流行中「百日ぜき」 小児科医に聞いた親が知っておきたいこと 乳児は強い咳でミルクが飲めなくなる事例も

「百日ぜき」#1 基礎知識と家庭でできる対策

小児科専門医・アレルギー専門医:岡本 光宏

新生児が感染すると咳でミルクが飲めなくなる

──どういった危険性がありますか?

岡本先生:特に、新生児や乳児は重症化のリスクが高くなります。

実際、私が診たケースでは、生後1ヵ月のお子さんが、咳があまりに激しくてミルクがまったく飲めない状態でした。やっと飲めたと思っても、すぐに咳き込んで全部吐いてしまうんです。

体重4kgほどの新生児では、1日に少なくても約200mlの水分が必要ですが、それがとれないと脱水を起こし、命にかかわる危険があります。そのため、このお子さんは点滴で水分と栄養を補いながら約1ヵ月間入院することになりました。

百日ぜきは全年齢でかかる病気ですが、特に新生児や乳児では重症化しやすい点に注意が必要です。

写真:maroke/イメージマート

「百日ぜき」はすぐ診断がつかない!?

──現在、百日ぜきが流行しているということもあり、咳が出ると「もしかして……」と不安になる方も多いと思います。病院に行けば、すぐに診断がつくのでしょうか?

岡本先生:実は百日ぜきは、すぐに診断がつく病気ではないんです。というのも、初期の症状は風邪とよく似ていて見分けがつきにくいんですね。

たとえば、血液検査で抗体価を測る方法もありますが、これは発症から少なくとも1週間以上経っていないと、正しい結果が出ません。

早いタイミングで検査しても「空振り(陰性)」になることもありますし、結果が出るまでに数日~1週間ほどかかります。

もちろん、PCRやLAMP法(特定の遺伝子増幅法)など、より早く診断できる検査もあります。ただ、こうした検査は大学病院や、入院設備のあるような大きな小児病院で行われているもので、一般的な診療所では対応が難しいことが多いのです。

加えて、百日ぜきの場合は、たとえ確定診断がついたとしても、治療方針や回復スピードが劇的に変わるわけではありません。

抗菌薬は菌の広がりを防ぐ目的で、咳そのものがすぐに止まるわけではない。なので、実際の診療では「経過を見ながら判断していく」ことのほうが多いと思います。

受診する目安は「咳で何度も夜中に目が覚めてしまう」とき

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