2歳のイヤイヤ期。正しい対応を発達心理学の専門家が解説! 子育てQ&A

発達心理学の専門家が育児に役立つアドバイスをおくる、こんなときどうする?「子育てQ&A」イヤイヤ期の対応編

教育学博士:渡辺 弥生

日々いろいろなことで奮闘している子育て世代に、発達心理学の専門家が、育児に役立つアドバイスをおくるコーナー「子育てQ&A」。今回はこれまでご紹介してきた中から、「イヤイヤ期」に関するお悩みへの対応策をまとめてご紹介します。
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イヤイヤ期、いつまで続く?

「2歳前後の『イヤイヤ期』にどう対応する?」(2歳・男の子)

1歳半~2歳半ごろの時期を「魔の2歳」と呼ぶ国もあります。子どもによって程度の差はありますが、世界中の子どもが通る発達の道筋なのです。

自立した人間になるために必要な「自我」が芽生えて、「イヤ」という言葉で自己主張しているだけ。自分なりにやってみたいという意欲のあらわれでもあるのです。

【イヤイヤにうまく対応する方法】
・エネルギーを別の方向に誘導する。
「自分で決めたい/やりたい」というエネルギーを「こんないいことがあるよ」と提案し、形で別の方向にうまく導いてあげる。例えば靴が気に入らないときは、「かっこいいね。(テレビなどの)○○ヒーローみたいに速く走れそうじゃない!」などと好きなものに関連づけて誘ってみましょう。「これとこれ、どっちがいい?」と選ばせるのも効果的です。

・実際にやらせてみる
「大人の靴をはきたい」と言うときには、ちょっとやらせてみて不便さを実感させてから、ほかの靴を選ばせると理解しやすいでしょう。
いつもゆとりのある対応ができないのも現実。そんなときは毅然と「今日は、○○だからこうするよ」と説明し、泣かれてもキッパリ対応してもよいでしょう。

子どもの感情に巻き込まれてヒステリックにならないことがポイントです。親御さんの工夫で、子どもの発達にうまくつきあってあげられるといいですね。

「食事中に席を立って遊ぶのをやめさせたい」(2歳・女の子)

一口食べては歩き回ったり遊んで、口の中が空になると、また一口パクリ。叱ると機嫌が悪くなって食事にならず、少しでも多く食べさせたいから大目に見てしまうこともあるかもしれません。

まず、落ち着いて食べられる環境作りからはじめてみましょう。

【家庭でできることから試す】
・親子一緒に落ち着いて和やかに食事をする
食事の途中で親御さんが席を立ったり、新聞や雑誌を読みながら食べたりすると、それがお手本になってしまいます。

・「いただきます」「ごちそうさま」でメリハリをつける
食べ物への感謝の気持ちもこめて、親子で一緒にやってみてください。

・「食事の時間がきた」とワクワクを感じさせる
好きなキャラクターのエプロンをつけてあげるなどの工夫をしてみましょう。

・盛り付けは少なめに
「おかわりする? すごいね~」などと食べることへの関心を引き出すのもよい方法です。

・お腹をすかせる
おやつの食べすぎは禁物。時間や量を決めて楽しませてあげましょう。

・けじめをつける
遊びはじめたら、「ごちそうさま」をさせて食事は終わりにする。
習慣作りは少し手間がかかりますが、時間の経過とともに身につき、苦労も軽減します。親子でゆったりした気分で食べられるように準備を整え、食事を楽しみましょう。
写真:shimi/PIXTA(ピクスタ)

「イヤイヤといって反抗的。私をたたいてきたりして困っています」(2歳・男の子)

ママは少し厳しくしてでも伝えたいときがあって当然です。ただ、自我が芽生えはじめる1~3歳の子どもには、対応を工夫する必要があります。

【子育てが楽になる考え方のポイント】
・頭ごなしに注意するのは逆効果
イヤイヤが激しいときは、子どもがなにかを伝えたいとき。情緒も少し不安定になっている場合が多いです。そんなときに、「なぜ、いうことを聞かないの!」と、頭ごなしに叱ってしまうと逆効果になるだけ。できる範囲でいいので、子どもがいいたいことに耳を傾けてあげましょう。気持ちをくんでもらえたことで、子どもの安心感が高まります。

・叱ることかどうかの確認を
イヤイヤが激しいとママにストレスがたまってガミガミ叱りがち。それは本当に叱る必要があるかどうか冷静になって吟味してみると、ママの腹立ち具合が変わってくるはずです。

・言葉でうまく伝えられない不自由さを理解する
1~3歳の子どもは、思いを言葉で伝えられずに不快な気持ちになりやすいのです。その気持ちを「○○なのね」と代弁してあげましょう。言葉の表現力がつくと、イヤイヤ期を早く抜けられるでしょう。
役立つのは、「実験方式」。どんな対応をすると状況がよくなり、どうしたら悪化するのかを、あれこれ試してチェックしてみましょう。お子さんに合った育児法が見えてくるでしょう。

「なんでも『イヤ!』の連発。どう対応したらいいの?」(2歳・女の子)

時間が許すなら、やらせてあげるほうが子どもの成長にプラス!

子どもの「イヤイヤ」にストレスを感じるのは、親御さんに余裕がない場合が多いでしょう。

発達心理学の研究では、子どもがやりたがったときに支援して挑戦させ、「できたね」と達成感を味わわせることで、次の成長段階に進みやすいといわれています。できれば、子どもと行動するときは、少し時間に余裕をもつように心がけたいですね。

ただ、場合によっては子どもの気持ちに沿えられないときもあるでしょう。

気をつけたいのは、子どもの「イヤ」を毎回すべて拒絶しないようにすること。そして、いったん「ダメ」だといったのに、大泣きされて最終的に子どもの要求を飲んでしまうこと。これらは悪循環のもとです。要求を受け入れられないときは、その理由を説明しましょう。

【普段から工夫を。イヤイヤへの対応策】
・正面からぶつからない
「イヤイヤ」は、親御さんの意向を押しつけようとするほど激しくなります。一度子どもの気持ちを受けとめ、別の提案をしてみるのも一つの方法です。

・「イヤイヤ」を覚悟すると冷静に対応しやすい
「今は“イヤイヤ”いいたい時期」だと覚悟しましょう。すると、「やっぱり“イヤ”っていったわ。よし、じゃあ、まず気分を変えてあげよう」などと落ち着いて対応できて、親御さんのストレスが軽減します。

・外出時は対策を考えておく
家での「イヤイヤ」が増えていたら、外出時も同じ状況になるのは自然なこと。「イヤイヤ」がはじまったら、こじれる前に即対応! 気分転換できるように、おもちゃや飲みものなどを用意しておけば安心でしょう。おさまらないときは、抱いてその場所を1回離れてみるのも効果があります。
「イヤイヤ期」は、言葉の発達が進むとしだいに卒業していきます。「イヤイヤ」は、子どもや親御さんが悪いから起こるものではありません。これらのことを心がけていけば、長引かせることもなく、この時期をうまく卒業していきます。 
写真提供:maroke/PIXTA(ピクスタ)、shimi/PIXTA(ピクスタ)  
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わたなべ やよい

渡辺 弥生

教育学博士(発達心理学、発達臨床心理学)

大阪府生まれ。1983年筑波大学卒業。同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学客員研究員を経て、法政大学文学部心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長兼務。教育学博士。専門は、発達心理学、発達臨床心理学。主な著書に『まんがでわかる発達心理学』、『11歳の身の上相談』(講談社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など。

大阪府生まれ。1983年筑波大学卒業。同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学客員研究員を経て、法政大学文学部心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長兼務。教育学博士。専門は、発達心理学、発達臨床心理学。主な著書に『まんがでわかる発達心理学』、『11歳の身の上相談』(講談社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など。

げんきへんしゅうぶ

げんき編集部

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki

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