。
取材・文/梶原知恵
【AI時代の新・子育て法】の連載は、全2回。
第2回〈子どもの「脳力」を伸ばす 「AI時代」対応の新型子育て 「夫のトリセツ」の黒川伊保子が伝授〉を読む。
※公開日までリンク無効
梶原 知恵
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。
黒川 伊保子
1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』『夫婦のトリセツ 決定版』(いずれも講談社+α新書)、『人間のトリセツ──人工知能への手紙』(ちくま新書)、『話が通じないの招待──共感障害という謎』(新潮文庫)など多数。
1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』『夫婦のトリセツ 決定版』(いずれも講談社+α新書)、『人間のトリセツ──人工知能への手紙』(ちくま新書)、『話が通じないの招待──共感障害という謎』(新潮文庫)など多数。