子育て「金のルール」 早寝早起き・朝ごはんが脳を育てる理由 「夫のトリセツ」黒川伊保子が脳科学で解説
【AI時代の新・子育て法 #1】近未来に必須の脳力とは? 子どもの脳の育て方
2024.05.24
第三次AI(人工知能)ブームといわれて久しい昨今。テクノロジーはスピードを上げて進歩しており、それに伴って社会も加速気味に変化をしています。
現在の子どもたちが大人になるころには、今以上にさまざまな技術や製品が創出されている未来が想像できる一方で、親としては自分たちの子育てが時代に追いついているのか、あるいは未来を見据えた子育てになっているのか、不安を抱いている方もいるでしょう。
AIを生み出した一人である黒川伊保子さんは、人工知能が台頭する現代を見越して、新しい理論で息子さんを育てた人工知能研究者です。
先見の明を持ち、独自の子育て理論を実践した経験も踏まえて、AI時代を生き抜ける子どもの脳の育て方をお聞きします(全2回の1回目)。
◆黒川 伊保子(くろかわ いほこ)
人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。
コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わる。1991年、全国の原子力発電所で稼働し、“世界初”といわれる日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いた語感分析法「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界にも新境地を開拓した。著書に『子どもの脳の育て方 AI時代を生き抜く力』(講談社刊)など多数。
【AI時代の新・子育て法】の連載は、全2回。
第2回〈子どもの「脳力」を伸ばす 「AI時代」対応の新型子育て 「夫のトリセツ」の黒川伊保子が伝授〉を読む。
※公開日までリンク無効
目次
黒川流の子育てを総括。AI時代を見据えた子育てを実践した結果とは?
──「私は息子の『生きた脳』を手に入れた」──
1991年、大手企業の人工知能エンジニアであり、AIを生み出した一人だった黒川伊保子さんは、AI時代を踏まえた独自の子育て理論で息子さんを育てます。
あれから30年以上が経ち、今では息子さんも父親に。先の時代を見据えた子育てを実践した黒川さんは、一応の実験結果を次のように話します。
「息子は、私の想像の範囲を超えた人物に成長しています。今はもう、一人の男性、一人の大人として心からリスペクトする存在です。
子育て中はもちろん、他のご家庭と同じようにうまくいかないこともありましたが、結果的には、息子は苦しい壁を自分で乗り越える力をつけ、個性もいいかたちで成熟させてくれました」(黒川さん)
黒川さんが息子さんの誕生とともに始めたのは「自己充足度の高い脳」に育てる子育てです。
自己充足感とは?
脳を装置として見立てた場合、すべての機能ブロックがうまく機能・制御したときに得られる感覚のこと。「自己肯定感」は、自己充足している脳が自覚する感覚。
「私がなぜ『自己充足度の高い脳』を子育てのテーマにしたのかというと、これからやってくる人工知能の時代が人と違うことが価値を持つ時代で、自分自身を持っていることが重要だと気づいていたからです。
1991年当時、世はバブルの真っ最中で、早期教育がヒートアップしていたころでした。私はその時点で想像できるエリートの道が30年後、あるいはもっと先の未来で通用するとは思っていませんでした。
エリートの仕事って、実は人工知能が一番得意とする分野なんですよ。つまりAIは、誰もが納得する正解を、誰よりも早く出して、誰よりも早く実行するのに長けています。
人工知能の時代になれば、優等生的なことはAIがやってくれるわけですから、社会で求められるのは気づきとか発想とか、その人らしく生きて、その人にしか導けない答えを出すことだと思いました」(黒川さん)
自分の脳にしか出せない答えを導く方法
AI時代において、「求められるのは独自の気づきや発想」といいますが、黒川さんは「気づきや発想は、好奇心があるということに集中していく」と続けます。
「私たちの脳は、遺伝と経験が作り出す回路なので、二つとして同じものはありません。
この世でたった一つしかない装置なんです。ですから、好奇心を原動力として脳神経信号をうまく作動させれば、私たちは自分の脳にしか出せない答えを導けるはずです」(黒川さん)
ただし、脳を最大限に活用するには、自分の脳を首尾よく使える土台をつくっておかなければなりません。それを人工知能の研究者目線で表現すると、「脳の電気信号が起きるべきときに起きて、起こるべきところで起こり、かつ電気信号が減衰・減速しない」土台ということになります。
「電気信号がいつでもそつなく動くベースが整っていると、私たちの脳は個性を発揮します。
だからこそ、子どもの生活は『金のルール』を心がけましょう。そして、脳をうまく機能・制御できるベースを育ててあげて欲しいのです」(黒川さん)