子どもがガマンを覚えていくには、「言葉」「時間の感覚」「イメージ力」の発達が必要です。
「子どもにガマンすることを教える方法は?」(2歳・男の子)
「ガマン」=「セルフコントロール」は意外と難しい
①やりたいことをやらないガマン。
②やりたくないことをやるガマン。
です。
例をあげると、①は、病院などの公共の場で走り回りたい気持ちをおさえられる。
②は、外出したときに「だっこ」を要求しないで、がんばって歩ける。
というようなことがあてはまりますね。
ガマンは自分をコントロールすることなので、心理学ではセルフコントロールといっています。
これはかなり高度な能力で、子どもだけでなく大人であっても生涯をかけて習得していく力ともいえます。
たとえば、ママパパにも「今日は子どもを頭ごなしに叱らないようにしよう」と思っていたのに、セルフコントロールできずに怒ってしまったという経験はありませんか?
大人であってもなかなか思うようにできないのがセルフコントロールなのです。
ガマンが楽しい挑戦になるように段階を踏んで
ただ、「ガマンって、こんなことだよ」と、楽しい挑戦になるように工夫してあげることはよいことです。
そのときのポイントは次の三つです。
①「ガマン」という言葉を楽しく伝えて、イメージを育てる。
「ガマン、ガマン」と呪文のように唱えると、より長くガマンができるようになることが心理学の実験でわかっています。
2歳ごろは言葉の力は未熟ですが、イメージができはじめるので、それを利用するのも方法です。
ママパパが「ガマンの魔法をかけるよ。クルリン! ガマン! ○○ちゃんもいってみて」などと楽しくいうと、ガマンの度合いがあがるかもしれません。
ただ、今はガマンの力を育てていくのが目的ですから、ガマンできずに泣いたりしても怒ったりしないであげてくださいね。
②小さなガマンの体験を重ねる。
大人が考える完璧なガマンを求めるのは無理な時期ですが、練習のつもりで、「ちょこっとガマン」を楽しく体験させてあげましょう。
まだ時間の感覚がないので、子どもにも目標時間がわかるようにすると、意外とガマンできたりします。
たとえば、「歌を歌ってあげるから、そのあいだ、ちょっとガマンしてね」や、砂時計を使って「ここが空っぽになるまでね」と、聞こえたり見えたりする方法を試してみるといいでしょう。
③少しでもガマンができたら、ほめてあげる。
そして、少しでもガマンできたら、パチパチして「ガマンできたね」「ガマンできて、ママはうれしいな!」と、ほめてあげましょう。
ガマンの練習はあせらず時間をかけて
毎日の生活の中では「少しはガマンして!」といいたくなることが多いでしょう。
ですが、1~3歳のガマンの実力は、ほぼゼロと理解して、工夫したりほめたりしながら、楽しくゆっくり時間をかけて練習していきましょう。
今は、ガマンさせるのではなく、上手に気分転換する、子どものせいでママパパがイライラしそうな場所にはできるだけ近づかないなどの対策をしていくことが基本です。
そうしながら無理せずに上手にセルフコントロール力を育ててあげましょう。
文/宇野智子 写真/Adobe Stock
げんき編集部
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki
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渡辺 弥生
大阪府生まれ。1983年筑波大学卒業。同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学客員研究員を経て、法政大学文学部心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長兼務。教育学博士。専門は、発達心理学、発達臨床心理学。主な著書に『まんがでわかる発達心理学』、『11歳の身の上相談』(講談社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など。
大阪府生まれ。1983年筑波大学卒業。同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学客員研究員を経て、法政大学文学部心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長兼務。教育学博士。専門は、発達心理学、発達臨床心理学。主な著書に『まんがでわかる発達心理学』、『11歳の身の上相談』(講談社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など。