ヨットの帆はなぜ三角形なの? ~身近にある物のかたちの謎を解き明かそう!~

物のかたち図鑑 チャプター2 △の秘密 ~ヨットの帆のかたち~

テレビマガジン編集部

物にはいろんなかたちがありますね。すこし周りを見わたしてもビルは四角ですし、電車も四角、バスも四角、郵便ポストも四角いし、街の中には四角いかたちをした物が多いですね。

でも、よく見るとお家の屋根は三角形もあります。車のタイヤは丸、道路標識は丸や三角、いろいろありますね。

なぜ物にはいろいろなかたちがあるのでしょう。そう思ったことはありませんか?

電車やビルのかたちが四角いのは当たり前、そう片づけてしまう前に、ちょっと考えてみませんか。なぜこういうかたちをしているのかなと。

物のかたちにはそれぞれにそうなっている理由があります。理由がわかると、普段見慣れた物でもなんだか違って見えてきますよ。

なぜこれはこのかたちをしているか、これからその理由について主に科学的な面から謎解きをしていきます。

「かたち」の謎、2回目は、三角のかたちをした物の謎です。さあ、身近な物のかたちの謎を明らかにしていきましょう。

三角形の謎 ヨットの帆はなぜ三角形なの?

今回の形の謎は、三角形をした物のかたちです。
写真提供 ヤマハ発動機
ヨットの帆(セール)は三角形ですよね。ヨットは三角帆(セール)だからカッコイイのですけど、この三角形にはどんな意味があるのでしょうか。なぜ丸いセールや逆三角形のセールがないのでしょうか。

ヨットは追い風をセールに受けて進むことができます。風の力に押されて前進するのですから、風に吹き飛ばされているともいえますね。

でも、それだけではありません。風に吹き飛ばされるだけなら、風に向かって進むことはできませんが、ヨットは風が前から吹いてきても、風に向かって進めるのです。風の力で進むだけで、動力のないヨットが逆風でも前進できるのです。不思議ですね。

こんな不思議なことができるのもヨットのセールが三角形だから。

ヨットは逆風のとき、セールの向きとラダー(舵板)を右左へ切り替えながら、風に向かってジグザグに進むことができます。

もしセールの形が丸や四角だったり、逆三角形で頭のほうが大きいと、ヨットは重心が高くなり、セールの上のほうに風の力がかかりますから、バランスをとるのが難しくなってうまく操縦できなくなってしまいます。三角形だから切り返しがしやすいのです。

ヨットのセールが三角形なのは、船の安定性と操縦性能から最もよい形だからです。

もうひとつ、セールが三角形だと簡単に上げ下げができることも大きな理由です。

三角形のセールだと、ヨットが港から出たときにはすぐにセールを上げられますし、港に入るときにはすぐにセールを下げてヨットのスピードを落とせるので、安全に停めることができます。
図 ヨットのメインセールとジブセール、マスト  提供 ヤマハ発動機

ヨットはどうして風に向かって進めるの?

ヨットが向かい風でも、風に逆らって前進できる秘密は三角形のセールの他にもうひとつあります。それは水の中にかくれています。

ヨットの底には、「キール(センターボード)」という垂直のつばさのような形をしたものが下向きに付いています。

ヨットのセールと飛行機のつばさは形が似ていますよね。ヨットのセールは船の上で垂直につばさが立っている形なのです。

ヨットは、このセールとキールのふたつのつばさが力を合わせることで、逆風でも前へ進むことができるのです。
図 ヨットの艇体とキール  提供 ヤマハ発動機
向かい風のときに、ヨットのセールをちょっとだけ斜めにして風を受けると、セールは少しふくらみます。そうするとセールのふくらんだ側へヨットを横に引っ張る力が生まれます。

それでヨットは横へ動こうとするのですが、ヨットの下にはさっきお話したキール(センターボード)という大きな垂直のつばさがあります。このキールの働きによって、ヨットは横へ動こうとしても止められてしまいます。

ヨコへの動きを止められたヨットは、前方斜め45度くらいの角度で風に向かって前進をはじめます。

こうして水上のセールの力と水中のキールの力が合わさることで、ヨットは風に向かって進めるのです。
ヨットが向かい風で走る理由
斜めに進むだけだとヨットは目的地へ着けませんから、途中でラダー(舵板)やセールの角度を変えて、ヨットを反対側の斜め前方へ方向転換させます。

ラダー(舵板)とは船尾の水中に立っている板のことをいいます。この板の角度を変えることで船の後ろ側に横向きの力が働き、向きが変わる仕組みになっています。

ヨットを反対側の斜め前方へ切り返して、セールもさっきとは反対側のほうがふくらむように角度を変えると、ヨットはやはりセールのふくらんだ側の斜め前方へと向かって走り出します。

こうして右へ左へと切り返しを続けることで、ヨットは逆風でもジグザグに目的地へ向かって進むことができるのです。
ヨットは風上に向かってジグザグに進む
風に向かって、まっすぐには行けませんが、セールの向きを右左に変えることで、ヨットが右斜め前、左斜め前、右斜め前と風に向かって45度くらいの角度で、ジグザグですけど、ちゃんと前へ進むには、三角形のセールが最適な形なのです。

セールとキールが力を合わせると、ヨットのスピードが追い風のときよりも速くなるくらい、とても大きな力となります。

おもちゃの車にセールを付けて、扇風機で前から風を当てると、風に向かって走らせる実験ができますよ。
三角形の謎のこたえ 風に向かって進むときでもうまくヨットを操縦するため!

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テレビマガジン編集部

日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 SNS:テレビマガジンX(旧Twitter) @tele_maga  SNS:テレビマガジンLINE@ @tvmg  記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『ボンボンアカデミー』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。

日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 SNS:テレビマガジンX(旧Twitter) @tele_maga  SNS:テレビマガジンLINE@ @tvmg  記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『ボンボンアカデミー』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。