問題は「何を見ているか」ではない!
スマートフォンやタブレットは、今や子どもたちの生活に欠かせないアイテムとなっています。こういったデバイスを子どもたちが使うことについて、「なんとなく目に悪そう」という印象がありますよね。
しかし、目が悪くなる=近視になる原因は、「近見(きんけん)作業」といって、近くで物を見る状態が続くことです。スマホやタブレットは顔の近くで操作しますから、幼児期にこの近見作業を長時間続ければ、近視の子どもを生み出してしまいます。
そして、これは読書であっても同じことです。実は、スマホやタブレットの閲覧が子どもたちの目を確実に悪くしている、という決定的なエビデンスはありません。他の近見作業と比べて、スマホやタブレットのほうが悪いかといったら、そうだとも言いきれないのです。
私個人の見解としては、紙の読書とスマホ操作、どちらも同じ程度に目に良くない作業だと考えています。
ただ、ITデバイスは、子どもたちを飽きることなく熱中させる面があります。中毒性が高く、長時間使用になりやすいのがネックです。放っておいたら何時間もYouTubeを見ている、という状況もあるのではないでしょうか。一方で読書は、本好きな子ども以外は、集中して何時間も読み続けられる子はあまりいないと思います。
問題は「何を見ているか」ではなく、どれだけの時間、近見作業をしているのか、なのです。
アジアの子どもは目が悪い理由
少し余談になりますが、子どもの近視が世界的な課題とされているなかで、特にアジア圏の子どもたちには近視が多いとされています。中国、台湾、韓国、シンガポールの子どもたちの近視は、日本と同じような数値です。
特に、「学童期の9割が近視」、「しかも、度の強い近視」のようなひどい状況だとされているのが、中国や韓国の都市部です。これらの地域で近視が急激に増加している背景には、加熱する受験勉強があるとされています。幼いころから家庭や塾で過剰に勉強をさせていることが、子どもの視力に影響しているのです。
受験勉強のような屋内での近見作業は、近視の原因になります。そこで、中国政府は2018年から、近視予防・進行抑制の法案を実施。学業の負担増加や、スマホ・パソコンなどの電子機器の普及が、子どもの近視の大きな要因になっていると指摘し、社会全体で子どもたちの目を守ることを目的にした具体的な取り組みと数字の目標を定めました。
2021年からは、若者のゲーム中毒を阻止するルールも制定。18歳未満を対象に、オンラインゲーム利用を1週間で計3時間に制限するという新たなルールを導入しました。このように中国は、国を挙げて子どもの視力問題に着手しているのです。