PTAと企業をマッチング! 時間&労力減に成功したアウトソーシングの実例とは

PTA専用支援サービス「PTAアウトソーシング」#3 ~マッチングプラットフォーム~

ライター:遠藤 るりこ

PTA室のプリンターはソート機能がないケースが多く、保護者たちが手作業することになるという。  写真:アフロ
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2022年8月、旅行会社・近畿日本ツーリストが「PTA業務アウトソーシングサービス」をリリースして話題に。

近年、保護者への負担や活動の強制などが問題視されているPTAにとって、「お金を払って外注する」という視点が新しいものとして取り上げられました。

しかし、実は2020年からPTAのアウトソーシングをサービスとして開始している企業があります。日本初のPTA専用支援サービス「PTA’S(ピータス)」です。

PTA’Sは、登録をしたPTAが、依頼したい業務などを選ぶことで、サポーターと呼ばれる企業を検索することができるマッチングプラットフォーム。

代表の増島佐和子(ますじま・さわこ)さんに、サービスを開始した背景や、サービスの内容についてお話をうかがいました。最後にPTAにくわしい労働・子育てジャーナリスト、吉田大樹さんの意見も紹介します。

※全5回の3回目(#1#2を読む)

自身も双子の娘を育てつつ、PTA副会長の経験を持つ、PTA’S(ピータス)代表の増島佐和子さん。  Zoom取材にて

私たちがやらなくてもいいのでは? PTA経験で気づいたこと

2011年、双子の妊娠を機に、それまで勤めていた広告代理店の営業職を辞め、子育ての経験を活かしたいと、教育関連の事業に踏み込んでいった増島佐和子(ますじま・さわこ)さん。

認可保育園運営事業社での企画業務の後、独立して、民間学童を作る活動などを精力的にしていましたが、2020年以降、コロナで活動がストップしてしまったと言います。

時期を同じくして、2020年当時、増島さんは我が子の双子たちが通う小学校で、PTA副会長をしていました。

「最初にPTAへ参加したときに『どうして母親ばかりなんだろう?』『作業が非効率すぎない?』、そして『なんでみんな楽しそうじゃないんだろう?』などと感じたことが、今の事業をはじめた最初のスタートです。

子どものためにできることは何だろう、保護者たちの負担を減らし、楽しめる環境作りはどうすればできるのか、を考え続けた結果で今に至ります」(増島さん)

もともと増島さんの所属するPTAでは、運動会の警備は外注でお願いしていたといいます。

「だから『そうそう、外注したほうがいいことは、どんどんしていこうよ!』とずっと思っていたんです。業務によっては、プロの方にお任せしたほうが質がよくなるし、保護者の時間も労力も削減できて、結果として安定することもありますから」(増島さん)

増島さんが自らの体験として実感したのは、実際のPTA活動で、総会資料の印刷をしていたとき。

「PTA室にあるプリンターって、基本ソート機能がついていないんです。そのため、PTA総会の資料は10~20種類くらいの書類を大量に印刷して山積みし、役員たちがその山をぐるぐる回りながら資料をまとめて、ホチキス止めしていくんです。

これを、PTA室にこもって2時間も3時間も、普通に働いているお父さんやお母さんがやるんですよ。こんなに長い時間、平日の昼間に。『これって本当に私たちがやるべきこと!?』というのが正直ありました」(増島さん)

そのときに活動していたメンバーで、「来年からこれは絶対に印刷会社にお願いして、封入した状態で納品してもらおうね」と話し合った、と増島さん。

「結局コロナの感染が拡がり、翌年から総会はオンライン、資料はデータになったので印刷はなくなったのですが、あの書類をまとめながら、来年はやめようと皆で話し合ったときに、外注の可能性を感じました」(増島さん)

PTAの外注先はどうやって探すのか

その後、2020年に日本初のPTA専用支援サービス「PTA’S(ピータス)」を起業。PTA’Sでは、PTA業務のアウトソース先をマッチングというスタイルで探すことができます。なぜ「マッチング」という仕組みをとったのでしょうか。

PTA’Sのキャッチコピーは「PTAは、もっとラクちんでいい」。登録料も利用料もすべて無料のサービス。  写真提供:PTA’S

「これまではPTAで『この仕事って外の人に頼めないのか?』という話が出ると、ネット検索するか、『誰かの知り合いがやっているみたいだから、ちょっと聞いてみようか』といった探し方をしていたと思うんです。

でも、案件によっては学校に来ていただくこともある外注先だけに、そこが『本当に安心できる安全な企業かどうか』って、とても重要だなと感じたんです」(増島さん)

PTAをアウトソースする場合、外注先が来校する必要がある業務も多々あります。

「きちんとした会社でないと安心してお願いできないなというのが、PTA役員としての経験や、いち保護者の感覚としてもありました。

そこで、信頼できる企業を集めて、PTA’Sにアクセスすれば安心できる相手企業が見つかるというプラットフォームになればいいなと思いました」(増島さん)

PTA’Sにサポーターとして契約をむすんで登録している企業は、HPの所有・法人格の有無・創業年数といった3つの審査基準のクリアと、PTA’Sとの面談を済ませてから登録が完了。面談では、取引先がPTAであることへの理解と、子どもたちの学校生活をサポートする意思について確認しています。

「信頼できるというのは大前提ですよね。そのうえで、PTAの役員さんが保護者に理解を得やすいように、価格や業者選定の公平性が可視化できる仕組みを作りました。

友達に頼もうとしているわけではないですから、フェアな視点で企業を選んでいただけるようにしています」(増島さん)

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