子どもの入院付き添いの過酷な背景には小児科病棟の想像を超える人手不足があった
キープ・ママ・スマイリング理事長・光原ゆき氏に聞く「子どもの入院付き添いの実態」 #2 ~人手不足と医療制度の問題点~
2024.12.17
認定NPO法人キープ・ママ・スマイリング理事長:光原 ゆき
子どもが入院すると、多くの場合、親も付き添って入院することが求められます。しかし、付き添いが必要であるにもかかわらず、親には食事や睡眠、休息など付き添い環境への配慮が十分に与えられないのが現状です。
こうした問題の背景にあるのは「小児医療の圧倒的な人手不足と感じた」と認定NPO法人キープ・ママ・スマイリングの代表・光原ゆきさんは指摘します。
当事者から見える小児医療制度の課題について、光原さんに語っていただきました。
(全3回の2回目。1回目を読む。3回目を読む。公開時よりリンク有効)
光原ゆき
認定NPO法人キープ・ママ・スマイリング理事長。1996年一橋大学卒業後、株式会社リクルートへ入社。先天性疾患を持つ娘を出産後、育児休暇中に亡くした経験から、2014年11月に現団体の設立、理事長に就任。病児と家族の応援の輪を広げるため、企業や学校、イベントなどで講演も多数行っている。
保育器の中で一人でミルクを飲む赤ちゃんたち
病院が保護者に付き添い入院を求める背景にあるのは、小児病棟における圧倒的な人手不足です。子どもの患者は大人の患者よりも手間がかかります。ですから、ただでさえ人手不足の医療現場でもさらに人手が足りなくなり、やむを得ず付き添いを求めるのです。
このことを実感した、ある出来事があります。私の娘が、親の付き添いを不要とする病院に入院していたときのことです。朝一番に子どもの面会にかけつけたら、娘はまだ首も据わらないくらいの月齢なのに、新生児用の透明なベッドに寝かされたまま、顔の横にタオルを積み、その上に哺乳瓶があったのです。
これには驚きました。なぜなら非常に危険なミルクの飲ませ方だからです。保育園などで同じことをすれば、大問題になることでしょう。慌てて師長さんに報告しようとしたのですが、師長さんはその状況の中で平然と見回りをしているのです。
このとき「医療現場はこれが常態化しているのだ」と知りました。病棟で看護師さんたちはいつもとても忙しそうで声をかけるのも憚られるほどでした。ミルクやオムツなどの赤ちゃんが必要とするケアを頻繁に対応することが難しいことは、院内に長く付き添っているとよくわかりました。