「駄菓子屋カー」で“孤育て“のSOSをキャッチする現役ママの奮闘 福岡県遠賀郡&千葉県松戸市

シリーズ「令和版駄菓子屋」#5‐2 「移動式駄菓子屋」~にじのこども(福岡県遠賀郡)、駄菓子屋カーくるくる(千葉県松戸市)~

ライター:遠藤 るりこ

福岡県の水巻町を拠点に活動する移動式駄菓子屋「にじのこども」の出店。駄菓子の周りには自然に人が集まってくる。  写真提供:増田仁美さん

目の前の子どもはかわいいのに、なんだか一人ぼっちに感じてしまう……、そんな経験は誰しもあるのではないでしょうか。

自身も子育てをしながら、「地域の親子に寄り添えたら」と、活動をする母親たちがいます。その強い志の裏にある思いは、自分自身が子育てで孤独や不安を感じてきたから。

子育てをしながら、同じ境遇の母親たちに何ができるのか。たどり着いた答えは「移動式駄菓子屋」でした。福岡県「にじのこども」、千葉県「駄菓子屋カーくるくる」を運営する現役ママたちへお話をお伺いしました。

※2回目/全2回(#1を読む

「自分の子は自分で」は間違いだった

見かけるだけで幸せな気分になれそうなピンクのワゴン。福岡県遠賀郡水巻町を走る駄菓子屋カー「にじのこども号」のハンドルを握るのは、3児の母で元保育士の増田仁美(ますだ・ひとみ)さん。

増田さんは、普段は手足形アート制作のワークショップや、“食べられる歯固め・おしゃぶりおやさい”という商品の開発・販売を行っています。

「ワークショップなどで地域の親子に関わっていく中で、お母さんたちがぽつりぽつりと悩みや不安を聴かせてくれるようになって。私も子育て経験があるので、わかるよってすごく思うんです」(増田さん)

自身も、長男と長女を出産した後、「自分の子は自分で育てたいと気負っていた」と話す増田さん。

「でも、それって間違いだった。なんでもかんでも自分でする必要なんてないって、今ならわかるんですけどね。

お母さんたちが子育ての最初の時期にしんどくなるのって、一人で頑張ろうとするあまり、自分の時間が全く持てないから。だから私は、お母さんたちの時間と笑顔を作りたいなって思ったんです」(増田さん)

手足形アート制作のワークショップをする中で、地域の親子たちとの関わりが生まれていった。  写真提供:増田仁美さん

活動を続けながら、乳幼児期の親子だけでなく、もっと幅広い年代へのフォローをしていきたいと感じるようになった増田さん。

「これからはもっと地域の子どもたちのためにも何かできないかなと考えはじめたころ、水巻町に1軒だけあった駄菓子屋がつぶれたんですね。

子どもたちが『みんな行くとこなくて、こまっとう(困っている)』って言うから、じゃあママが駄菓子屋しようかなって(笑)。

お金を払ってワークショップへと足を運ぶことができるママだけでなく、金銭的な心配なく集ってほしいと思ったときに、これまでのいろいろな活動が『駄菓子屋』というカタチに発展したんです」(増田さん)

最初は自宅での営業も考えたが、「場所を変えていろんなところへ出向いていって、いろんな親子に会うスタイルが自分には合っているかも」と、車での移動式駄菓子屋に決めました。

そうして2022年の5月から、ピンクのワゴン「にじのこども号」に乗り始めます。

「にじのこども号」に駄菓子を積んで、地域のイベントに出向く。駄菓子をおろした後の車内は、乳幼児連れ親子のために授乳・オムツ替えスペースへと変身する。  写真提供:増田仁美さん

しんどいときこそ見つけて

活動を続けてきた中で印象的なエピソードを問うと、増田さんは目に涙を浮かべながら、ある親子の話をしてくれました。

「7ヵ月のお子さんを持つあるお母さんから、リアルなSOSがインスタのDMにきたことがあったんです。念願の赤ちゃんだったはずなのに『子どもがかわいいと思えなくてもう無理です』って。

連絡を受けてすぐ会いに行って。にじのこどもが参加している地域のイベントに呼んだりして、交流を続けていきました」(増田さん)

その母親は、増田さんと会うために外に出たのがきっかけで、子どもと一緒に外出できるようになったといいます。

「その親子は、今は水巻町から引っ越してしまったけれど、『にじのこどものおかげで楽しい子育てになりました』って言ってくださって。

SOSを言えずにいるお母さんって、すごく多いと思うんです。子育ての渦中にいると、どこで、誰に悩みや不安を話せばいいのかわからなくて我慢しちゃうから。

そんなときにピンクのワゴンで駄菓子を売っている私を見つけて、話しかけてくれたらうれしい」(増田さん)

バイタリティあふれる増田さんの周りはいつも、前向きな雰囲気で包まれています。

「にじのこどもは人が集まるひとつのきっかけ。私がいないところでも、いろいろな親子が地域でつながっていってくれたらいいなと思います。

もともとできあがっている子育てコミュニティって入りづらいけれど、にじのこどもは各地で転々としているので、気軽に入ってきてねって思い続けています」(増田さん)

駄菓子屋カーが活動の最終地点ではないと増田さん。「ここで出会った親子の声を拾って、次はどんなことをしようかなと考えるのが楽しい」(増田さん)  写真提供:増田仁美さん

情報が届きにくい地域に出向くアウトリーチ型活動

千葉県松戸市を拠点として、子育て世代向けの活動を行うNPO法人MamaCan(以下、ママキャン)。理事長を務めるのは、山田美和(やまだ・みわ)さんです。

ママキャンは松戸駅から徒歩5分にある「子育てつながるセンターco‐no‐mi(コノミ)」が活動の拠点。

発足から約10年間、多岐にわたる子育て支援活動を続けてきました。子育て支援のNPOが集まる地域活動「まつどでつながるプロジェクト」にも参画しています。

「2019年に、孤立する子ども・子育て世帯についての調査研究を行ったんです。どういった子育て世帯がどんな経緯で孤立していくのか。

ベッドタウンという特性を持つ松戸市において、地域での生活に馴染みがない流入世帯に向けてどのようなアプローチをしていくのか、などの話し合いがありました」(山田さん)

調査の結果、孤立を深める子ども・子育て世代には、必要な情報や支援が届いていない実態があったと山田さんは言います。

そこで、支援者の元へ積極的に出向き、情報や支援を届けるアウトリーチ型の活動の一環として、2021年3月から「駄菓子屋カフェくるくる」がスタートします。

「移動式の駄菓子屋なら、届きにくい地域に情報を届ける役割が担えると思いました。奇しくも助成金を得た直後からコロナ禍に入り、親子の孤立に拍車がかかったんですね。

家を出られない、誰とも会えない、そんな親子の状況をどうにか打破したいと。いろいろな親子がゆるやかに集って、何気ない話をできる場所があったらいいなということで、駄菓子屋カフェが誕生しました」(山田さん)

松戸市内を中心とする子育て支援活動は、「駄菓子屋カフェ」として地域に飛び出していった。  写真提供:MamaCan
自身も三兄弟を育てる、山田美和さん(写真左)。2016年にNPO法人MamaCanを設立し、理事長に就任した。 写真提供:MamaCan

定点的ではないからこそ“安心安全”な居場所に

昭和レトロな雰囲気満載の、緑色の軽バン。「駄菓子屋カフェくるくる」は、駄菓子をはじめ、皿回しやコマなどの昔遊び、オセロや将棋などをたくさん積んでいます。おいしいコーヒーとジュース、看板メニューのコッペパンやワッフルも人気。

軽バンの周りで飲んだり食べたりしながら大人たちはおしゃべり、子どもたちは簡易テーブルでゲームを広げ遊びます。

「現在は、レギュラーで月に3回、お寺の境内や個人宅のお庭を借りて営業しています。ほかにもイベントへの参加や、地域の自治会さんから呼ばれての出店があります」(山田さん)

駄菓子を並べると、大人も子どもも自然と集まり、会話がはずみます。

「1ヵ所にとどまらずにどこにでも行けるということは、声に合わせて臨機応変に対応できるということ。見た目にはわかりづらい課題を、その地域にいつもいる存在でないからこそすくい取ることができるんです」(山田さん)

常連の子どもからは、近くの児童館は知り合いが多くて本音を話しづらいけれど、くるくるの人は月に1回だから気楽に話せる、なんて声も。

「子育て広場やこども食堂だと、そのドアを開けることすらできない子もいる」と山田さん。野外の移動式駄菓子屋だと、境界線や入り口があいまいなのも良いところなのかもしれません。

月に1度の開店を楽しみにする子どもたち。ここでできた友達も多い。学区や世代を超えて、さまざまな親子が集う。  写真提供:MamaCan

子育て世代のサポートスタッフが続々!

「ママキャンの強みは、子育て世代のスタッフが多いので、さまざまな視点を持って親子と触れ合えること。

また、地域の支援団体との関係があるため、支援が必要なケースがあったらしかるべきところへつなげていくことができます」(山田さん)

「子育てはブランクではなく、キャリア」と話す山田さんの想いに賛同する母親たちを中心に、地域全体でサポートスタッフが増え続けています。

2022年からママキャンに参加している南理恵(みなみ・りえ)さんは話します。

「コロナ禍で出産したので、子育てに閉塞感を感じていました。そんなとき、ママキャンの活動と出会って、スタッフに『小児科はどこ行ってる?』などと声をかけてもらって、本当に気持ちがほぐれたんですね。

だから、次は自分がお返しする番だなって感じているんです」(南さん)

スタッフたちの会話を聞いていると、「松戸での子育てって楽しそう!」と温かい気持ちになります。ゆるやかに、でも強い絆でつながっていく母親たちの笑顔が、地域に広がっていきます。

「誰もがみな、孤育ての当事者になる可能性があることを知っている」と山田さん(写真左位置)。だからこそ、共感性が高い付き合いが生まれるのかもしれない。  写真提供:MamaCan

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次回は、障がい者13名が働くユニークな駄菓子屋「横さんち」へインタビュー。地域に溶け込む“本当の意味での多様性”について考えます。

取材協力/
●にじのこども
福岡県遠賀郡水巻町周辺
営業時間:不定期で月に数回、地域の祭りやイベント参加

●駄菓子屋カフェくるくる(NPO法人MamaCan)
千葉県松戸市周辺
営業時間:定期開催は基本水曜日・11時~「よい子の放送」が鳴る夕方まで、不定期でイベントに参加

関連リンク
●にじのこども
Instagram:@nijinoko16

●駄菓子屋カフェくるくる(NPO法人MamaCan)
Instagram:@dagashiya_cafe_kurukuru
NPO法人MamaCan(ママキャン)HP

えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆...