「トモエ学園とママの子育て」にはモンテッソーリ教育との共通点〔専門家が解説〕

映画『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』がもっとおもしろくなる!②

ライター:高木 香織

田中先生:トモエ学園の教室は、古くなった電車の中。机はあるのですが、誰の席と決まっていなくて、その日の気分や都合で、好きな席に座っていいのです。

日本には文部科学省認可のモンテッソーリ小学校はまだありませんので、海外のモンテッソーリ園やモンテッソーリ小学校を参考にしてお話ししますね。モンテッソーリ教育でも、トモエ学園と同じように自由席です。机の形も丸や四角などバラバラ。じゅうたんを敷いた床の上で活動していることもあるんですよ。

──仲の良いお友だちと机を並べることもできますね!

田中先生:時間割りもなくて、自分の好きな活動をしていいんです。でも、それでちゃんと自分で配分を考えて、必要な量の学びができるんです。自分で考えることが大切なのですね。

──どんな子どもたちが通っているのでしょう。

田中先生:インクルーシブ教育は、最近でこそ耳にするようになりましたが、トモエ学園では病気の子や障がいのある子どももごくあたりまえに同じ教室で過ごしていましたね。モンテッソーリ教育は、もともと障がい児教育からスタートしたこともあり、「すべての子どもは等しく子どもであり、分け隔てなく教育する」という、今のインクルーシブ教育にあたる考え方が最初からあったのです。

子どもの自己教育力を信じて、援助する

映画『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』より。  © Geko Films – Tempesta‐2023
すべての子どもたちは「何かをしたい」という欲求を持っている。マリアは子どもたちの特性に合わせた教材を用意し、子どもたちが自主的に学べるような「教室」を作っていた。映画『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』より。  © Geko Films – Tempesta‐2023
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──トモエ学園の校長先生の教育方針が、モンテッソーリ教育に近いのでしょうか。

田中先生:『窓ぎわのトットちゃん』のあとがきに、校長先生の教育方針について書かれています。「どんな子も、生まれたときにはいい性質を持っている。それが大きくなる間に、まわりの環境や大人たちの影響でスポイルされてしまう。だから、早く『いい性質』を見つけてそれを伸ばし、個性のある人間にしていこう」というのです。

大人は子どもに良かれと思っていろいろなことをしてしまいますが、大人が愛情だと信じて疑わないことが、実は子どもに悪影響を及ぼしていることがたくさんあるのです。

モンテッソーリも、「子どもには自己教育力があるのだから、大人はそれを信じて、援助する立場にあるということを忘れないように」と言っているのですよ。

──無理に何かをさせなくてよいのですね。

田中先生:そうですね。そして、トモエ学園の校長先生もモンテッソーリも、自然をとても愛していました。トモエ学園の校長先生は、子どもたちの性格も「できるだけ自然に」と考えていたようですし、モンテッソーリも「子どもを発育させるのは自然だけ」と記しています。

やめさせるより、やりたいことを妨げないように援助する

映画『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』より。  © Geko Films – Tempesta‐2023
学習の時間、突然席を立ってマリアにキスをしにきた女の子。マリアはその行動を優しく受け止める。映画『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』より。  © Geko Films – Tempesta‐2023

田中先生:トットちゃんのママの考え方にも、モンテッソーリ教育に通じるものがあるのですよ。

──例えばどんなところでしょう?

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