2021.10.02

落語家・三遊亭あら馬 2児の母がPTA連合会長と前座修行を掛け持ち!

落語家・三遊亭あら馬さんインタビュー #2 前座修行と子育てとの両立

寄稿家:三遊亭あら馬

撮影:土居麻紀子

2人の子どもを育てながら2021年5月に二ツ目に昇進した三遊亭あら馬さんにインタビュー。
第2回は、大変だった前座修業時代のお話、そしてあら馬さんが「自分のやりたいことをやろう」と思ったきっかけについてお話いただきました。

高座での一枚。 
撮影:土居麻紀子

「死ぬかもしれない」と思った経験が背中を押してくれた

――第1回で落語に出合ったお話をお聞きしましたが、落語教室に通う前は、落語に対してどのようなイメージを持っていたのでしょうか。

「最初は『笑点』のイメージが強かったですね。話し方の訓練になればいい、ぐらいの気持ちで門を叩いたのですが、始めてみて、これは面白いな、と。
そして、人が笑ってくれる、喜んでくれるのが嬉しかったですね。『人前でしゃべりたい!』という、私のフラストレーションを発散してくれました」

――入門する際には、お子さんたちにはどのようにお話されたのでしょうか。

「5年も落語教室に通っていたので、子どもたちはすでにママは落語家だと思っていたみたいです(笑)。
『“笑点”に出るママと、出ないママ、どっちがいい?』と、聞いたら、『今は中途半端だから、もうちょっと有名になって出て』と、言われたので、頑張らねば! と、入門することにしました。

あとは、幼少期から患っていた難病指定の病気、先天性胆道閉鎖症も挑戦したいと思った理由のひとつでした。
さらに通院先で、胆管細胞ガンの疑いがあるとも言われて……。
PTA会長に就任した1年目の35歳のとき、開腹手術をしたんです。

そのとき、娘たちには『ママはガンだから、死ぬかもしれない』と伝えました。また、娘たちが自立できるように、料理などの家事も教えました。

結果、ガンではなかったのですが、壊死していた肝臓を1/3切除する大手術で。本当に死ぬかもしれない、と思っていたので、いつ死ぬかわからないなら好きなことをやりたいと、さらに強く思うようになりましたね」

撮影:土居麻紀子

「破門だ!」と言われ続けた八方塞がりの前座1年目

――生死を分ける経験をされたからこそ、夢に一歩踏み出せたというあら馬さん。始まった前座修業でも大変なことも多かったのではないでしょうか。

「師匠・とん馬は、もともと落語教室の先生であり、飲み仲間だったので、私の心が”師匠”と認識するまでに4年かかりましたね(笑)。
落語教室に通っている間は、私はお金を払って落語を習いに来ているお客さんだったので、師匠はとても優しかったんです。
でも、入門したとたん人が変わったかのごとく厳しくなって。それはもう、自分が甘かったと後悔しましたね。入門したら、師匠はいわば親。弟子に対する責任を持たないといけなくなるわけです。

それに、師匠ご自身が、寄席前や寄席後に当時の師匠の家に行き、お世話をするような内弟子修行をされてきた方。しかも師匠は独身です。
対して私は、当時39歳の家庭持ちの弟子。熟考の末、楽屋に入る前と、寄席が終わったあとに、電話で師匠に報告することを内弟子修行として課せられました。

なんだそれだけか、と簡単なことのように感じると思いますが、下の前座は寄席が終わったあとはやる仕事が多くて。慣れない中、仕事が遅く、なかなか連絡する時間が作れないんです。

寄席が終わった時間から、かなりの時間が経っていると、『なんで電話できないんだ!』となるわけです。
『師匠に電話をしなければいけないので、と誰かに断って電話して来い!』と言われても、下の者は口を聞くなと言われていたし、まだ寄席に残っていらっしゃる師匠や兄さんたちに、そんなことを言うのは失礼にあたるし、と思っていたので、もう八方塞がりでしたね。

落語界は師匠がすべてです。
しかし、師匠が破門、と言わない限り、弟子でいられます。『師匠に電話するので」と言えばみなさん許してくださるのですが、前座に入りたての私にはその理解がなくて。
もちろん今はそんなことはありませんが、師匠からは毎日のように『破門だ!』と言われていましたね。1年目は本当に大変でした。

それから3年くらい経ったとき、師匠が、
『電話で報告するということが、今日あった出来事を伝える枕(落語に入る前の世間話)の稽古になる』と話してくれたんです。
それ、最初に言って欲しかった……(笑)。そうしたら、こっちだって面倒くさがらずにやったのに!

このように、前座の仕事は師匠の考えによって、まったく違います。前座をどう育てていくかは、その師匠が決めるからです。
さらに、寄席のシステムや、寄席以外のホール落語会の運営、前座内ルールなど、それぞれやり方やルールがあり、覚えることが本当に多かったですね」

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