
トウモロコシの粒が10粒から600粒に増えた秘密とは? 人類の9000年の挑戦
野菜や果物は昔と今でどうちがう? ほりかわあきなさんにインタビュー (3/3) 1ページ目に戻る
2026.06.18
ライター:山本 奈緒子
品種改良はいつごろから、なぜ始まった?
──私たちが今食べている野菜や果物のほとんどは品種改良されたものですが、なぜ品種改良がおこなわれるようになったのか、どのようにおこなわれてきたかなど、意外と詳しいことは知りません。あらためて、品種改良の歴史について簡単に教えてもらえませんか。
ほりかわ:食べものに困らないようにすること、つまり食料の安定供給は、人類の悲願ともいえる普遍的な課題ですよね。野生からとって食べる生活から、作物や家畜を育てる生活に移り、食べられる植物の中で、より実の大きいもの、より多くなるものと、良いものを選んでいく。さらに、美味しく、栄養豊富で、育てやすく、とニーズも多様化していきました。
──消費者だけでなく、生産者にとってのメリットにも応えているんですね。
ほりかわ:この絵本を作るにあたっては、作物を育てる視点も大事にしました。私も農業研修の経験があるのですが、農業は想像以上に、大変なものでした。虫や病気、暑さにやられてしまって、収穫するまでに、こんなにも苦労が多いのかと思い知りました。
近年は猛暑が続いていますが、作物も、その作物を育ててくれる人たちも、過酷な環境をなんとか乗り越えています。少子化で農業の担い手不足も問題となる中で、農作業の負担を減らせる品種も登場しています。
例えば、本書でも紹介しているイチゴの「恋みのり」。野菜や果物の栽培では、通気性を確保し、日光や栄養が十分にわたるよう、苗や実を間引きして選抜するのですが、「恋みのり」は、余分な花や実を摘む必要がないため、その手間が省けます。
品種改良って何をしているの?
──そう聞くと、品種改良とひとことで言っても、実際は本当に多様なんだなと感じますね。
ほりかわ:その方法も、先ほどお話した「選抜」から始まり、メリットを持つもの同士を掛け合わせる「交配」へとシフトしていきました。ただ、1回で思いどおりのものになることは、まずないので、理想にたどり着くには、何回もかけ合わせを繰り返し、長い年月がかかります。
──現在もその方法が主流なのでしょうか?
ほりかわ:交配・かけ合わせは現在もベーシックな手法です。そもそも「選抜」の段階で、たくさん育てている中で、なぜ「他よりちょっと良いもの」が現れるのか。それは偶然の産物です。
人間の意図とは関係なく、植物が自然に交雑することもありますし、自然界の放射線(宇宙から降り注いでいるもの、大地に含まれる岩石などからも生じるもの)によって、突然変異が起こることもあります。
その結果、植物が人間にとって好ましいほうへ変化したら、それを選んできたわけですが、いわば“運任せ”です。そこで、その確率を高めようと人為的に放射線を照射する放射線育種という手法が登場しました。
──なるほど。変異と聞くと、ちょっとびっくりしますが、すでに自然界で起こっていることをやっている、とも言えるわけですね。
ほりかわ:日本で最初に本格的におこなわれたのが、ガンマー線を使う方法です。「ゴールド二十世紀」ナシは、このガンマー線照射によって生まれた品種で、黒斑病というナシの病気に抵抗性を持っています。
その後、イオンビーム照射も行われるようになりました。さらに、遺伝子組換え技術や、ゲノム編集技術を品種改良の手法として応用する研究も進んでいます。
──どんどん効率的になる一方で、人為的な方法に抵抗を感じる人もいるようです。
ほりかわ:「自然」と「人工」の線引きや、どうすれば「安心」なのかは、最終的には個人の価値観や判断に委ねられるものだと思います。
でも、この先、どの技術を、どこまで使っていくのかを社会全体で考えていくには、まず私たちが、今口にしているものが、どのように生まれたのか、過去─現在─未来のつながりの中で物事を捉えることが、第一歩だと思います。
古い品種を守っていくことも大切
──絵本の「おわりに」では、古い品種を守ることも大切だというメッセージがありました。
ほりかわ:良い品種ができても、そればかりに偏るのではなく、「品種の多様性」を維持していくことも重要です。たとえば、特定の品種だけ栽培していると、病気で一斉にやられてしまうことも。
本書で「むかし」の姿として紹介した野生種のように、自然環境で生き残ってきたものは、やはりタフで、病気に強い遺伝子を持っていたりもします。こうした資源を守っていくことも大切です。
──ちなみに、この絵本に登場する「むかし」の野菜や果物は、今も残っていて、食べられているものもあるんですか?
ほりかわ:この本で登場する「むかし」の姿は、今の野菜や果物の祖先にあたる野生の植物だけでなく、「むかしの日本でスタンダードだったもの」も紹介しています。
たとえば、西洋から網目のある温室メロンが入ってくるまでは、マクワウリという東洋系の品種が主流でした。今でもマクワウリの種や苗は、ホームセンターなどで売られています。他にも、地域の伝統野菜もおすすめです。そこから「むかし」を感じ、脈々と続いてきた人類の営みに思いをはせてもらえたら嬉しいです!
ほりかわあきな(堀川晃菜)
新潟県出身。農薬・種苗メーカーを経て、日本科学未来館の科学コミュニケーターに。その後、ウェブメディアの編集・記者を務め、2016年にサイエンスライターとして独立。研究者への取材記事をはじめ、実用書、児童書など幅広く手掛ける。
『こんなにかわった! やさいくだもの むかし・いま』
著:ほりかわあきな 監修:国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)
講談社刊 定価:本体2000円(税別)







































































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山本 奈緒子
1972年生まれ。愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。 『ViVi』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、 インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、 主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。
1972年生まれ。愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。 『ViVi』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、 インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、 主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。