小学校教育は150年不変 「次の授業のカタチ」はこうすれば拡がる!

[小学校教育2.0]#1「学びの個別化と協同化」とは

熊本大学教育学部准教授:苫野 一徳

学力が伸びる「新しい授業のカタチ」

――学校のシステムに問題があることは理解できました。学校では「一斉授業」が当たり前だと思ってきましたが、それ以外の方法があるのでしょうか?

苫野先生:これまで指摘してきたような『みんなで同じことを同じペースで』『言われた通りに』の問題を克服するアイデアとして、私は、“学びの個別化・協同化・プロジェクト化の融合”を提唱しています。

『学びの個別化』とは、子どもたち一人ひとりに合った学びの方法やペースで、自分に合った教材などを選べるようにすることです。

そして、必要に応じて先生はもちろん、友だちに教えてもらったり、時には教えたりと『協同』しながら学びを進める。

さらには、『プロジェクト型(探究型)』の学びを中心に転換し、“決められた答え”がある問題だけでなく、自分なりの問いを考え、自分なりの方法で答えにたどり着く学びを展開する。

これらを組み合わせたものが、『学びの個別化・協同化・プロジェクト化の融合』です。

海外ではもちろん、日本国内でも、すでに『学びの個別化・協同化・プロジェクト化の融合』を実践している学校はたくさんあります。

そうした現場からは、子どもたちが自ら進んで学び、イキイキ過ごしているという報告がたくさんあがっています。これらの詳しい事例は第2回、第3回でご紹介していきますが、イメージを持っていただくために、少しだけ『学びの個別化・協同化』について触れておきます。

『学びの個別化・協同化』では、先生の一斉授業が中心ではなく、子どもたちが自分で学習計画を立て、学ぶ内容、ペースなどを自ら決めていきます(単元ごとの場合もあれば、年間を通して行う場合もあります)。もちろん、先生の短いインストラクションはありますが、学習を進める中でわからないことが出てきたら、先生や周りの友だちに教えてもらいます。

こうした環境で学んだ子どもたちは、一斉授業よりも短時間で学びが進み、学力もより向上するということが、既に様々な研究で明らかにされています。

学びの責任が自分にあることで、学習意欲が上がり、『学びが楽しい』と感じるようになるのです。

強制的な宿題では意味がない

――強制しなくても子どもが勉強するなんて、驚きです。

苫野先生:私たち大人はついつい、『子どもが自ら勉強するわけない』と考えてしまいます。しかしむしろ、いつ、何を勉強するかをすべて強制しているからこそ、子どもたちは勉強が嫌いになり、学習しなくなってしまっていると言った方がよさそうです。

「強制」こそが子どもの勉強する意欲を奪っています。  写真:アフロ

苫野先生:現在、どの小学校でも当たり前に出されている『宿題』ですが、これも、強制的にやらされている場合、ほとんど意味がない(宿題と学力の相関関係は見られない)という研究結果が出ています(※1)。それどころか、自分の意志と関係なく無理やり課せられる宿題は、弊害の方が大きいという研究結果さえあるのです(※2)。

※1 ジョン・ハッティ『教育の効果』
※2 アルフィー・コーン『宿題をめぐる神話』

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