最終費用は塾代+100万円! 2024年SAPIX(サピックス)卒業生ママ「サピライフ」完走座談会 

後悔しない中学受験伴走座談会 前編 ~勉強時間と費用編~  

教育ジャーナリスト:佐野 倫子

中学受験は親の受験とも言われますが、果たして本当なのでしょうか?  写真:beauty_box/イメージマート

毎月さまざまなテーマで、中学受験の最前線を伝える「令和の中学受験」連載。

書き手は、2024年に中学受験伴走を終えた経験を持つ、教育ジャーナリストの佐野倫子さん。佐野さんは、「親子が後悔をしないために、さまざまな角度から中学受験に関する情報を発信したい」と、変化を続ける令和の中学受験の最前線を取材し続けています。

今回は、2024年2月に中学受験を終え、大手塾『SAPIX』を卒業したママたちによる、座談会をお届けします。


(全2回の前編)

佐野倫子(さの・みちこ)
東京生まれ、早稲田大学卒。航空業界・出版社勤務を経て作家・教育ジャーナリストに。著書は『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)。男子2人のママ。

座談会メンバー
Aさん:男子ママ。お子さんは第2志望の男子校に合格。小3から通塾。
Bさん:女子ママ。お子さんは第1志望の共学校に合格。小2から通塾。
Cさん:女子ママ。お子さんは第3志望の女子校に合格。小4から通塾。

最後は息切れした早期入塾

──Bさんは小学校2年生から通塾されていますね。一般的には大手中学受験塾は新4年生(3年生の2月)からという方が多いですが、どのようなお考えで低学年から通塾をされたのでしょうか?

Bさん:それは止むにやまれず、というのが実態です。我が家はSAPIXが徒歩数分のところにあります。難関校への合格実績もいいし、ここにしようと子どもが幼稚園くらいのときから漠然と決めていました。

ところが、タワーマンションがどんどん建って、2年生で最寄り校舎が生徒募集を締め切ると耳にして。それで早めに入塾することにしました。いわば「席とり」ということです。

──実際に入塾してみて、結果5年近く通塾されましたが、率直にこの5年間、どうでしたか?

Bさん:うーん、一言でいうのは難しいですね。いいところも、悪いところもありましたから……。

というのも、低学年から計算練習や、漢字の書き取りなどの意識ができたのはよかったかもしれませんが、算数は低学年の授業ではパズルのような問題が多くて、受験の単元に直結はしていなかったと思います。勉強の習慣づけにはよかったですが。

あとはやっぱり、塾に5年も通っていると飽きてしまって、最後は親子で息切れしていたというのが本音です。子どもも『正直長すぎて、知的好奇心がすり減っていた部分もある』と言っていたくらいで……。

3家庭とも他も併用

──知的好奇心がすり減る……。本当に大変だったことがわかる一言ですね(泣)。とはいえ、どのお子さんも無事に合格していて素晴らしいです。皆さん、SAPIXのほかに個人塾などは併用されましたか?

Cさん:我が家は、テキストを解説してくれる動画配信サービスの「コベツバ」を、6年生のときに利用していました。

Aさん:我が家は、6年生の夏から家庭教師にお願いしました。

Bさん:個別指導塾「プリバード」に、算数と理科を見てもらっていました。

──なんと、どのご家庭もSAPIX以外のサービスを利用されていたとは……! 中学受験費は天井知らずですね。

Aさん:うちの子は、都心の公立小に通っていたのですが、6年生の半分ほどが私立中学校に進学しました。6年生の後期ともなると、SAPIXと早稲田アカデミーのNN(志望校別特訓クラス)の併用やカリスマ家庭教師の投入、個別指導のトーマスに月30万円以上払うご家庭なども実際にいましたね。

Cさん:最後は「お金の問題じゃない! 合格できるならなんでもやります」っていう気持ちになるんですよね。だからあらかじめ予算を決めておくのも大切だなと思いました。

終わってみると、お金をかけたからっていい学校に合格するとも一概に言えないというのが実感ですから。

1日の家庭学習の時間

──現実はシビアなんですね。とはいえ、弱点の補強を親がする、というのはなかなか難しいと思うので、通塾以外のサービスをうまく使えたら心強いですよね。

では、ご家庭では、1日にどのくらい勉強していらっしゃいましたか?

Cさん:4年生は1日1時間くらいでしたが、5年生になってから成績が下がって、塾がない日は3時間くらい勉強していました。6年生は、塾がない日は4時間くらい、塾がある日は塾のみ、土日は8時間くらいのイメージです。

Bさん:うちは要領が悪くて、4年生のころから結構勉強していました。土日は5時間くらいやっていたんじゃないかな。5年生は塾がない日は3時間くらい。6年生になって、平日の塾のない日は5時間くらいで、後期は塾も入れて土日は10~12時間ほどやっていました。

Aさん:うちはぜんぜん勉強しない子で、勉強しろって言いすぎて血管が切れそうでした……。4年生は、ほぼ家ではゼロ。5年生も、塾以外はテスト前にやるくらいで。本人は、第1志望は決めているものの、実際の勉強量が追い付いていませんでした。

それで6年生の夏から親が焦りすぎて家庭教師にお願いしました。もう見ていられなくて、お金はかかるけど外注という感じで。最終的に6年生は塾+100万円近くかかったかもしれません。

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SAPIXの6年生は、1年間で140万円ほどかかりますから、それに上乗せして100万円とは驚きました。

しかし、合格への道に必要だったならば、高いと感じるかは、中受を戦い抜いたその家庭にしかわからないことなのでしょう。

中受伴走を体験したママだからこそ話せる座談会。2回目では、受験中の親子の修羅場について話していただきました。
 
取材・文/佐野倫子

中学受験伴走座談会
2回目を読む。
(※2回目は2024年8月22日公開。公開日までリンク無効)

『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』著:佐野倫子(イカロス出版)
『受験精が来た!』著:真田涼、イラスト:ねぎまぷりん (講談社)
さの みちこ

佐野 倫子

Michiko Sano
教育ジャーナリスト

東京生まれ、早稲田大学卒。英国ロンドン大学ロイヤルホロウェイ留学。航空業界・出版社勤務を経て、作家・教育ジャーナリストに。 講談社mi-mollet、漫画雑誌Kiss(原作)、ダイヤモンド・オンライン、幻冬舎ゴールドオンライン、東京カレンダーWEB、月刊[エアステージ]などで小説・コラムを多数執筆。2人の男の子の母。 主な著書:『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)、『知られざる空港のプロフェッショナル』(交通新聞社)。 Instagram @michikosano57 X @michikosano57

東京生まれ、早稲田大学卒。英国ロンドン大学ロイヤルホロウェイ留学。航空業界・出版社勤務を経て、作家・教育ジャーナリストに。 講談社mi-mollet、漫画雑誌Kiss(原作)、ダイヤモンド・オンライン、幻冬舎ゴールドオンライン、東京カレンダーWEB、月刊[エアステージ]などで小説・コラムを多数執筆。2人の男の子の母。 主な著書:『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)、『知られざる空港のプロフェッショナル』(交通新聞社)。 Instagram @michikosano57 X @michikosano57