10代のデートDV被害「心を守る」知識「4つのF」精神保健師・鴻巣麻里香さんインタビュー

親子で考える「バウンダリー」③デートDVと二次被害

永見 薫

「彼氏の誘いを断れなかった」Cさんのケース

Cさんは彼氏のD君と付き合いはじめて3ヶ月。しかし今、とても気まずい状況です……。

1ヶ月前のこと。D君に「家で一緒に夏休みの宿題をしよう」と誘われました。

D君が「親は留守だから」と少し恥ずかしそうに言ったとき、Cさんは「あ、そういうことになるのかな」と、性的な関係の進展を予感しました。

ところが当日Cさんは、思ってもみない気持ちを抱くことになってしまいます。

D君の部屋で宿題をしていると、徐々にそういう雰囲気になって、彼が覆いかぶさってきました。しかしCさんは急に、D君が全然知らない男の人のように思えて恐怖を感じました。

「D君。ちょっと今は無理。怖い」と覆い被さるD君の肩をはがしながら、Cさんはしぼり出すように断ります。

しかしD君は、「大丈夫だよ。だって好きな人同士のことでしょう。Cさんは俺のことが好きなんだよね?」と返しました。

結局、Cさんが「怖い、やめたい」と訴えても、D君は「恋人同士だから大丈夫」と押し切ってしまい、気づいたときには事に及んでいました。その後、Cさんは心のもやもやが消えず、D君をなんとなく避け続けていましたが、夏休み後に別れを切り出しました。

「D君のことが好きだよ。でも私はあの時、怖かった。自分の気持ちを否定されたように感じたの」

と、悩みに悩んで伝えたCさん。しかしD君は、

「俺のこと好きなんだよね? 俺もCさんのこと好きだよ。好き同士ならセックスしたいって思うのは当たり前だし、自分が否定されたなんて感じるのはおかしいよ」

と言いました。Cさんはどう答えるべきかわからず、ますます悩むことになりました。

「4つのF」トラウマ直後の反応と二次被害

CさんとD君のケースは、付き合い始めの関係で起きがちなシチュエーション。しかし、実はこれも立派な「デートDV」なのです。

Cさんは、なぜキッパリ断れなかったのでしょうか? D君の行動が、なぜデートDVに当たるのでしょうか?

次のページへ
32 件