絵本ナビ編集長がおすすめする 4歳の子どもが読むのにぴったりな絵本

絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんが『絵本と年齢をあれこれ考える』エッセイ第8回

磯崎 園子

日常の生活と密接に関わってくる研究だってある。『みんなうんち』(五味 太郎・作 福音館書店)。うんちの観察だ。今自分の体から出たうんちは、どんな形や色をしているだろう。立派なものが出たら、ぜひお披露目したい。そんな風に前向きに明るくうんちと付き合えるようになるために、絵本の果たす役割は大きい。
「みんなうんち」
「毎朝トイレで自分のうんちを確認するようになった」「うんちでたー! とトイレから呼ばれるようになった」という声が集まる『うんぴ・うんにょ・うんち・うんご』(村上 八千世・文 せべ まさゆき・絵 ほるぷ出版)、うんちの持つ滑稽さや可笑しさを楽しめる『うんちしたのはだれよ!』(ヴェルナー・ホルツヴァルト・文 ヴォルフ・エールブルッフ・絵 関口 裕昭・訳 偕成社)など、うんちの絵本は大活躍。好奇心の爆発は、どんなところにも潜んでいる。
「うんぴ・うんにょ・うんち・うんご」
「うんちしたのはだれよ!」
こんな風にして、彼らの好奇心はどんどん広がっていき、そして急激に深まっていく。

電車が好き、動物が好き、虫が好き、パンが好き、おばけが好き……大人の方がついていくのに必死だ。絵本だけでは収まらず、そのうちに写真絵本や図鑑へと手を伸ばし、すらすらと名前を言えるようになっていく。

その姿を見ながら、つい「この子は天才かしら」と思うのだけれど、不思議なことに数年後にはけろりと忘れてしまっていたりもする。

探索の中から見つけた答えは…

それでも、そんな毎日の体験の中から、自分なりの答えを見つけ出していく様子もまた興味深い。『わたしとあそんで』(マリー・ホール・エッツ・文・絵 与田 凖一・訳 福音館書店)は、主人公の女の子がはらっぱの動物たちに自分から呼びかける。「ばったさん、あそびましょ」「りすさん、あそびましょ」。

ところが、バッタもリスもうさぎもへびも、みんな逃げていってしまう。仕方がないので、池のそばでじっと座っていると、いつの間にかみんなが戻ってきてくれている。
「わたしとあそんで」
さらにじっと我慢していると、シカの赤ちゃんが近づいてきて、彼女のほっぺをぺろり。「ああ わたしは いま、とってもうれしいの」女の子の幸せが、その表情から存分に伝わってくる。子どもたちと小さな動物たちとの交流には、邪魔をしてはいけないような、神秘的な時間が流れているように感じることがある。そうやって、外の世界やまわりの人たちとの距離を探っているのかもしれない。
小さいながらに、自分は今どうしてこんな状態になっているのか……と考えざるを得なくなっているのは『もう ぬげない』(ヨシタケ シンスケ・作 ブロンズ新社)に登場する男の子。
「もう ぬげない」
自分で服を脱ごうとして、脱げなくなったまま途方に暮れた彼は思う。「ぼくは このまま おとなに なるのかな」。けれど、ここであきらめるわけにはいかない。「うん! だいじょうぶ! ぼくは ずっと このままで いよう!」4歳児なりの気概と知恵で、なんとかこの状況を切り抜けようとするのだ。出した答えの、健気でユーモラスで愛らしいことよ。
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