小学生で進みやすい子どもの「近視」 専門医が教える正しい「進行予防策」

【デジタル時代の子どもの目のトラブルとケア #3】気づいたら近視になっていた!? 視力は一度落ちたら戻らない!

スマホ内斜視かも!? 診察には子どもの写真を持参

子どもの目に異変が見られた場合、できるなら小児眼科を受診するべきです。三木先生は「内科と小児科ぐらい、診察する観点が違います」と話します。

「通常の眼科はシニアの患者が多く、大人を中心に診ている先生は当然、子どもを見慣れていません。

大人と子どもではよくある病気が違っていて、メカニズムや診るポイントも違います。したがって、子どもの目に異変があった場合は、小児眼科を受診してください」(三木先生)

小児眼科を検索できるサイト

日本小児眼科学会
日本弱視斜視学会

「眼科に行く場合は、子どもの目の違和感に気づいたのはいつごろからか、どんな痛がり方や今の状態になるまでどんなプロセスがあったかなど、メモに書いていくといいですね。

また、斜視を疑った場合は、正常だったときの子どもの写真を持参するといいでしょう。アルバムを持っていくのも手です。

子どもの成長過程を写真で見ていくと、医師にはどのあたりから斜視が始まったのかがわかり、治療の参考にもなります」(三木先生)

メガネ、コンタクト、目薬の疑問に小児眼科医が回答!

メガネをかける基準は「生活がしやすいかどうか」。 写真:アフロ

目は一生もの。だからこそ、ケア方法にも気を配りたいものです。ここからは目のケアにまつわる素朴な疑問に三木先生が答えます。

Q1 メガネをかけると、子どもの目はさらに悪くなるのでは?
A1 度が合わないメガネは、目は悪くします。適正なメガネを与えましょう

私が医師になりたてのころは、メガネであまり強く矯正しないほうがいいという意見もあり、今でもメガネをかけることは悪いことだと考える親御さんもいます。しかし現在は、年齢に関係なく、生活がしやすいかどうかで判断するべきです。

メガネをかけない不便な生活が目をさらに悪くすることもありますし、度が弱い・強いというような不適切なメガネが障害を起こすこともあります。適正なメガネを子どもに用意することが肝心です。

Q2 コンタクトレンズはいつから与えていい?
A2 小学生はNG。中学生は微妙。高校生はOK

コンタクトレンズは自分で取り外しを行うので、基本的な知識とケア・管理ができないと使用はおすすめできません。誤った扱い方をすると角膜が傷ついたり、感染症を起こしたりするケースもあります。

よって小学生は使用NG。中学生は個人差があり、子どもがしっかりと自分で管理できる場合にはOKです。中学生では手入れの必要のないワンデーレンズがおすすめです。高校生は基本的に大丈夫だと考えます。

Q3 子どもが目薬をいやがります。どうすればいい?
A3 ソファやベッドに寝かせて点眼してみてください

起きている状態だと目薬を差しにくいので、寝かせてリラックスした状態で点眼するといいでしょう。また差すときは、目薬の先が目に触れないことも大切です。目に先を当てると目やになどを吸って、点眼液にバイキンが入ってしまいます。

目薬を差したあとはパチパチせずに、目を静かに閉じておきましょう。よく瞬きする人がいますが、目をパチパチさせると涙液が全部、鼻に抜けてしまいます。点眼液をじっくりと目に浸透させることが大切です。



デジタル機器に囲まれて目を酷使する時代だからこそ、現代はそれらの使い方には節度を持ち、目の健康を守る生活を意識することが重要です。

特に子どもたちの将来においては、スマホやタブレット、パソコンだけでなく、これから新しい技術も開発されて、どんどんデジタル化が進んでいくことが予想されます。

目は一生ものであり、替えがききません。また、視覚からの情報は五感全体の90%近くを占めるといわれており、子どもが人生を歩んでいく上でさまざまな情報を与えてくれます。

子どもの目を守る子育てについて、誰もが考えるタイミングがきているといえるでしょう。

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◆三木 淳司(みき あつし)
日本眼科学会眼科専門医・指導医。医学博士。川崎医科大学附属病院眼科部長(教授)。
専門分野は斜視・弱視、神経眼科、小児眼科。
1992年に新潟大学医学部医学科卒業後、1998年同大学院医学研究科博士課程修了。1998年~2001年、米国ペンシルベニア大学・フィラデルフィア小児病院での博士研究員を経て、長岡赤十字病院眼科や新潟大学医歯学総合病院眼科などで医療に従事。2010年に川崎医科大学眼科学教授及び川崎医科大学附属病院にて現職に就任。
監修本に小社刊『健康ライブラリー イラスト版 子どもの目を守る本』などがある。

取材・文/梶原知恵

『デジタル時代の子どもの目のトラブルとケア』の連載は、全3回。
第1回〈子どもの目の異変 スマホ、パソコン、ゲーム… 「要注意な症状」を専門医が解説〉を読む。
第2回〈子どもの「スマホ内斜視」 小児眼科医が解説する「両目が内側に寄りすぎる症状」とは〉を読む。
※公開日までリンク無効

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みき あつし

三木 淳司

MIKI ATSUSHI
日本眼科学会眼科専門医・指導医

日本眼科学会眼科専門医・指導医。医学博士。川崎医科大学附属病院眼科部長(教授)。専門分野は斜視・弱視、神経眼科、小児眼科。 1992年に新潟大学医学部医学科卒業後、1998年同大学院医学研究科博士課程修了。1998年~2001年、米国ペンシルベニア大学・フィラデルフィア小児病院での博士研究員を経て、長岡赤十字病院眼科や新潟大学医歯学総合病院眼科などで医療に従事。2010年に川崎医科大学眼科学教授及び川崎医科大学附属病院にて現職に就任。 【主な共著や監修書】 『健康ライブラリー イラスト版 子どもの目を守る本』(小社刊)など

日本眼科学会眼科専門医・指導医。医学博士。川崎医科大学附属病院眼科部長(教授)。専門分野は斜視・弱視、神経眼科、小児眼科。 1992年に新潟大学医学部医学科卒業後、1998年同大学院医学研究科博士課程修了。1998年~2001年、米国ペンシルベニア大学・フィラデルフィア小児病院での博士研究員を経て、長岡赤十字病院眼科や新潟大学医歯学総合病院眼科などで医療に従事。2010年に川崎医科大学眼科学教授及び川崎医科大学附属病院にて現職に就任。 【主な共著や監修書】 『健康ライブラリー イラスト版 子どもの目を守る本』(小社刊)など

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。