「子どもには競争が必要でしょうか?」子育て相談 モンテッソーリで考えよう!

第8回

モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所所長:田中 昌子

子育て中は、日々、悩みや困りごとがありますね。そこで、「モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所」所長で、たくさんのお母さま、お父さまの相談にのってこられた田中昌子先生にお話をお伺いしました。ちょっとした工夫で、子どもたちに大きな変化が起こるモンテッソーリの考え方は、目からうろこが落ちることがいっぱいです。子育て中の人、必読です!

※この記事は、講談社絵本通信掲載の企画を再構成したものです。

(イメージ写真/photoAC)
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子どもには競争が必要でしょうか?

主人と子育ての方針が合わずに困っています。男の子なので競争させて伸ばす、子どもには切磋琢磨や厳しい躾が必要だ、と主人は言います。自分は、そのような育ち方をしてきたといいます。
確かに、悔しいから頑張る、1番になりたい、という気持ちは、将来、競争社会に放りこまれ、打ち勝っていかなければならない男の子にとって、必要にも思えます。
モンテッソーリ教育ではどのように考えていますか?

夫婦間で意見が合わない、というご相談もよくあります。夫婦それぞれの成育歴は異なりますし、自分の「育ち」は心身に染みついていますから、子どもの育て方について、夫婦で意見が対立しがちなのです。

子どもは環境や、かかわり方を変えることによって、すぐに変わります。しかし、大人を説得して考えを変えようとするのは、難しいものです。
モンテッソーリも「幼児が吸収したものは人格として永遠に定着するため、大人を変えようとしても無駄」といったことを述べているほどです。

ですからご主人の考え方を、すぐに変えるのは難しいでしょう。
大人が変わるのは、自ら変わろうとしたときだけです。ご主人がモンテッソーリ教育を学ぶことで変わったというご報告も、また多くあります。

競争意識をあおることは、マイナスの感情や、反社会的な感情の原因になる

競争によって優劣をつけることで、悔しいから頑張る、みじめな想いをしたくないから努力する、という気持ちを植え付け、子どもを伸ばそうと考えている人も、確かにいるようです。

しかし、モンテッソーリは、それとは逆でした。「競争意識をあおることは、ねたみ、憎しみ、屈辱、といったマイナスの感情や、反社会的な感情の原因になり、できる子はうぬぼれて、他の子たちを支配するようになる」と考えていました。
 
幼児期から競争を奨励していると、勝った子が偉い、負けた子はダメな子、良い思いをするためには、相手を蹴落とさなければならない、という気持ちを植え付けてしまうことがあります。それが子どもに根付いてしまうと、思いやりや尊敬の気持ちが育ちにくくなるものです。

モンテッソーリは、優劣をつけることについて、著書の中で以下のように述べています。

「古い学校では、『あの子は1等賞を取った。あの子は0点だった。』と繰り返すのがつねです。それでは友情は育ちません。ところが、この年齢は、環境に応じて社会的な特性または反社会的な特性を築く時期なのです。この時期が出発点なのです。」
子どもの精神―吸収する精神』 (著:マリア・モンテッソーリ 訳:中村勇 日本モンテッソーリ教育綜合研究所)より

このように、幼児期が人格形成に大きな影響を与える時期であることを指摘しており、何が何でも1番でなければ、という風潮に対して、100年以上も前から警鐘を鳴らしています。

切磋琢磨というのは、個がしっかり確立しているからこそ、意味があるものです。固い石ならば、ぶつけ合っても壊れずに磨き合い、丸くしていくことができますが、柔らかい泥団子の状態でぶつけ合ったら、壊れてしまうことでしょう。

幼児期は一人一人が、自分自身を築き上げようとしている大切な時期であり、この世界は愛と信頼に満ち溢れた世界であることを、まず体感する時期です。
切磋琢磨が大事だとしても、幼児期にそれを求めるのは性急すぎます。

年長児たちが模範となり、年少児に接することで、クラス全体が愛情で結ばれた集団となる

モンテッソーリの幼稚園は縦割りクラスとなっています。年長児は年少児の保護者のように優しく接し、年少児は年長児を尊敬します。

私の娘が通っていたモンテッソーリ園では、クッキーを焼いたり、それを配ってくれたりする大きなお姉さんたちが、憧れの的でした。

年少の子が、自分もいつかあのようにやってみたいと思い、実際にできるようになったときに、今度はそれを上手に小さい子に教えます。
年齢の近い子どもの方が、大人よりもずっと楽に教えることができるのです。

これが、モンテッソーリが縦割りクラスを奨励する理由です。
モンテッソーリ園は一斉保育ではないのに、少ない教師でも対応が可能なのは、年長児たちが自然に提示をしてくれるからなのです。小さいけれど、模範となるべき年長児があちらにもこちらにもいます。

するとクラス全体が愛情で結ばれた集団となり、それぞれの性格も尊重しあえるようになります。これが、本当の意味での集団であり、平和に満ち溢れた社会です。
これに対し、同じ年齢が集団を形成すると、競争原理が生まれやすくなり、優劣を争ったりしやすくなります。

縦割りの良さは家庭内でも 
ジャガイモつぶしを妹に提示する 
4歳1ヵ月
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