『母親になって後悔してる』ママは約半数 後悔する瞬間とは

「自分はいいママだ」と回答したのは2割 周囲との関係に悩むことも

コクリコラボ

『母親になって後悔してる』(オルナ・ドーナト/著 鹿田昌美/訳 新潮社)という本が話題になっています。

イスラエルの社会学者が「母になったことを後悔している」という母親23人にインタヴューした内容をまとめたもので、日本では2022年春に日本語版が発売されて以来、テレビや雑誌、SNSなどでたびたび論争を巻き起こしています。

「母親になって後悔してる」。コクリコラボでは、タブーとも言えるこの質問を、子育て経験のある約200名のママにぶつけ、現代の母親を取り巻く状況や当事者のママたちの気持ちを深掘り調査しました。

コクリコラボアンケート「AnyMaMa(エニママ)」登録者およびコクリコメルマガ会員を対象に2023年4月24日~2023年5月8日インターネット上で実施。有効回答数は203件。
※基本的にアンケート回答の原文をそのまま記載しています。ただし文字数の都合上、一部抜粋や主旨を損なわない範囲の要約・編集を行っている箇所があります。(明らかな誤字等は修正のうえ記載)

コクリコとAnyMaMa LIFESTYLE.Labが協働で、子育て課題解決×読書文化を目指すプロジェクト「コクリコラボ」。
ママの社会復帰を支援するサービス「AnyMaMa(エニママ)」で活躍するママたちのリアルな声を集めながら、新たなサービスや取り組み、ライフスタイルのアイデアを生み出していきます。

半数のママが、一度でも「母親になって後悔」したことがある

コクリコラボアンケート

まず子育て中のママに「母親になったことを一度でも後悔したことがありますか?」という質問をしたところ、198名中93名のママが「一度もない」と回答しました。

その一方、49名のママが「ある」、54名のママが「一度くらいならある」と回答しており、約半数のママが、一度でも母親になったことを後悔したことがあることがわかりました。

私はいいママじゃない

コクリコラボアンケート

さらに「自分はいいママだと思いますか?」という質問をしたところ、もっとも多かったのが「どちらともいえない」で36%でした。「そう思う」「ややそう思う」とポジティブな回答をしたのはたった19%。

「まったく思わない」「あまり思わない」とネガティブな回答をしたのが約45%という結果でした。約8割のママが「自分はいいママだ」と自信を持って答えられないという状況が見えました。

「母親になったことを後悔した」エピソードのアンケートでも、次のような回答が寄せられています。

・子どもの母親がわたしじゃなかったほうがもっとのびのびできたのかな、と思う。

・子どもに小さいころから受験ばかりさせてしまい、良い母親ではなかったので。

自分が母親であることが、子どもにとっていい影響を及ぼしていないと思っているようです。

・子どもは思うようにはならない。忙しさに追われイライラしてしまうことが多々あり向いてないなと思う。

・子どもに怒ってしまうとき。たいていは私の思う回答や行動ではないからイラッとしてしまい、子どもを一人の人として見れていないなと感じます。


子どもを思いどおりにしようとせず尊重できるママを「いいママ」の理想像として掲げ、現実の自分と比較して落ち込んでしまっているように見えます。

・自分に余裕がなくて子どもを感情的に怒ってしまったとき。本当は肝っ玉母さんになりたかったので、お母さんになったことを後悔というより、子どもに対して私がお母さんでごめんと思った。

このママのように、「母親になったことそのものを後悔」というよりも、「私がお母さんで申し訳ない」という意見も多く見られました。理想と現実のはざまで苦しむママの姿が浮かびあがってきました。

母になって後悔する瞬間 【前編】

今回の調査では「母親になったことを一度でも後悔したことがありますか?」という問いに対して、「ある」「一度くらいならある」と回答したママに、そう思った具体的なシーンやエピソードをさらに詳しく聞いてみました。ご紹介していきましょう。

◆子育てそのもののつらさ

すべての母親は最初から母親だったわけではありません。子どもを産んだ瞬間から「母」と呼ばれ、無力なわが子を生かすため、否が応でも体験したことのない「子育て」をしなければなりません。

そのため子育てそのもののつらさから、母親になったことを後悔する声が数多く集まりました。

・上の子が0~1歳のとき、とにかく夜中や朝方の目覚めが辛くて、何度も子どもに当たってしまった。

・長女が生まれてしばらくは、授乳、夜泣き、おむつ替えなどで本当に夜眠れなくて、何度も「理不尽すぎる……」と思ったし、誰かにお母さん役を代わってほしいと思いました。


特に赤ちゃん時代は、ママは寝る間もなく24時間対応することになります。ワンオペなら誰にも代わってもらえず、理不尽な状況に対して絶望的な気持ちになるのは当然です。

・子どもが全く言うことを聞かないときや、イヤイヤ期、疲れているのに寝てくれないとき。自分1人ならこんなに苦労しなかったのにと思うことはたびたびあった。

どんなに我が子がかわいくても、振り回され続けると、ふと「子どもが生まれる前なら……」と思い浮かべてしまいます。

・家事に仕事に育児。誰も全部ちゃんとしなさいなんて言っていないのに、自分がちゃんとしたいがために子どもの相手ができなかったり、泣いてる我が子の泣いてる理由がわからないとき。

・育児や家事など、うまく行かないことが立て続けに起きたとき、パパも仕事で忙しく、1人辛いと感じたときに、こんなママで申し訳ないと思い、これで良かったのかなと思うことはあります。


家事や仕事は、子どもが生まれる前の水準を知っているだけに、現実とのギャップが目につきます。周りを頼れない環境だと、自分で自分を追い込むスパイラルにはまることに。

◆周囲の人や社会との関係

母親になった瞬間から、周囲の人や社会との関係も劇的に変化します。

・娘の育児中、見ず知らずの人に説教されたりベビーカーを蹴られたりすることが何度かあって、家に籠もりがちなとき、パパに理解してもらえずそんなことあるわけない!と言われ外にでないのが悪いと責められ続けたこと。

子連れママというだけで、社会で理不尽な目に遭うことも。さらに一番の理解者であってほしいパパからも責められれば、母親になったことを後悔するには十分な理由になります。

・離婚して子どもを連れて実家に戻ったとき、両親から「母親なんだからちゃんとしないと」「子どもとしっかり過ごせるように土日休みの仕事を探さないと」「夜勤はだめ」などと、就職難の時期にさまざまな条件を出された。母親はこんなに選択肢がないのか、母親でなかったら自由に仕事を選べるのか。と思った。

こちらも一番頼りたいときに実の親や社会との関係で心を折られてしまったママの体験談でした。

・産後入院していた病院では、一部の年配の助産師や看護師に母乳の出が悪いことや慣れない育児での悩みに対して、厳しく冷たい対応を取られた。親にも頼れず一日一日が長く地獄のようだった。一時保育の利用を薦められたが、待機児童が多く全滅。中には、私が専業主婦だからか凄く嫌な言い方をしてくる保育職員もいて「こんな辛く苦しい思いをするなら、子どもを産むんじゃなかった……」と何度も思った。

子育てをサポートする立場にある職業の方たちとの関係で、より追い込まれてしまった事例です。

・元々子育てに向いてないと感じながらの子育てが始まり、周りの独身の人たちのSNSをみると、自由にネイルしたり夜食事に行ったり好きなものを食べたり旅行したり自分を着飾ったりしており、華やかな生活に憧れる。

現在は良くも悪くもSNSで他人の生活が見られる時代。独身の友人と比較し、母親になって自分がどれだけのことをあきらめたのかが見えやすくなる環境でもあります。

母親になったことを後悔するのは、いけないこと?

今回の調査では、コクリコラボの調査開始以来類を見ないほどの多くのエピソードが寄せられ、本記事でご紹介したのはほんの一部です。子育て世代の関心の高さがうかがえました。

ところで『母親になって後悔してる』の書籍内でも語られていることですが、ママたちは決して自分の子どもを愛していないわけでもなく、子どもの存在を否定しているわけではありません。

「母親になって後悔してる」という偽らざる気持ちにふたをし、自分の理想の育児や社会から期待される母親像になろうとするのがつらいのではないでしょうか。その状況こそがママを追い込むいちばんの原因になっているように思いました。次回の記事でもママの本音をご紹介します。

こくりこらぼ

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コクリコとAnyMaMa LIFESTYLE.Labが協働で、子育て課題解決×読書文化を目指すプロジェクト「コクリコラボ」。 ママの社会復帰を支援するサービス「AnyMaMa(エニママ)」で活躍するママたちのリアルな声を集めながら、新たなサービスや取り組み、ライフスタイルのアイデアを生み出していきます。 (Any MaMaについてはこちら:anymama.jp Twitter: @AnyMaMaJP )​

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