本当に気になる子育ての悩み「子どもがものを投げたりする危険な行為をやめさせたい」

子育てお悩みランキング12を多角的に検証! 第4回 井潤知美先生/高祖常子先生

ライター:笹間 聖子

続いては、子育てアドバイザー&キャリアコンサルタントの高祖常子先生の回答です。
子育てアドバイザー&キャリアコンサルタント 高祖常子先生

投げたら制する、きっぱりと注意して片づける

ものを投げたときは、まずは、「これは危ないからダメだよ」と本当に制する感じで止めましょう。それから、投げる原因を考えてみてください。

投げるときには必ず、子どもの気持ちに何らかの原因があります。友達や兄弟と遊んでいるときであれば、おもちゃを使おうとしたのに、誰かに取られそうになって「貸したくない」と思って投げてしまったのかもしれません。

こんなふうに、原因はその場面ごとに違いますよね。御飯を食べているときにポイッと投げたなら、「意外と遠くに飛んで面白い」と感じて投げてしまったということもありえます。
意外と遠くに飛んで面白いと感じ、投げてしまっていることも

子どもの気持ちを言語化する

もし、お友達とのおもちゃの取り合いでイーッとなって癇癪を起こしたなどの原因でしたら、大人が間に入って引き離して、「投げたらダメだよ」と注意した後で、気持ちを代わりに言語化する​のがおすすめです。

「このおもちゃを使いたかったんだね」「貸したくなかったんだね」といった形で、子どもの気持ちをその都度言葉にしましょう。乳幼児期は、「こうしたい」という思いを言葉でうまく伝えられず、イラっとしてそものを投げたりしすることがあります。

そのときに、ママ・パパが子どもの気持ちを言語化すること。そうすると、「僕はこういう気持ちだったんだ」と自分の気持ちがわかったり、パパやママにわかってもらえていることをうれしく思うでしょう。

子どもが安心できるコミュニケーションは、とても大切です。
子どもの気持ちを考えて、その都度言葉に
親御さんによってはそんなとき、「投げたらダメじゃない」と怒鳴りつけたり、痛みを分からせるといった理由で、同じように子どものおもちゃを投げるといったことをする方もいます。でも、そんなことをする必要はありません。

もちろん、きっぱり注意したり、気持ちを言語化したからと言って、明日からすぐにやらなくなるということはきっとありません。ですが、そこは成長発達の段階なので、少し長い目で見ていきましょう。

子どもが今遊んでいるなら貸さなくてもOK!

日本のママ・パパは子どもがおもちゃの取り合いになったとき、周囲の目が気になったり、「ワガママな子って見られたら嫌だな」と考えて、無理にでも貸すことを強要してしまいがちです。

もちろん、「おもちゃを貸せる子になってほしい」という想いもおありだと思います。ですが欧米で話を聞くと、「ごめんね。うちの子今貸したくないんだって」と伝えることも珍しくないそうです。

子どもが「使いたい」と思っていることは、意思表示ですから、別に悪いことではないですよね。もしかしたら、そのおもちゃをほかのおもちゃと組み合わせて、ものすごく面白いことをしようと考えていたかもしれません。

「友達が使いたいって言っているんだから貸してあげなさい」という言葉が、子どもの頭の中の想像の芽を奪っているかもしれません。
想像をふくらまして、面白い計画をしている最中かも……?
だから「嫌じゃないでしょ。貸してあげなさい」ではなくて、「貸したくなかったんだね」とまずは気持ちを言語化して、「でもお友達もこれを使いたいんだってどうする?」と投げかけてみましょう。

そうすると2歳前後の子でも、「僕は使いたい。でもお友達も使いたい。でも1つしかない。どうしようか」とちょっと考えます。この考えることこそが大切なんです。

それで、「でもやっぱり貸したくない」と言えば、それもOKです。そういった場合は、「どうして貸したくないの?」と聞いてあげると、「これからこうやって遊ぼうとしていたから……」と構想を語ってくれるかもしれません。

そんなに詳しく説明ができないかもしれませんが、その気持ちは大切にしましょう。ママ・パパが周りの目に負けずに子どもの側にたって、気持ちを代弁して、様子を見ることも大事です

相手の子どもには、「もうちょっと遊びたいみたいだから、もう少ししてから聞いてみるね」と伝えてみましょう。子ども自身が持った気持ちを受け止めることを、まず心がけてみましょう。
子どもがそのとき持った気持ちを大切に
文・構成/笹間聖子 写真提供:ピクスタ

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イタニ トモミ

井澗 知美

公認心理師、臨床心理士

大正大学心理社会学部臨床心理学科教授。公認心理師、臨床心理士。 上智大学文学部心理学科、早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程修了後、国立精神・神経センター精神保健研究所児童思春期精神保健部の流動研究員としてADHDの臨床研究をチームで行う。研究所に在籍している際に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にてペアレントトレーニングの研修を受け、我が国におけるペアレントトレーニングプログラムの開発にたずさわる。その後、中央大学大学院博士課程でペアレントトレーニングの有効性に関する研究に取り組み、学位を取得。 専門は発達臨床心理学で、早期介入や地域での発達支援に関心をもつ。ここ数年は幼児期から思春期の子どもの発達支援を中心に取り組んでいる。本書でも紹介した自閉症スペクトラム症の早期介入法であるJASPERの認定セラピストの資格を取得し、大学内の相談室や小児科クリニックで実践をしている。

大正大学心理社会学部臨床心理学科教授。公認心理師、臨床心理士。 上智大学文学部心理学科、早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程修了後、国立精神・神経センター精神保健研究所児童思春期精神保健部の流動研究員としてADHDの臨床研究をチームで行う。研究所に在籍している際に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にてペアレントトレーニングの研修を受け、我が国におけるペアレントトレーニングプログラムの開発にたずさわる。その後、中央大学大学院博士課程でペアレントトレーニングの有効性に関する研究に取り組み、学位を取得。 専門は発達臨床心理学で、早期介入や地域での発達支援に関心をもつ。ここ数年は幼児期から思春期の子どもの発達支援を中心に取り組んでいる。本書でも紹介した自閉症スペクトラム症の早期介入法であるJASPERの認定セラピストの資格を取得し、大学内の相談室や小児科クリニックで実践をしている。

こうそ ときこ

高祖 常子

子育てアドバイザー・キャリアコンサルタント

リクルートで学校・企業情報誌の編集にたずさわったのち、2005年に育児情報誌miku編集長に就任し14年間活躍。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。 認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか各NPOの理事を務める。「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」(厚生労働省2019年度)でガイドライン策定委員ほか、国や行政の委員を歴任。子育てと働き方などを中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。 保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級など子育てに関連する資格を多数取得。 東京家政大学短期大学部保育科卒、第9回渡邉辰五郎奨励賞受賞。 著書は『イラストでよくわかる 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)ほか。 3児の母。 ●高卒常子オフィシャルサイト ●Twitter @tokikok  

リクルートで学校・企業情報誌の編集にたずさわったのち、2005年に育児情報誌miku編集長に就任し14年間活躍。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。 認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか各NPOの理事を務める。「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」(厚生労働省2019年度)でガイドライン策定委員ほか、国や行政の委員を歴任。子育てと働き方などを中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。 保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級など子育てに関連する資格を多数取得。 東京家政大学短期大学部保育科卒、第9回渡邉辰五郎奨励賞受賞。 著書は『イラストでよくわかる 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)ほか。 3児の母。 ●高卒常子オフィシャルサイト ●Twitter @tokikok