金田一先生 スマホは子どもの国語力に影響なし! 事実と意見を区別する力が必要

国語の神様・金田一秀穂先生に聞く「国語力を養う親子の時間」#1〜デジモノの影響編〜

日本語学者:金田一 秀穂

日本語学者として、本よりデジモノを好む風潮を憂うのかと思いきや、デジモノをポジティブに捉え、達観した意見を述べてくれた金田一先生。
写真:菅沢健治
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「読書を通じて、子どもには豊かな国語力を身につけて欲しい」
そう願っているパパママは多くいることでしょう。

ところが今、子どもたちの手には紙の本より、スマートフォンやゲーム機といったデジモノが握られていることも少なくありません。たくさん本を読んでほしい親からすれば、本当にこれでよいのか不安になります。

そんな現代の状況を“国語の神様”と呼ばれる日本語学者の金田一秀穂先生はどう見ているのでしょうか? 返ってきたのは、意外な言葉でした――。(全4回の1回目)

子どもをめぐる心配事は昔から変わっていない

子どもは、今も昔も変わりません。

「最近の子ども(若者)はけしからん!」とは3000年も前から言われてましたし、「うちの子は全然、本を読まない」といった声も、昔から度々聞かれてきましたよ。いつの世もそうなのです。

僕は今の子どもに何も心配はないと僕は思っています。例えば30年前の子どもと今の子どもで、言葉づかい、難しく言うと国語力に大差があるかというと、そんなデータはありません。

何が困りごとなのか、事実を確かめもしないで、ただ困った困ったと問題視するのは、日本人は困るのが好きだからでしょう(笑)。

動画にハマっている子どもや、ベビーカーや自転車の後ろでスマートフォンを操作する子どもを見て、眉をひそめる大人がいるの? へえ〜。

でも僕にしてみれば、昔でいうテレビやラジオがYouTubeに代わっただけ。むしろ、小さい頃からデジタル機器を使いこなせることって、すごい能力だと思います。だって大人の僕ですら使いこなせない道具を自在に操作しているんでしょう? 

将来有望ですよ。僕なんてファミレスに行って、ピッとかざせば割引される……QRコードっていうの? ああいうのも使い方が分からずレジの前でモタモタしちゃう。

しかも、IT機器を使いこなせれば、そこから新しい表現を創作できる可能性もありますよね。

2020年にリリースされ大ヒットしたAdoの楽曲『うっせぇわ』(※YouTube再生回数約1.9億回。2021年12 月13日現在)も、音楽とアニメーションを融合させて、とても上手な表現をしています。

僕自身は言葉でしか表現できませんが、今はコンピューターを使って、映像、漫画、音楽などなど、さまざまな自己表現ができる時代。

これはとってもいいことなんだろうと思います。ましてや、小学生のうちからコンピューターを使うことが得意ならば、そこを伸ばしてあげてもいいんじゃないかなあ。

そう考えると、むやみに禁じたり、安易に否定したりする必要はないのかな、と思います。今はリモートで授業をしないといけないし、今後はスマートフォンを使いこなせない僕のような人間は淘汰されるでしょうから(笑)。

それでもどうしても我が子に読書をしてほしいなら、スマートフォンやタブレットを渡す前に、本を読むことの喜びを与えた方がいいかもしれませんね。

心の底から本が好きになっていれば、大丈夫。何があってもきっと読みますよ。

「昔も今も同じ人間が生きているんですから、そんなに違うはずがない。スマホで人間が変わることってありえないと思うな」と、金田一先生。
写真:菅沢健治

その不安は“事実”に基づいている?

ただ、スマートフォンなどの便利で楽しい道具を与える時は、親も慎重になった方がいい面もあるでしょう。なぜなら、インターネットやメディア、特にTwitterなどのSNSには、事実よりも“意見”や“感想”ばかりが流れてきて、私たちはそれに惑わされがちだから。

例えば小室圭さんと眞子さん夫婦の一件にしても、個人的な意見ばかりが流れてきます。圭さんが髪の毛を後ろで結ぶことへの意見もその一つ。

どんなに理路整然ともっともらしい理屈が並べられていても長髪が良いか悪いかなんてしょせん意見に過ぎないのに、繰り返し読むことでいつの間にか「確かにそれはけしからん!」と流されてしまうことがある。いくつかの意見を読むことで、洗脳されてしまうんですね。

昔は昔で、例えば第二次世界大戦中も、国民は事実を知る機会が少なく、上からの意見に国民は振り回され、洗脳されていました。

つまり、私たちはかくも意見に振り回されやすい、騙されやすい生き物なんです。そのことを、まず自分たち大人が認識し、事実と意見を混同しないようにした方がいいでしょう。

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