“タイムライン”は、災害が起きたことを想定して、誰が、いつ、どのような行動を行うかを時系列でまとめた防災計画のことです。つまり、“マイ・タイムライン”は災害が起きたことを想定して、“わたし”が、いつ、どのような行動を行うかを時系列で整理したもの。
「台風が接近してきます!」と言われても、それまでに何も考えていなければ、何をしていいのかわからず困ってしまうのは当然のこと。ましてや、昨今の急な天候の変化による洪水、氾濫、水害の危機が迫れば、パニックに陥るかもしれません。
そうなる前に、何もまだ起きていないうちに、マイ・タイムラインを作っておきます。食料の備蓄や防災用品を揃えるだけが災害の備えではありません。いざという時の行動をどうするか、家族を守るためにも、今からできることをやっておきましょう。
マイ・タイムラインリーダーとして、小・中学校やセミナーでマイ・タイムラインの作り方を教えている防災士の堀中里香さんに、マイ・タイムラインについて詳しくお聞きしました。
水害に対応した防災計画がマイ・タイムライン
災害といっても、事故や事件などの人的災害と、地震や津波、暴風雨、豪雪、噴火などの自然災害がありますが、ここでいう防災計画は、台風や大雨によるある程度予想できる洪水、氾濫、水害に対するものです。
「地震は予測が難しく、なかなか予知できにくいものですが、台風や大雨(最近では線状降水帯なども)は気象予測が進んで、災害の予想が立てやすくなりました。もちろん、自然災害ですから緊急を要する場合もありますし、想定外の災害になることもありますが、少なくとも時間の経過で“自分がどう動けばいいか”をシミュレートしておけば、いざという時に的確な行動ができます」と堀中さん。
それでは、マイ・タイムラインを作るには具体的にどのようにすればいいのでしょうか? 作り方のステップを順番に教えてもらいました。
マイ・タイムラインを作る準備をしよう
「マイ・タイムラインを作るにあたって、いくつか準備するものがあります。1つ目は“地域のハザードマップ”です。2つ目は国土交通省が発行している『逃げキッド』というマイ・タイムラインを作るためのツールです。このツールに従って作っていくと作りやすいので、ぜひ入手してください」
地域のハザードマップ
住んでいる地域のハザードマップは、市役所や公民館、図書館などで配布されている自治体もあれば、水害が起きやすい地域では、直接家庭に配布する場合もあります。
ハザードマップはインターネットでも見ることができますが、スマートフォンの充電切れや停電などの非常事態では、紙のマップがおすすめです。ただし、あらかじめスマートフォンにダウンロードしておけば、停電でも見ることができるので、忘れずにダウンロードしておきましょう。
「インターネットで“ハザードマップ”と検索すると、『ハザードマップポータルサイト』(国土交通省)が最初に出てきます(https://disaportal.gsi.go.jp/)。このサイトは、全国のハザードマップ(わがまちハザードマップ)を見ることができますので、自分の市区町村はもちろん、実家や親戚などの状況を調べられます。実家の親が紙のハザードマップを入手できないといった場合でも、親に代わって調べることができるわけです」
コロナ禍ではなかなか旅行にも行けませんが、旅先の災害の危険度を調べるなどにも便利です。
また、「重ねるハザード」という機能もあり、例えば、洪水+土砂災害の両方が起きる危険性があるかどうか、などを調べることも可能です。
逃げキッド(マイ・タイムライン 検討ツール)
「2015年の9月に発生した関東・東北豪雨により、鬼怒川の堤防が決壊し、特に茨城県常総市では全半壊した家屋が5000棟以上という甚大な被害を受けました。他の地域でも多くの河川で氾濫、堤防決壊などが発生し、大変な被害になりました。これを機に、国土交通省 関東地方整備局 下館河川事務所が、防災計画の意識を高めるためのマイ・タイムラインを検討するためのツール『逃げキッド』を提案しています」
「逃げキッド」のネーミングの由来は、マイ・タイムライン検討の道具一式(キット)に、 子ども(キッド)にも検討してもらいたいという気持ちを込めて、 「逃げきるぞ!」を鬼怒川・小貝川地域の方言で「逃げきっど!」と言うことからだそう。
“逃げキッド”で検索すると、国土交通省 関東地方整備局のサイトが出ますので、ダウンロードすることができます。
https://www.ktr.mlit.go.jp/shimodate/shimodate00626.html
逃げキッドは、以下のものがダウンロードできます。
・01_マイ・タイムライン作成のためのチェックシート
・02_「台風が発生」してから「川の水が氾濫」するまでを知ろう!!(資料1)
・03_「台風が発生」してから「川の水が氾濫」するまでの備えを考えよう!!(資料2)
・04_「マイ・タイムライン」をつくってみよう!!
・05_マイ・タイムライン 主な備えシール
・06_みんなでつくろう!マイ・タイムライン~マイ・タイムラインをつくるためのヒント集~
・07_ご自宅に戻ったらみなおしてみましょう
子どもが防災を当たり前のこととして
「逃げキッドは小中学生向けなので、子どもでも簡単にマイ・タイムラインを作ることができます。逃げキッドを使っているのは、子どもが“ハザードマップを手に入れる”“避難所を知っておく”“家が水没する可能性がある”などといったことを、“当たり前にやること”としてとらえてくれるのではないかということからです」
堀中さんは逃げキッドを使っていますが、マイ・タイムラインのツールを作っている自治体もあるそうなので、調べてみるのもいいでしょう。
自治体で見つからない場合は、逃げキッドをおすすめしますので、ぜひダウンロードしてみてください。
※続きは、『“マイ・タイムライン”って知っていますか?(「調べておこう」編)』をご覧ください)
堀中里香(ほりなか りか)
プロフィール
防災備蓄収納マスタープランナー、防災士、整理収納コンサルタント。「あなたのいえのかたづけこびと、そだてませんか」をモットーに、日常は整理収納、非常時は防災備蓄で、安全で安心な暮らしをサポートする。防災を考慮した整理収納サポートや、オンラインの整理収納×防災備蓄セミナーが好評。整理を習慣づける週一オンライン部活動『みんなでおかたづけクラブ』も行っている。NHKひるまえほっと出演。ブログ『かたづけこびとのみつけかた』 https://ameblo.jp/karikanariho/
時政 美由紀
1965年兵庫県生まれ。立命館大学産業社会学部卒業後、出版社勤務を経て、2010年、編集・出版企画 ㈱マッチボックスを設立。出版社時代から現在に至るまで企画・編集した書籍・ムックは300冊以上。女性のライフスタイル全般、料理、子育てなどの実用書を中心に活動。2018~2021年、茨城新聞「論壇」にて連載。自著に『50歳から結婚してみませんか?』(朝日新聞出版)。
1965年兵庫県生まれ。立命館大学産業社会学部卒業後、出版社勤務を経て、2010年、編集・出版企画 ㈱マッチボックスを設立。出版社時代から現在に至るまで企画・編集した書籍・ムックは300冊以上。女性のライフスタイル全般、料理、子育てなどの実用書を中心に活動。2018~2021年、茨城新聞「論壇」にて連載。自著に『50歳から結婚してみませんか?』(朝日新聞出版)。