新生児がペットを飼う我が家にやってくる! 赤ちゃんもペットも安全に暮らすコツをを獣医師が解説

獣医師・西井丈博先生に聞く「子どもとペットのいい関係」#3

星野 早百合

『阿佐ヶ谷動物病院』は3フロアの構成で、手術室も完備。診察では飼い主とコミュニケーションをはかり、しっかり話を聞くことを心掛けていると言います。 写真:村田克己

ペットブームの今、もともとペットと暮らしている家庭に赤ちゃんが生まれるケースが多々あります。安全面・衛生面は大丈夫? ペットはストレスを感じない?

そんな疑問や不安を解消すべく、第3回は、ペットのいる家庭に赤ちゃんが生まれるときの準備や飼育の注意点について『阿佐ヶ谷動物病院』院長の西井丈博先生に伺います。

ペットがひとりになれるスペースは必須

――もともとペットを飼っていた場合、赤ちゃんもペットも安全で幸せに暮らすにはどうすればいいのでしょうか。

西井先生「犬や猫を飼っている患者さんから『今度、子どもが生まれるんです』という相談をよく受けるのですが、基本的には『あまり心配しなくていいですよ』と伝えています。

赤ちゃんが生まれた直後はある程度ペットの抜け毛やフケ、よだれなどに注意した方がいいものの、ペットが健康体なら、過敏になることはありません。

ノミやダニ、寄生虫がいる場合はうつってしまう恐れがあるので、赤ちゃんを迎える前にシャンプー剤や駆虫剤でのケアが必要です。

あとは、ペットと触れた後、トイレの掃除をした後はしっかり手を洗うなど、基本的な衛生管理ができていれば問題ないでしょう」

――猫を飼っている家では、「トキソプラズマ症が心配」と聞きますが?

西井先生「トキソプラズマ症は感染症の一種で、猫との接触、猫の排泄物が感染経路のひとつです。妊婦さんが感染すると、胎盤を通じて胎児にも感染リスクがあると言われています。

でも、問題になるのは、妊婦さんが初めて感染した場合のみ。トキソプラズマ症は、健康なら感染しても無症状で、猫を飼っていれば、感染歴のある人がほとんどです。感染歴があれば抗体ができているので、不安になることはありません。

愛猫にも感染歴があれば、基本的には安全です。もし心配なら、動物病院で愛猫の抗体検査を受けることをおすすめします。それでも心配なら、妊婦さんも抗体検査を受けるといいでしょう。

赤ちゃんが生まれる前は、ただでさえ不安なことばかり。ひとつでも不安を払拭できるといいですよね」

――住環境で気を付ける点はありますか?

西井先生「犬も猫も、ペットのスペースを確保してあげることです。それは、赤ちゃんとの距離を保って安全な空間を作るためでもありますし、ペットがひとりになれる場所、赤ちゃんから逃げられる場所を作るためでもあります。

犬ならサークルで囲うほか、ケージを置いてもいいでしょう。最近はケージに入るのが苦手な犬も多く、家の中でリード管理していたというご家庭もあります。

少しかわいそうな気もしますが、ずっと続くわけではありません。犬が赤ちゃんのいる環境に慣れたら、もとに戻せばいいのですから」

――赤ちゃんとペットで住空間をわけたほうがいいのでしょうか?

西井先生「あまり神経質になることはないですが、食事やおむつ替えなど、赤ちゃんとペットが距離を取らなければいけないときもありますよね。

以前、ハイハイをするようになった赤ちゃんが、目を離したすきに猫のトイレに入ってうんちを食べてしまった……というショッキングな出来事を聞いたことがあります。

ペットのトイレや飲み水用のボウルも、赤ちゃんの手が届かない場所に置くのが安心ではないでしょうか」

妊婦さんには念のため、猫のトイレや排泄物に触れないように伝えますが、ほとんど心配はありません。トキソプラズマ症は、正しい理解が必要です」(西井先生)。 写真:村田克己
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