本当に気になる子育ての悩み「子どもがご飯を食べずにお菓子ばかり欲しがってしまう、どうすべき?」

子育てお悩みランキング12を多角的に検証! 第5回 高祖常子先生/瀧靖之先生

ライター:笹間 聖子

続いては、脳科学者で東北大学加齢医学研究所 教授の瀧 靖之先生の回答です。
瀧 靖之先生

我慢を司る、前頭前野の発達は思春期がピーク!

我慢をする働きは脳でいうと、前頭葉の一番前、前頭前野と言われる領域が司っています。大人は何かやりたいことがあっても、社会的に問題があることや、誰かに迷惑がかかることは、我慢することができますよね。

お菓子も、あまり食べたら太るから……などの理由で我慢できます。子どもも、もちろんある程度は我慢できるのですが、前頭前野と呼ばれる領域の発達は、実は思春期近く、小学生高学年~中学生くらいにピークがくると言われています。

ですから、まだ脳の我慢の機能が完全には育っていないんです。子どもが我慢できず、お菓子を欲しがる、いつまでもゲームをしたがるのは当然だということです。
子どもがお菓子やゲームを我慢できないのは、脳科学的には当然のこと
ではどうしたらいいかと言うと、子どものうちはやはり親の側が、おやつやゲームの時間、量を決めてコントロールしてあげるのが望ましいのではないでしょうか。

「あなたは我慢できないからダメ」ではなく、むしろ与え方に気を付けてあげることが大切だと思います。

脳の発達に大切なのは、エネルギーが供給され続ける状態

また大前提として、脳のエネルギー源として、砂糖が分解されたブドウ糖は重要です。だから甘いものは脳にとって不可欠ですが、ここで覚えておいていただきたいのは、私たちの脳は子どものうちは非常にダイナミックに発達しているということです。

子どもの脳では、たくさん枝を張って、使う道をもっと太くして、使わない道は壊してというような大胆な変化が起こっています。このときに何が重要かというと、そのためのエネルギーがずっと供給され続けることなんです。

そのためには、例えば主食という観点から考えると、シリアルや菓子パンみたいな甘いものよりも、そうではない、食パンや白米を主食にしたほうがいいということが分かっています。
主食は食パンや白米などが望ましい
どういうことかと言いますと、ダイエットをされている方はご存知かもしれませんが、食品にはGI値(グリセミック指数)というものがあります。GI値は食品ごとの血糖値の上昇度合いを、間接的に表現する数値です。

甘いものはGI値が高く、血糖値を一気に上げて一気に下げる働きをします。すると脳にエネルギーが適切に行き渡りにくくなってしまうのです。

ですが、白米や蕎麦などGI値が低い食品では、ゆっくりと血糖値が上がり、それが維持されます。すると効率よく脳にエネルギーが行き渡るのです。

つまり、脳にとって糖分が大切というのは事実ですが、血糖値が急激に上がって下がる甘いものよりは、どちらかというとお米や食パンなどをしっかり食べて、血糖値を上げて維持することが大切だということです。

御飯をしっかり食べた上でのお菓子はOK

だからと言ってお菓子がダメだと言う気はありません! 子どもたちが幸せな気持ちになれますし、良い面も多いですよね。

私は、御飯をしっかり食べた上で、お菓子を食べるんだったらいいと思います。子どもも大人も勉強したり、何かに集中すると頭を使いますので、3時や10時など、なるべく3食に響かない時間にあげてはいかがでしょうか。
おやつは3食に響かないタイミングで

脳に良い食べ方は、バランス良く食べること

もうひとつ脳に良い食べ方として、栄養バランスを整えるというものがあります。

よく「この食べものが脳にいい」など特定の食品がもてはやされることがありますよね。ですが脳科学や医学の観点からは、そうやって特定のものばかり食べるよりは、バランスよく食べることが重要なのです。

御飯、魚、野菜、果物、そういったものを偏らずにバランスよく食べることが、脳に一番良いということが分かっています。これは、子どもも大人も同じです。
御飯、魚、野菜、果物などを、バランスよく食べることが脳に良い
私の専門である認知症予防にも、特定の食品がいいという話を聞くことがありますが、何か特定のものばかりを食べることは、最も認知症予防にならないことが分かっています。

特定のものばかりを食べることを、学術的には「モノイーティング」と呼びます。「モノイーティング」は一番脳に悪いとされています。

ジャンルで言うと和食や地中海料理、どちらかと言うと肉よりも魚野菜、果物、あるいは豆やナッツ、オリーブオイル……。こういったものをバランスよく食べることが最も良いということが判明しています。

肥満は記憶を司る海馬を委縮させてしまう

そうそう、肥満も脳の発達に良くありません。記憶に重要な海馬を委縮させ、成長を抑えてしまうことが分かっています。

また肥満は動脈硬化も引き起こします。動脈硬化が起こると、脳だけでなく全ての臓器に対し、ブドウ糖や酸素の供給が落ちてしまいます。すると発達を抑え、加齢の促進につながります。

心筋梗塞や脳梗塞の原因になったり、腎臓や肝臓にも負担をかけますし、とにかく肥満は身体のどこにとっても良くないのです。
肥満は脳にも全ての臓器にとっても大敵!
ですからやはり、あまり甘いものばかりでカロリーを摂りすぎ肥満にならないよう、魚介類や野菜中心のバランスのとれた食事を心がけることが大切だと思います。

ちなみにこれはご参考までに、肥満と言っても、女性に多い皮下脂肪型の肥満は動脈硬化にほぼ影響が無いと言われています。

男性に多い、内臓脂肪型の肥満が特に良くないと言われており、糖尿病や認知症のリスクも高めることが分かっています。女性のちょっとした肥満は、むしろ身体に対するさまざまな保護作用があると言われていますので、ダイエットすべきは男性かもしれません。
ダイエットすべきは、女性より男性のほうかも……!?
文・構成/笹間聖子 写真提供:ピクスタ

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こうそ ときこ

高祖 常子

子育てアドバイザー・キャリアコンサルタント

リクルートで学校・企業情報誌の編集にたずさわったのち、2005年に育児情報誌miku編集長に就任し14年間活躍。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。 認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか各NPOの理事を務める。「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」(厚生労働省2019年度)でガイドライン策定委員ほか、国や行政の委員を歴任。子育てと働き方などを中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。 保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級など子育てに関連する資格を多数取得。 東京家政大学短期大学部保育科卒、第9回渡邉辰五郎奨励賞受賞。 著書は『イラストでよくわかる 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)ほか。 3児の母。 ●高卒常子オフィシャルサイト ●Twitter @tokikok  

リクルートで学校・企業情報誌の編集にたずさわったのち、2005年に育児情報誌miku編集長に就任し14年間活躍。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。 認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか各NPOの理事を務める。「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」(厚生労働省2019年度)でガイドライン策定委員ほか、国や行政の委員を歴任。子育てと働き方などを中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。 保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級など子育てに関連する資格を多数取得。 東京家政大学短期大学部保育科卒、第9回渡邉辰五郎奨励賞受賞。 著書は『イラストでよくわかる 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)ほか。 3児の母。 ●高卒常子オフィシャルサイト ●Twitter @tokikok  

たき やすゆき

瀧 靖之

医師、医学博士

東北大学加齢医学研究所 教授/スマート・エイジング学際重点研究センター センター長 東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学加齢医学研究所および東北メディカル・メガバンク機構で、脳のMRI画像を用いたデータベースを作成。脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍する。読影や解析をした脳MRIは16万人以上。 『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える究極の子育て「賢い子」は図鑑で育てる』(講談社)、『「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)ほか著書多数。

東北大学加齢医学研究所 教授/スマート・エイジング学際重点研究センター センター長 東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学加齢医学研究所および東北メディカル・メガバンク機構で、脳のMRI画像を用いたデータベースを作成。脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍する。読影や解析をした脳MRIは16万人以上。 『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える究極の子育て「賢い子」は図鑑で育てる』(講談社)、『「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)ほか著書多数。