多民族国家セルビアで外国語のならいごとが盛んな理由

「世界の子どものならいごと」#3 セルビア・ベオグラード編

コーディネーター:希代 真理子

セルビアの首都・ベオグラードの目抜き通り、ミハイロ公園通りにて。
写真提供:富永正明
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世界各地で暮らす日本人親子のみなさんに、現地のならいごとについて聞いてみました。
第3回はセルビアの首都・ベオグラードで暮らす富永正明さんご一家です。
ベオグラードで26年暮らす正明さんと、セルビア人のママ・マリヤさんの間に誕生した、ステファンくんのならいごととは?

●Papa & Kids Data●

パパ:富永正明さん
【お仕事】
メディアコーディネーター/通訳/翻訳家

長男:ステファンくん(7歳)
【ならいごと歴】
キッズ向けスポーツ教室→日本語教室→水泳→英語(継続中)、サッカー(継続中)

富永一家のみなさん。左からパパ・正明さん、ママ・マリヤさん、息子・ステファンくん。    
写真提供:富永正明

セルビアはヨーロッパ南東部のバルカン半島中央に位置しています。セルビアの面積は日本の北海道ほど。
首都・ベオグラードには、人口約160万人の人々が暮らしています。

セルビア共和国になったのは2006年のこと。それまでは、旧ユーゴスラビアを構成していた共和国のひとつでした。
複雑な民族構成や大国間の対立などで、戦争が度々繰り返されてきた地域であり、多民族・多言語という土壌があります。

パパ・正明さんが1995年にベオグラードに来たときには、まだユーゴスラビアは内戦状態でした。

カレメグダン要塞公園で遊ぶステファンくん。    
写真提供:富永正明

豊かになったことで、ならいごとも増えた

「1999年には、コソボの紛争により、NATOによる空爆も受けており、その頃のセルビアは欧州内でも最貧国でした。

当時の月の平均収入は、日本円にして3,600円ほど。
しかし、2005年あたりから、生活に余裕が出てくるようになり、今では月収平均7万円以上に。そのため、子どものならいごとの種類も増えてきたように思います」(正明さん)

コレクティブなプレースタイルのサッカー

そんなセルビアでの生活で、正明さんがずっと手こずっていることがあると言います。

「セルビアの人々は規律を守るのが苦手で、待ち合わせの時間になっても来ないんですよ。
撮影コーディネーターとして現場に出る仕事でも、時間通りに来ないセルビア人同僚が多くいます」

そのため、ならいごとで人気のサッカーでも、ひと昔前は、規律のなさが弱点になっていたと言います。
しかし近年では、“組織的”“集団的”という意味を持つ、“コレクティブ”なプレースタイルが主流とされるようになりました。

ステファンくんが通うサッカー教室の様子。    
写真提供:富永正明

「息子が通うサッカーチームの練習でも、それは日々実感しますね。
コーチたちは、練習に入る前にはきちんと子どもたちに挨拶をすることから始め、ウォーミングアップにもしっかり時間をかけます。

しかし、ひとたびボールを持たせたら、あとは紅白試合形式になり指示はほとんど出しません。
とにかく自由にプレーさせ、自分でどう考えて動くのかをじっと見守っています。ルールに縛られてばかりでは、1対1のような駆け引きに弱くなると考えるからです。

チームの一員として挨拶などの規律は重んじられても、サッカーは自由に創造性に任せる、というスタイルが子どものころから大切にされています。

ちなみにセルビアには日本でも有名なサッカー選手がいます。
それは通称・ピクシーの名前で親しまれていた、ドラガン・ストイコビッチ選手です。パパ・ママ世代には覚えている人も多いのではないでしょうか」(正明さん)

バスケットボールや水泳、テニスのならいごとも人気

「セルビアは内陸部で海がないこともあり、泳げない子どもが約6割います。
そのため、親が子どもを水泳教室に通わせたがる傾向があるように思います」(正明さん)

水泳教室に通うステファンくん。    
写真提供:富永正明

「バスケットボールやテニスも人気ですね。
セルビアは、バスケットボール世界選手権で、5回優勝している強豪国です。ベオグラードの市街地を歩けば、大抵の小学校や公園でバスケットコートを目にします。
また、この間の東京大会からオリンピック種目になった3対3の個人ランキングでは、上位10人のうち6人がセルビア人選手です。

テニスではATP(男子プロテニス協会)ランキング1位のノバク・ジョコビッチ選手がいます。ジョコビッチ選手は、初タイトルを獲得した全豪オープンから今に至るまで、ずっと“セルビアの英雄”です。

このように、セルビアはスポーツ強豪国として知られ、プロ選手を目指す子どもたちの育成に定評があるんです。
他のスポーツでも、基本的に規律は重んじられますが、サッカーと同じように、自由にプレーさせるという傾向は同じです。

ちなみにステファンは、近くの小学校の校庭にあるバスケットコートで、いつも子どもたちが遊んでいるのを見て、バスケットボールに興味を持ちました。
テニスについてはジョコビッチ選手と錦織選手が対戦すると、錦織選手の方を応援していますがね(笑)」(正明さん)

キッズ向けスポーツ教室にて、バスケットボールを習うステファンくん。    
写真提供:富永正明
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