脳科学的に考える「ならいごと」 習得チャンスは幼児期しかないの?

ならいごとの早期教育は必要なのか? 〔細田千尋先生インタビュー 第2回〕 

医学博士・認知科学者・脳科学者:細田 千尋

早期からピアノを始めるべき? 習得したい目的を明確にしよう

幼児期のならいごとの代表でもあるピアノも、小さい頃から始めていれば経験年数が長くなり、上達のスピードは上がります。プロを目標としているのであれば必要なことでしょう。しかし、お父さん、お母さんが気になるのは、ピアノをやることによってお子さんにどういう効果をもたらすか、ということだと思います。

お父さん、お母さんの多くは、ピアニストにさせたいわけではなく、『勉強ができるように』、『音をよく拾えるようになるように』など、他の能力に応用させたいという思いが強いと思います。心理学の用語では、これを“学習の転移”と言いますが、科学的にも転移があるのかないのかは、ずっと議論になっているんです。

ピアノに関して言えば、転移があるという研究論文と、あまりないと論じているものがあります。あるというものは、『左右の手が違う複雑な動きをするから、脳の発達が促される』、『いろんな人と触れ合うことによって社会性がついてくる』と論じています。でもそうなるともう、ピアノじゃなくてもいい話になってきますよね。

ですから、脳科学的に言える「始める時期」というのは、プロ並みに上手にさせたいなら早く習い始めればいいけれど、そうでないなら早期に始める必要はない、ということです。だたし、絶対音感については別の話。どうしても絶対音感を付けたいというのであれば、早期から音楽教育を受けさせた方がよいでしょうね。

ピアノと同じく、そろばんもそうですね。脳の発達を促すとされていますが、そろばんが何かほかの能力へ転移するというのは確実には言えません。けれども、単純にそろばんの能力を高めたいのであれば早期からやればよい、ということは言えると思います。

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焦って早期にならいごとを始める必要はなく、ならう目的を明確にしてからでも遅くはない、という細田先生。第3回は、ならいごとの選び方や継続させるためのコツについて解説していただきます。

取材・文 山田祥子

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ほそだ ちひろ

細田 千尋

医学博士・認知科学者・脳科学者

東北大学加齢医学研究所及び、東北大学大学院情報科学研究科准教授。 内閣府 moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。 内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業(JST創発的研究支援)によって、日本全国の大学や研究機関などから選ばれた252名の研究代表者のうちの1人。 脳科学から子どもの非認知能力を育てる研究の親子モニター募集 https://gritbrain.wixsite.com/experiment2022-04 東北大学加齢医学研究所 https://www.idac.tohoku.ac.jp/site_ja/ 細田千尋研究室㏋​ https://neurocog.is.tohoku.ac.jp/

東北大学加齢医学研究所及び、東北大学大学院情報科学研究科准教授。 内閣府 moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。 内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業(JST創発的研究支援)によって、日本全国の大学や研究機関などから選ばれた252名の研究代表者のうちの1人。 脳科学から子どもの非認知能力を育てる研究の親子モニター募集 https://gritbrain.wixsite.com/experiment2022-04 東北大学加齢医学研究所 https://www.idac.tohoku.ac.jp/site_ja/ 細田千尋研究室㏋​ https://neurocog.is.tohoku.ac.jp/