1歳に反応がいい絵本とは? 絵本ナビ編集長がおすすめする人気絵本

絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんが『絵本と年齢をあれこれ考える』エッセイ第2回

絵本ナビ編集長:磯崎 園子

0歳と1歳の違いのはじまり

『したく』(ヘレン・オクセンバリー・作 文化出版局)という字のない絵本がある。

左のページにはおむつの絵、右のページにはそれを身に着けた赤ちゃんの絵。めくれば今度は靴下の絵、靴下をはいた赤ちゃんの絵、シャツ、靴、ズボンと続く。

0歳の頃から楽しめる大好きな絵本なのだけれど、1歳になるとじっと見ている時間が長くなる。左右をゆっくり見比べている。すかさずそこで大人が「したくをしているね」と話しかける。そうやって、段々と絵の意味と自分の体験がつながってくるのだろう。

これが0歳と1歳の違いのはじまりだ。
「したく」
絵本ナビに寄せられるレビューを読んでいて驚くのは、『おつきさまこんばんは』(林 明子・作 福音館書店)。

「一緒におじぎをしたり、首をふったり、笑顔をふりまいたり」「雲に隠れて困ったお月さまの顔を見て、泣き出してしまう」「最後ににっこりすると、息子も泣きんやんでにっこり」などなど。1歳の子どもたちが、お月さまの表情の意味を読み取り、感情を揺さぶられ、真似をしているのだ。
「おつきさまこんばんは」
悲しくなったり、嬉しくなったり。眺めているだけでなく、絵本の中のお月さまと会話をしながら読んでいる、ということがよく伝わるエピソードだ。ここで大事なのは、その表情を見逃さないこと。それこそ、お月さまと我が子の会話の中に、自分も入っていける大きなチャンスが潜んでいるのだ。

感情をあらわしたがっている

絵本を通して知る感情もあれば、自分の中から湧き上がってくる感情に驚くのもこの頃。一番わかりやすいのは、やっぱりこれ。『おいし~い​』(いしづ ちひろ・作 くわざわ ゆうこ・絵 くもん出版)。

絵本の中に何度も登場する、美味しいものを食べた時の喜びの表情と言葉。繰り返し読んでもらいながら、自分の気持ちを表現することの快感につながっていく。
「おいし~い」
言葉にならないけれど、はっきりとそこにある感情と言えば『ママだいすき』(まど・みちお・文 ましま せつこ・絵こぐま社)。

「チュウチュウ チュウチュウ」「また ぺろぺろかあ」など、動物の親子のやりとりの場面が続くこの絵本。優しく愛らしい絵を眺めながら、ママの声で聞こえてくる言葉の響きはどこまでも甘く。大好きと言わなくても、幸せな感情を共有できている。
「ママだいすき」
『こちょこちょさん』(おーなり 由子・文 はた こうしろう・絵 講談社)を通して伝わってくるのは「一緒にいるのが嬉しい! 楽しい!」という感情。

読めばそのままスキンシップができてしまうこの絵本は、親子の直接的なコミュニケーションに大いに役立ってくれるはず。
「こちょこちょさん」

自分でできる喜び

「まだ上手にできないけれど、自分でやりたい」。たとえまだ1歳だったとしても、その気持ちは大切にしてあげたいもの。

指先が少し器用になって、絵本を自分でめくったり、好きなものを指さしたりができるようになってきたら、『きんぎょがにげた』(五味 太郎・作 福音館書店)。お部屋のどこかに隠れているきんぎょを探していく、いわゆる「絵さがし絵本」。
「きんぎょがにげた」
何度も読んでもらっている子は、すぐに見つけることができる。だけど本当に嬉しそうなのは、見つけたことを「おしえる」こと。指をさしたまま、誇らし気な顔をして見上げてくるのだ。

「見つけられたの? すごいねー!」
「きゅっきゅっきゅっ」
ここを何度でもしっかりとキャッチしてあげるのが、大人の大事な役目であり、醍醐味でもある。

『きゅっきゅっきゅっ』『おててがでたよ』(ともに林 明子・作福音館書店)のように、自分でできそうでできない可愛さを存分に味わうことのできる絵本もおすすめ。この時期にしか体験できない親子の時間。

子どもたちにとっても、嬉しい記憶として残っていくだろう。
「おててがでたよ」
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