アーティストが敬愛するアーティスト
人々の記憶を呼び覚ます絵
「記憶ノ一切ヲ悉く大鍋に入れ、ジックリト火ニカケ、ユックリカキマワシテハ ネリコネテ、ウマイヨーカンにする」
(茂田井武 1944年ごろ)
芸術家の集う街、パリへ
21歳のとき、写生旅行と称して、鞄ひとつで満州へ。そこからシベリア鉄道に乗りパリへ向かいました。そして、パリの日本人クラブの食堂で皿洗いをして働きながら独学で絵を描き、日々の生活を画帳に描き留めました。美術学校に通うでもなく、ルーブル美術館にも1度行ったきり。極貧生活のなかスイス、ベルギーなどにも滞在しますが、パスポートの手違いでロンドンを経て強制送還。3年間の欧州ボヘミアンの旅でした。
画帳「ton paris」より
(絵のキャプションはすべて『ton paris』(講談社)より部分抜粋)
茂田井武の思い
自分一人が幸福になることを念ったり、
自分の家のものが幸福になるのを念ったり、
自分の国が幸福になるのを念ったりするような、
たとえば小さな念いではなく、
全世界、全宇宙、さらにもっともっと
きりのないものの幸福をこそ念いたい──
(茂田井武 1955年ごろ)
文:五十嵐千恵子
Information
「ton paris」の原画を所有する美術館、群馬県桐生市にある大川美術館では、「茂田井武没後70年企画 茂田井武『ton paris』とパリの画家たち」を2026年3月29日(日)まで開催しています。
詳細はホームページをご覧ください。
https://okawamuseum.jp/event.php![]()
茂田井武の貴重な画帳の絵を一冊にまとめた『ton paris』
天才と称されながら、短い活躍ののち惜しまれつつ急逝した童画家、茂田井武。ぬくもりのある筆致や詩情あふれるモチーフは、現在も多くのファンを魅了し続けています。その茂田井が20代にパリで描き綴った画帳が「ton paris」(トン・パリ)。市場、遊園地、安酒場……1930年代のパリの空気を水彩や色鉛筆で優しく鮮やかに写し取った若き日の絵日記は、画家のエッセンスが凝縮したかのような存在感を放ちます。
現存する画帳の全ページを掲載し、資料として広松由希子氏による作品解説や、関連地図・略年譜・未発表原稿を収録した、ファン待望の画集。
『ton paris』 画:茂田井武 (講談社)
































































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茂田井 武
1908年、東京・日本橋生まれ。1930年に渡仏。帰国後、さまざまな職を経て、雑誌や大衆小説などに挿絵を描くようになる。特に戦後の10年間は子どもの本を中心に膨大な仕事に取り組む。1954年、絵雑誌「キンダーブック」の仕事に対し、小学館児童文化賞児童絵画賞受賞。絵本の代表作に『セロひきのゴーシュ』などがある。素朴な詩情と幻想、郷愁とユーモアを含んだ絵で、戦後の出版美術界に大きな影響を与え、現在も数々のアーティストを魅了し続けている。1956年、没。
1908年、東京・日本橋生まれ。1930年に渡仏。帰国後、さまざまな職を経て、雑誌や大衆小説などに挿絵を描くようになる。特に戦後の10年間は子どもの本を中心に膨大な仕事に取り組む。1954年、絵雑誌「キンダーブック」の仕事に対し、小学館児童文化賞児童絵画賞受賞。絵本の代表作に『セロひきのゴーシュ』などがある。素朴な詩情と幻想、郷愁とユーモアを含んだ絵で、戦後の出版美術界に大きな影響を与え、現在も数々のアーティストを魅了し続けている。1956年、没。