『まんげつのよるに』全ページ無料公開! 380万部の国民的ベストセラー「あらしのよるに」20年ぶり新シリーズがスタート!

「あらしのよるに」シリーズより『まんげつのよるに』を全ページ無料公開!

児童図書編集チーム

すべての画像を見る(全44枚)

作:きむらゆういち 絵:あべ弘士
※全ページ公開は4月10日(木)をもって、終了いたします。

はるの ひざしが、まぶしいくらいに ゆきやまを てらして いた。
その まっしろな ゆきの かたすみが モコモコと うごきだし、
一ぴきに どうぶつが すがたを あらわした。

それは、まぎれもなく オオカミじゃ ないか。
「ガブ! ガブー! いきて いたんだね、よかったぁ、ずっとずっと まって いたんだよ。」

おもわず かけよろうと した ところで、メイは はっと めを さました。
「ああ、また この ゆめか。」
あせを ぐっしょり かいて いる。
なんど おなじような ゆめを みた ことだろう。
ヤギの メイは よろよろと たちあがった。

メイは みどりの もりで たった 一ぴきで くらして いた。
ひみつの ともだちだった オオカミの ガブと この もりに むかって きたのだが、
たどりついたのは メイだけだった。
(ガブは どう して しまったのだろう。)
とちゅうの ゆきの あなの なかが ガブと すごした さいごだった。
はげしい ふぶきに なんにちも とじこめられ、いきる のぞみを うしなった メイは
わたしを たべて いきのびて ほしい。とガブに たのんだ。
(ああ、それが いけなかったんだ。わたしが あんな こと さえ いわなければ、
ガブは あの あなから でて いかなかったのに。
やさしい ガブは わたしを たべる わけにも いかず、
もどるに もどれなく なって、きっと あの おそろしい なだれに……。)
メイは なんども くやんだ。
なんども じぶんを せめた。
あざやかな きぎの みどりや、いろとりどりの はなに かこまれて いても、
メイの こころは はいいろだった。
かがやいて いた はずの みどりの もりに ガブが いないのだ。

メイは いつも あても なく もりの なかを あるいて いた。
そんな メイの すがたを みて、とおくで のうさぎたちが ささやいた。
「あいつ、まだ いきてるよ。」
「ちゃんと えさを たべているのかしらね。」

メイが この もりに やってきた ころ、サルや リスや のうさぎたちは 
つぎつぎに メイに こえを かけた。
「やあ、あんた みなれないけど どこから きたんだい。」
「この もりの ことなら なんでも あたしに きいてよね。」
「ぼくが みずばに あんないして やろうか。」
みどりの もりに いままで ヤギが いなかったことも あって、
メイは みんなに めずらしがられた。
しかし、そんな しんせつにも メイは かすかに わらって みせるだけ。
あたまの なかが、ガブの ことで いっぱいだったからだ。
さっそく、どうぶつたちは かげで ささやきはじめる。
「あいつ、へんな やつだぜ、ひとことも くちを きかないんだ。」
「あたしたちなんかと くちも ききたく ないのかしら。」
「わるい ことを して にげて きたんじゃ ないのか。」
そんな うわさも ときが たつに つれ、だれも しなく なる。
やがて、みどりの もりで まって いれば、ガブが くるかも しれない。
という かすかな きぼうも、あきらめに かわって いった。

「いまごろ タプは どう して いるのかな。
わたしの ことを しんぱいしているんだろうか。」
そう おもって、なかまと すごした ころを なつかしく おもったりも した。
でも、もちろん、おもいでも ほとんどは、ガブの ことだ。
かみなりが なれば ガブと いっしょに はしって にげたときのこと。
きりの こい ひは ガブと どうくつに かくれた ときの こと。
おもいでが たのしければ たのしいほど、いま ひとりで いる ことが かなしくて ないた。
でも、もう なみだも でない。

「ねえ、ガブ。こんやの つきは まるで てが とどきそうだね……。」
ガブが ほんとうに となりに いるかのように ひとりで はなしつづけた。
そう やって おもいでの なかだけで いきて いる うちに、
メイの からだは どんどん よわって いった。
いきる きりょくも なく、すべてに みを まかせ、しずかに じかんだけが すぎて いく。

きが つくと いままで みえなかった ものが メイに みえて きた。
かすかな きせつの うつりかわりや、ちいさな むしたちの いのち。
もりの どうぶつたちの はなしごえも、まるで このよの そとから きいて いるような かんじだ。

「おまえ、どういう つもりだよ。」
「なによ、あんたこそ。」

「おお、うまれたのか。」
「ほらほら、みて、わらってるよ。」

「おかあさん、どこにいるの。」
「ごめん、ごめん、おかあさんは ここよ。」

この もりの サルや リスや のうさぎたち。
おこって わらって ないて、ひっしに いきて、そして、だれもが かならず しんで いく。
いきものって みんな いっしょうけんめいで、みんな はかなく、それが いじらしくて、
おもわず ほほえんでしまう。

もう からだに ちからが はいらない。
なんだか ふわふわして きた。
もう すぐ ガブの いる てんごくに いけるんだ。
ああ、そう いえば あしたは まんげつだ。
しあわせな ときを こころにうかべて、メイは ゆっくりと きの ねもとに
からだを よこたえた。

メイが そっと めを とじた ときだ。
きの うえから、サルの はなしごえが きこえて きた。
「あい、たいへんだよ。この もりに オオカミが あらわれたんだって。」
「オ、オ、オオカミって、どうぶつの にくを たべるって いう、
あの おそろしい やつか?」
「ああ、キミドリがはらで みかけたって、コウモリたちが おおさわぎしてたぜ。」
メイは じぶんの みみを うたがった。
(オオカミ!? オオカミだって? まさか ガブが。
いや、オオカミだからって ガブとは かぎらない。
でも もしかしたら ガブが、あの ガブが いきて いるのかも しれない……。)

メイは おきあがると はしりだした。
キミドリがはらに むかって、 ちからを ふりしぼって はしりだした。
どこに こんな ちからが のこって いたんだろう。
(ガブに また あえるかも しれない。)
そう おもうだけで からだじゅうに ちが ながれ、ちからが わいて くる。
もう ほかの ものなんて なにも みえない。

たとえ、ほんの すこしの きぼうでも、それがあれば いきられる。
いきるって、やっぱり すごく いい。
メイは いきかえったように はやしを すりぬけ、
おがわを とびこし、
キミドリがはらを めざして はしりつづけた。

次のページへ ガブとメイは再会することができるのでしょうか。
111 件