「ここは俺の家だ」義父の怒号が鳴り響く
みんなで楽しく過ごしていた義実家での宴。しかしお義父さんの酔いがまわるにつれ、場の空気が少しずつ変わっていきます。子どもたちの様子をにこやかに眺めていたお義父さんが、次第に、子どもたちに注意をし始めたのです。
「うるさい。静かにしろ」
しかし幼い子どもたちは、“じいじの注意”をものともせず、飛んだり跳ねたり、やんちゃに動き回ります。すると、お義父さんの声はさらに大きくなり、みるみる不機嫌になっていきました。そして何度目かの注意の後――。
「黙れ! ここは俺の家だ。勝手に荒らすな!」
義父の怒号が鳴り響き、部屋が一瞬で凍りつきました。
お義父さんは走り回っていた息子の腕を摑み、手を振り上げる素振りを見せました。夫がすぐにお義父さんの腕を押さえましたが、お義父さんの怒りは収まる様子がありません。
それどころか一緒に止めに入った義理の妹にビンタをしたのです。ただごとではない空気を感じ、子どもたちは一瞬で静まり返った後、一斉に泣き出しました。
お義母さんは泣き出した孫たちをなだめながらも、お義父さんに何も言えないまま、その場にへたり込んでしまいました。あれほどあたたかかった家族の空気が、音を立てて崩れ落ちた瞬間でした。
明かされた義実家の真実
帰宅後、私は夫から初めて義実家の真実を聞きました。
お義父さんは以前から酒癖が悪く、酒が入るたびに家族へ暴力を振るっていたというのです。殴る、蹴るといったことも珍しくなく、その矛先はお義母さんだけでなく、夫や義妹たちにまで向けられていたといいます。
そんな生活に長く耐えてきたお義母さんは、かつて離婚を切り出したことがあったそうです。
そのときお義母さんは、こう告げました。
「お酒を飲んで暴れる父親を見て育てば、子どもたちが結婚や家庭に希望を持てなくなります。あなたが本気で変わってくれるなら、私は離婚を踏みとどまります」
そこまで言われて、お義父さんはようやく事の重さを受け止めたのでしょう。それを機に断酒を決意し、実際、その後しばらくは穏やかな状態が続いていました。少なくとも夫が知る限りでは、以前のような暴力はなくなっていたそうです。
再び始まった飲酒
もともと大のお酒好きだったお義父さん。子どもたちが成長して家を離れ、結婚し、孫が生まれる…… 。そんな家族の幸せな変化が進むにつれて、かつての断酒への決意は、少しずつ、けれど確実に揺らいでいったようです。
実際、子どもたちの独立と前後するように再びお酒を口にするようになり、孫が増えるのに比例して、酒量も増えていきました。
お義母さんはそんなお義父さんを刺激しないよう、いつも顔色をうかがいながら暮らしていたといいます。酒が入れば機嫌が変わることを、誰よりもよく知っていたからです。
そしてあの父の日、決定的な出来事が起きました。その日を境に、夫を含むきょうだい全員がお義父さんを見限ることになります。あの日以来、誰一人として義実家には帰らなくなりました。孫たちにとっても、お義父さんは“怖いじいじ”になってしまったのです。
































