「指しゃぶり」は3歳までなら無理にやめさせなくてOK 小児歯科のポイント

小児歯科専門医・唐木先生ご夫妻インタビュー  #2 1歳半~3歳頃の歯のチェックポイント

第2回は、乳歯が生えそろう時期の1歳半~3歳頃の子どもの歯のチェックポイントについてです。

大人の仕上げ磨きも子どもの歯を守る大切なポイントのひとつです。  写真:アフロ

むし歯菌に初感染しやすい1歳半~2歳半の間、甘いものは極力控える

通常、2歳半頃までに20本ある乳歯が生え揃うとされています。この時期は、むし歯菌に初感染しやすく、徹底して予防対策を行う必要があります。何に気を付ければいいのでしょうか。

唐木隆史先生(以下隆史先生)「生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には、むし歯菌(ミュータンス菌)はいないのですが、身近な大人から菌をもらったりするんですね。
最初のむし歯菌が移りやすい時期が約1歳半から2歳半(19ヵ月~31ヵ月)と言われています。
この時期は “感染の窓”と言われ、注意が必要です。ここでむし歯菌からしっかり守ってあげれば、むし歯になりにくくなります。

例えば、親子で食器を共有しないなど、母子感染を避ける必要があると言われてはいます。
しかし、あまり神経質になり過ぎても負担が大きくなりますし、親子でのスキンシップの機会も減る方が心身発育にも悪影響かと思いますので、当院ではしっかり歯磨きをすることが大事ですとお伝えしています。歯磨きの際には親御さんが念入りに仕上げ磨きをしてあげてください。

一方で、むし歯菌がいてもむし歯にならない子もいます。それは糖質とむし歯菌のバランスの問題。甘いものを食べると口の中の残りカスを細菌たちが喜んで食べます。すると細菌は、ねばねばしたバリアを張って歯の表面にこびりつき、プラーク(歯垢)という大きな汚れに成長します。そうするとむし歯になるリスクは高まります。特にご兄弟がいるご家庭は、下のお子さんが早い時期から甘いものを一緒に食べてしまう傾向にありますが、3歳まではなるべく甘いお菓子などを摂らないように気をつけた方がいいですね」

唐木美弥先生(以下美弥先生)「炭酸飲料やジュースにも注意が必要です。親御さんが炭酸飲料やジュースをよく飲む家庭だと、子どもも早くから飲むようになってしまうことも。子どもの歯や、全身の健康を考えるなら、甘い飲み物を買い置きしないなど、普段の生活を見直すと、それだけでむし歯になるリスクは減りますよ」

また、この時期に積極的に取り入れたいむし歯予防法は、第1回の記事でも触れたフッ素の塗布とのこと。

隆史先生「歯にくっついた細菌は、酸をつくり出します。酸は歯の表面を溶かすことでむし歯にしますが、フッ素には、いったん溶けた歯の成分が歯の中に戻る“再石灰化”を促して歯を強化する役割があります。同時に、歯の汚れであるプラークを付きにくくさせるので、歯医者さんで年に数回塗布してもらうだけでなく、家庭でも低濃度のフッ素入り歯磨き粉やフッ素ジェル(6歳未満はフッ化物濃度500ppmF以下のもの)などを併用することをおすすめします」

仕上げ磨きは毎日欠かさず、歯間の汚れはフロスで除去

美弥先生「本人によるブラッシングの後に、親御さんによる仕上げ磨きは毎日欠かさず行ってください。適切なサイズの歯ブラシを本人用と仕上げ用で使い分け、さらにフロスで歯間の汚れを取ってあげることを習慣づけるといいでしょう」

隆史先生「本人が使用する歯ブラシは、厳密にいえば生え方によって使うべきものは変わってくるのですが、基本的には年齢別の歯ブラシを使っていただければ大丈夫です。
歯ブラシの硬さは、やわらかめ~ふつうの硬さのもので、優しく磨いてしっかり汚れを落としましょう。仕上げ磨き用にはヘッドが小さく、柄が長いものを選んでください。

最近は、電動歯ブラシを使うお子さんもいらっしゃいますが、当院では電動歯ブラシをお持ちの方は、親御さんが仕上げ磨き時に使うように説明し、お子さんは手用の歯ブラシを使って頂けるように説明しています。

歯ブラシで磨く動きは、とても複雑な動作なので、習得できるのが10歳前後くらいと言われています。ですから、それまでは親御さんにできるだけ長く仕上げ磨きをして頂いて、お子さんには自身の手を使って磨くようにしてもらうのが好ましいのです。
手動でも電動でも、毛先をどこに当てるかが分かっていないと隅々まで届かないので、正しい磨き方を歯医者さんでチェックしてもらってください」

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