男の子の子育て “とっておきフレーズ“で子どもの行動が変わる理由

男の子の子育てココが知りたい#4「男の子への声がけ方法」

大阪教育大学教育学部教授:小崎 恭弘

「100点すごいね!」に代わる魔法のほめ言葉

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「しつけをする際にご褒美をあげて言うことを聞かせる方法があります。ご褒美は程度や回数にもよりますが、絶対に育児でやってはいけないことではありません。

注意したいのは、ご褒美がないと子どもが動かないという状況が定着することです。僕の保育士時代の話ですが、毎日、親が迎えにきても園から帰りたがらない子がいました。

絵本を3冊読み終えても子どもが動かないので、親はコンビニでおもちゃを買ってあげるから帰ろうといい、実際に毎日、買ってあげていた親がいました。

これはご褒美が定着し、子どもに振り回された育児に陥った例です」(小崎先生)

ご褒美は日常化すると、価値を上げていかなければならなくなると小崎先生は注意を促します。

目の前のどうにかしたい状況を毎回、短絡的に対応するのではなく、物を使ったご褒美はときどき効果的に使い、親子がいい関係を築ける程度にとどめておくことが大切です。

また、物によるご褒美以外の方法を、先生は次のように教えてくれました。

子どもに振り回されてはいけません。物を買い与えるご褒美は、回数や程度をほどほどに。  写真:アフロ

「物を使ったご褒美は外的報酬といいますが、僕は内的報酬でのご褒美を使ってほしいと思っています。内的報酬とは、その行為をすることで子ども自身が喜びを感じることです。

例えば、子どもがテストで100点を取ったとします。『100点すごいね!』でもいいのですが、単に点数をほめると子どもによっては次も100点を取らなきゃとプレッシャーを感じる子もいます。

こういう場合は結果ではなく、『勉強、頑張っていたもんね!』と笑顔でその過程をほめてあげください。子どもはママが表情でも声でも喜んでいる姿を見て、喜びを感じます。これがご褒美になるのです」(小崎先生)

小崎先生はテストでいい点を取ったときは、結果よりプロセスを褒めることが大切だと話します。努力には終わりがないので、頑張った部分を認めて次につなげてあげるといいでしょう。

子どものヤル気が出るとっておきフレーズ

何度も同じことを伝えたり、叱ったりしていると親も子どもも嫌な気持ちになっていきます。しかし、小崎先生は親が言葉の選び方を変えるだけで子どもの心に響くフレーズになると話します。

「子どもの心に響くフレーズは、決定権を子どもに与える表現です。

ああしなさい、こうしなさいと大人側の都合を一方的に押し付けるのではなく、『どうしたかったの?』『ママ、悲しかったな。◯◯はどう思う?』など、子どもが自分の行為を考える言葉に変えてみてください」(小崎先生)

子どものヤル気が出るとっておきフレーズ

「ダメでしょ!」​→「何をしているの?」
「うるさい!」→「小声でお話しできる?」
「勉強しなさい!」→「いろいろなことがわかるよ!」
「鬼(おばけ)がくるよ」→「お母さんはそれをやめてほしいな」
「口ごたえしないの!」→「お母さんのお話、聞いて」
「そんな言葉、使わないの!」→「お母さん、悲しいな……」

「フレーズは年齢に応じて言い方やレベルを変えていく必要があります。小さい子なら親が一緒に考えてあげたり、代弁してあげることが大切です。小学生ぐらいになって自分で考えられるようになったら、子どもに考えるチャンスと時間を与えてあげましょう。

ただし、男の子は言葉で表現するのが苦手な子もいるので、そのときは子どもが話すまで待ってあげてください。

幼い頃から子どもに決定権のある投げかけをしていけば、何気ないことでも親子が気軽に話し合える関係性を築いていくことができます」(小崎先生)

子どもの成長は日々の生活の積み重ねだと小崎先生は話します。今日、教えたからといって明日すぐに直ったり、実行できることは少ないですが、今日が明日につながることは確かです。

親は子育てに対してすぐに結果を求めがちですが、子どもが過ちを繰り返したからといって苛立ったり、自分の育児を責めたりしないことが大切だと小崎先生はつけ加えます。

子育ては思い通りにならないから大変であり、だからこそ面白いといえます。親子でもそれぞれに個性があって、違っているからいいと受け止めて、子どもの成長を肯定する子育てを心がけたいものです。


取材・文/梶原知恵

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こざき やすひろ

小崎 恭弘

大阪教育大学教育学部教授

大阪教育大学教育学部教授。兵庫県西宮市初の男性保育士として保育所などに12年勤務した経験を持つ。3人の男の子の父親でもあり、それぞれで育児休暇を取得。それらの体験をもって「父親の育児支援」研究を始める。NPO法人ファザーリング・ジャパンの顧問。2022年4月より大阪教育大学附属天王寺小学校の校長を兼任。 【主な著書や監修書】 『あ~、また言っちゃったがなくなる 男の子ママの言葉かけ便利帳』(総合法令出版) 『男の子の 本当に響く 叱り方ほめ方』(すばる舎)など

大阪教育大学教育学部教授。兵庫県西宮市初の男性保育士として保育所などに12年勤務した経験を持つ。3人の男の子の父親でもあり、それぞれで育児休暇を取得。それらの体験をもって「父親の育児支援」研究を始める。NPO法人ファザーリング・ジャパンの顧問。2022年4月より大阪教育大学附属天王寺小学校の校長を兼任。 【主な著書や監修書】 『あ~、また言っちゃったがなくなる 男の子ママの言葉かけ便利帳』(総合法令出版) 『男の子の 本当に響く 叱り方ほめ方』(すばる舎)など

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。