子どもの夏の病気「皮膚・目の感染症」 原因・症状・対処法を小児科医が解説 強い感染力に大人も注意!

夏にかかりやすい子どもの病気#3「とびひ」「流行性角結膜炎(はやり目)」

小児科医:渋谷 紀子

ボリボリかいていると、あっという間に体のあちこちにブツブツが広かるのが「とびひ」です。  写真:PantherMedia/イメージマート
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夏にかかりやすい子どもの病気といえば夏風邪が代表的ですが、皮膚や目のトラブルが多いことをご存知でしょうか。

夏は肌の露出が多く、日差しや汗、虫刺されなど、さまざまな刺激が加わりやすいこと、また、汗を拭うために顔まわりを触る機会が増えることなどがトラブルを起こしやすい原因と考えられます。

第3回では、「とびひ」と「流行性角結膜炎(りゅうこうせいかくけつまくえん)」についてお届けします。愛育クリニック院長である渋谷紀子先生が、それぞれの病気の原因や症状、対処法などを詳しく解説します(全4回の3回目。
#1#2を読む)。

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あっという間に体中に広がる「とびひ」

とびひは正式名称を「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」といい、火が飛び広がるように水ほうが体中に広がるため「とびひ」と呼ばれています。

水ほうは手の届く範囲ならどこにでも広がるので、症状が見られたら、まずは細菌が中に入っているブツブツに触れさせないことが大切です。

水ほうを見つけたら、ガーゼなどで覆って菌を広げないことが大切です。  真:Kawamura_lucy/イメージマート

1) とびひってどんな病気なの?

黄色ブドウ球菌やA群溶血性連鎖球菌などの細菌が原因の感染症です。

とびひには水ほうができて皮膚がむける「水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)」と、水ほうが厚いかさぶたになり、炎症が強く出る「痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)」がありますが、夏に子どもがかかるのは黄色ブドウ球菌による「水疱性膿痂疹」のほうです。

この病気は5歳以下の乳幼児に多く、特に高温多湿の夏に多いことが知られています。感染経路は水ほうの中にいる細菌(ブドウ球菌)が手について、その手で体の他の部分の傷を触って感染する接触感染です。

虫刺されやあせも、すり傷、湿疹がそのきっかけとなり、無意識にかいたりしてできた浅い傷に細菌が入って感染することが多いでしょう。

最初は水ほうが1〜2個できる程度ですが、かゆみがあるため子どもはかいてしまいます。水ほうは薄く柔らかいため、かくとすぐに潰れて手に菌が付着し、菌がついた手でまた別のところをかくと水ほうができて……という具合に、あっという間に全身に広がるのがこの病気の特徴です。

子どもの手の届く範囲なら体のいたるところに水ほうはできますが、傷ついた皮膚に細菌がつきやすいので、あせもなどがあってすでにかきむしっている場合は広がりが早いでしょう。

アトピー性皮膚炎の子も皮膚の状態がもともとセンシティブなのでとびひが広がりやすく、注意が必要です。

2)おうちでの応急処置と病院での対処法

基本的には皮膚を清潔にすることと、水ほうに触らないことが重要です。子どもの爪を切り、患部を触らないようにガーゼなどで皮膚をそっと覆うといいでしょう。絆創膏で密封するのは、菌を増殖させるきっかけになるのでやめましょう。

とびひが広がった場合は小児科か皮膚科を受診します。症状が軽い場合は抗菌薬の塗り薬が主に処方されますが、全身に広がっている場合は、塗り薬だけでなく飲み薬も使用します。薬の使用後は2〜3日で落ち着くことが多いでしょう。

アトピー性皮膚炎の場合は、もともとの皮膚炎も治療しつつとびひのケアをしていくため細心の注意が必要です。普段、湿疹を診てくれるかかりつけ医に相談すると良いでしょう。

3)集団生活への復帰タイミングは?

接触感染で病気が広がっていくので、ガーゼや包帯などで患部を覆い、周囲に接触させない状態であれば登園・登校は可能です。ただし、プールはとびひが乾燥して赤みが引くまでは待ちましょう。

4)そのほかの注意事項について

家族間であってもタオルは共有しない、お風呂は最後に入浴するかシャワーがベストです。睡眠中は、シーツや布団がかゆい部分にあたると無意識にかき壊してしまうので、直接それらが触れないようにガーゼなどでケアしてあげるといいでしょう。

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